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人口減少社会への覚悟〜労働・地域・文化を変革するデザインと行動③

【第2回】労働力の減少と“縮む経済”今までと同じ発想の限界からの脱却

【1,569字】

 地方創生といえば、これまでは「地域を活性化し、過疎を克服する」という路線がほぼ絶対視されてきました。

 しかし、現実には人口の大幅な流出や少子高齢化が進み、「もはや活性化が見込めない地域」も存在するのが事実です。

 ここで私は、あえて“すべての地域を活性化する”わけではないという議論も含めて、地域社会の選択肢を正面から考え伝えてたいと思います。

 ここでのポイントは、必ずしも悲観的な諦め論に陥るのではなく、「どこに資源を集中し、どこを機能縮小するか」を住民や自治体が主体的に判断するという“覚悟”を打ち出すことにあります。


 具体的には、まず地域コミュニティが存続できる“人口ライン”を考察する必要があります。


 たとえば、学校や病院、商店街といった基礎的な社会インフラを維持するには最低限どれだけの人口が必要なのか。

 一部の自治体では独自に算出した“存立ライン”を下回った集落を“特別管理地域”に指定し、インフラの維持を段階的に縮退する取り組みを始めています。

しかし、住民や近隣自治体との調整が難航し、結果的に行政と住民双方が不満を抱えたまま中途半端に終わってしまう事例もあるのです。

 他方、ある程度見込みのある中核地域に資源を集中する“選択と集中”を進めた自治体の中には、意外な成功を収めているケースもあります。
 たとえば、長野県小布施町や福岡県大牟田市などは、集中的な運営や地域資源の再編に取り組んでいる自治体として知られています。

 小布施町では、人口減少を受けつつも、中心市街地での施設の集約や、保存・活用できることに注力した取り組みが行われています。


 また、選択と集中のアプローチを取った自治体の場合、特定の地域への資源集中を行い、他の地域のインフラの縮小を決定することもあります。

https://www.city.omuta.lg.jp/kiji00319185/3_19185_104658_up_c5hhl4ru.pdf

 たとえば特定の拠点市街地に公共施設や医療機関、交通を集約し、その代わり周辺集落のインフラは“撤退”を容認するという政策です。

 住民には負担が増えるように見えるかもしれませんが、長期的には行政コストを大幅に削減し、住民同士が集中拠点で交流することでコミュニティの活力が高まったという報告があります。

 外国人住民や移住者も、この集中拠点に住む選択肢を取りやすくなるため、結果的に地方定着につながりやすい面もあるのです。

 こうした“縮退”や“合併”の策は、ともすれば地域の伝統やアイデンティティを失わせるという批判が起きがちです。

 しかし、いつまでも採算の合わないインフラを維持し、住民負担ばかり増える状況から抜け出せなければ、将来は地域全体が限界集落化し、事実上の崩壊を迎えるリスクが高まります。

 むしろ、今のうちに身の丈を見極め、機能集約や移転を受け入れる覚悟を持つことで、かえって残った地域が安定し、若者や新規参入者の呼び込みにもプラスになる可能性があるのです。


 ここで「包摂の転機」との差別化が明確になるのは、すべての地域が同じように活性化を目指すわけではないという点です。

 多文化共生や移住促進といった発想も大切ですが、それだけでは住民や自治体の“体力”を大きく消耗させる場合もあり得ます。

 ここに、“拡大路線”を捨てる選択を下せるかどうか、それが人口減少時代の地域社会が直面する大きな分岐点なのです。

 もちろん、住民それぞれにとっては葛藤があるでしょう。しかし、その“覚悟”を決めることで、むしろ新たなビジネスや観光開発に資源を回せたり、強みを引き出しやすくなったりするメリットも見込めます。

 ここでは、こうした“覚悟の縮退”や“機能集約”を実施しつつ、最低限の生活環境を守り抜くシナリオと、その成功・失敗事例を具体的に紹介しながら、「地域活性化ありき」とは異なる新たな方向性を示しました。

 そこには確かに厳しい決断も含まれますが、「すべてを活性化するのは無理」という現実を正面から受け止めるからこそ、新たなチャンスやイノベーションが生まれる余地が生まれるのではないでしょうか。

【次回に続きます】



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