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介護事業者の経営難
【2,179字】
介護事業者の休廃業が急増した背景には、特に、新型コロナウイルスの流行にともなう利用控えが大きな衝撃となったことが大きいです。
特に訪問介護の場合、利用者が「自宅での介護サービスを受け入れること自体に感染リスクがある」と感じ、サービスを一時的に取りやめたり頻度を減らしたりするケースが目立っていました。
結果として売り上げが大きく落ち込み、規模の小さな事業者では新たな設備投資や人件費の維持が困難となり、経営難に直面しました。もともと訪問介護はスタッフを利用者宅へ派遣するため交通費や人件費がかさみやすいのですが、利用者数が回復しきれないままに融資の返済時期だけが迫り、事業継続が難しくなった事例が多かったと考えられます。
東京商工リサーチによりますと、去年1年間に確認された介護事業者の休業や廃業、それに解散の件数は、全国で612件と、前の年から1.2倍増え、平成22年に調査を始めて以降、最も多くなりました。 内訳は「訪問介護」が最も多く448件と全体の7割以上を占め、次いでデイサービスなどの「通所・短期入所」が70件、「有料老人ホーム」が25件となっています。
物価高騰や光熱費などの上昇によって経営環境がさらに圧迫された点も見過ごせないです。
介護報酬は基本的に国の制度によって定められた範囲内で設定されますが、急激なコスト上昇に対して報酬の改善は常に後手に回りやすいです。
この陰にある真実は、詳細な介護業態ごとの収益分析状況も、コロナ禍後も、以前としてと同じく厚生労働省は3年ごとにしか実態を把握していないということです。毎年の実態把握に早急に改善していかないと時流に追いついていけないわけなのです。
特に小規模事業者の場合、利益率が高くないうえに運転資金の余力が少なく、食材費やガソリン代の上昇がそのまま収益を直撃します。
デイサービス事業者であれば施設の維持管理費や送迎車両の燃料費、有料老人ホームであれば居住スペースの空調や給食のコストなどが大きな負担となります。
加えて、スタッフの労働条件を改善して離職を防ぎたい思いはあっても、人件費を抑えなければならない厳しい現実があり、経営破綻に追い込まれるリスクが高まったと思います。
さらに介護報酬の算定基準が複雑であることも経営上の不安定要素になっています。訪問介護や通所介護のサービス提供量やケア内容に応じて報酬は決定されるが、国全体の社会保障費を抑制する動きや制度改定によって収入が大きく変動する可能性もあります。
一度赤字の状態に陥ると、新しいサービスメニューを企画してもすぐに利益へ結びつきにくく、スタッフ教育や設備投資に回す余力が削られてしまうため、負のスパイラルに陥りやすいです。
とりわけ訪問介護では利用者が複数の事業所を使い分けることもあり、一社当たりの安定した確保が難しいのです。こうした脆弱な収益構造が、コロナ禍や物価高といった外的ショックを受けたときに大きく経営を揺るがす要因となったと思います。
競合の激化にも注視が必要です。利用者が少ない地域に複数の事業所が新規参入することで、単価の低いサービスや利用者奪い合いが発生し、どの事業者も十分な経営規模を確保できずに潰し合いに近い状態に陥ることが起きています。
特に訪問介護では自宅から近い範囲に密着したサービスという特性上、小規模事業者が機能的に地域社会から必要とされやすいですが、新型コロナウイルスを機に需要が一時的に落ち込むと余剰となった事業者が淘汰される状況が生まれやすくなり過ぎたのだと思います。
病院など医療法人と経営が一体となっている法人、大規模な法人は一定の資本力で一時的な赤字を吸収できるかもしれませんが、小規模事業者ほどその余裕がなく、休廃業の増加につながったとみられます。
これらの理由が複雑に絡み合った結果、コロナ後に需要が多少戻りはじめても、借入金の返済やスタッフ確保の目途が立たずに閉業を選ぶ事業者が相次いだと思います。
その裏には「介護という公共性の高い事業だからこそ、利用者の生活を守りたいがために赤字経営でもしばらく踏みとどまっていた」という背景もありますが、物価高や人手不足が長引いたことで事業継続が不可能になったケースが増えたと考えられます。
今後も介護スタッフの確保難と報酬基準の見直しが続く中で、同様の理由による休廃業や倒産が増える可能性は高いと思います。地域での必要な介護サービスを国策で、どう支え続けるかが大きな課題となっていると思います。
中小零細の介護事業者の経営に深く関わってきました。その収益構造の低さにそもそも国策としての大きな舵取りが必要だと以前から考えてきました。名高い議員立法など政策に取り組んでいる政治家に、実態をお伝えしたこともあります。
しかし、この中小法人、零細法人を下支えする介護事業の保険点数の加算、介護報酬の算定基準の改定には、病院など医療法人と経営一体となっている法人、すなわち、医師会の意向や賛成が根強く、大きな壁となるものです。最も困難なものが、介護報酬の算定基準の改定にあると思います。
介護分野での中小法人、零細法人を下支えする「新たな介護事業の中小法人の区分の定義の新設」とそれに合わせて、早急に介護事業の中小法人、零細法人を対象とする保険点数の加算へと変革できる『変革の政治家』を熱望しています。
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