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アルジャーノンに花束を よみました

本で泣いたことあります。

ダニエル・キイスの「アルジャーノンに花束を」です。中学生の時にはじめて読みました。その時は、何が何やらわかりませんでした。どうして名著と言われていたかもあんまりわかりませんでした。

高校のときに、もう一度読みました。

泣きました。

それ以来、僕の一番好きな本になりました。もうカバーもボロボロです。
ものがたりは、日記のかたちで進みます。

けえかほおこく1ー3がつ4日
ストラウスはかせわぼくが考えたことや思いだしたことやこれからぼくのまわりでおこたことわぜんぶかいておきなさいといった。なぜだがわか...

こんなに読みにくい(字面的に)書き出しの本は、はじめてでした。
この読みにくい文章を書くのが、主人公である知的障害を抱える青年。その青年が外科手術を受け、担当医に経過報告を書くよう指示された時点からものがたりは始まります。それが、3月4日。

手術後、知能指数が急激に上昇していきます。普通の人々が送るであろう成長の階段を一気にかけあがるわけです。知恵・知識がつくと見える景色が変わります。知りたくもなかったことが聞こえてきます。

知能は高まっても、精神は、同じ速度で高まらない。

この速度の差からくるひずみが、青年と関わる人々との関係を独特にしていきます。手術前までは青年を知的障害者として見ていた人々が、術後の変化に対して拒絶反応を示す。優しくしてくれていたひとが、自分のまわりを離れていく。かつての繋がりが消え、新しい関係性が生まれる。この関係性の変化が、たまらなく切なくて虚しい。

そして、ねずみのアルジャーノン。アルジャーノンも、主人公と同じ手術を受け、知能指数が急激に高まります。青年は、経過報告にアルジャーノンの術後の変化、実験結果を記載してくことになります。このアルジャーノンに対する青年の感情の機微もまた、切ない。

『けえかほうこく』が、『経過報告』になっていく。冒頭の読みづらい文章は、洗練されていく。

青年の名前は、チャーリィ・ゴードン。
中学の時に、これに共感できなかったのは、僕が、チャーリィの精神年齢の最高点に達していなかったから。20歳を過ぎてから、このものがたりの良さが、本当にわかるようになってきた。

りょうたろう


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