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人口減少社会への覚悟〜労働・地域・文化を変革するデザインと行動④

【第3回】文化と共同体の再定義~少人数でも維持する価値は何か 差別化の狙い

【1,648字】

 人口減少社会の中で地域コミュニティが抱える課題は、単に経済やインフラの不足だけにとどまらないと思います。

 人が減るにつれ、従来の伝統的な行事や風習をどう維持するのかという“文化的断捨離”の決断が迫られます。今日は、「多文化共生」を大々的に推進する議論を避けつつ、少人数になった地域社会が何を守り、何を諦めるのかという現実的な選択に焦点を当ていきます。

 大規模な祭りや行事をフルスケールで続けることが難しくなる反面、縮小や簡素化の過程で新しい価値が生まれることもあるのです。


 たとえば、ある集落ではかつて毎年盛大に行われていた神社の祭りが、高齢化と若者の流出によって存続の危機に陥りました。

 地元住民が話し合った結果、「神事そのものは守りつつ、出店や余興は最低限にし、そのかわりオンライン配信で外部の人たちとも共有する」という折衷策を採用。

 思い切った“行事の省エネ化”と“デジタル技術の導入”を同時に進めたことで、祭りを一挙に廃止することなく、小規模でも続ける道を模索しています。このような例は、今の時代ならではの“文化的断捨離”といえるでしょう。


 また、「若者向けのイベントに切り替える」という大胆な再編に踏み切った地域もあります。

 昔からの収穫祭や芸能行事を一部廃止し、その代わりに若者が主導する音楽フェスやマルシェを定期的に開催。伝統行事と全く別物に見えるかもしれませんが、地元の特産物や季節の風習を新たな形で表現するなど、かつての文化要素を“再編集”して残している例もあります。

 そこでは高齢者がゲストとして招かれ、過去の行事を紹介するコーナーが設けられるなど、世代を超えた共同体づくりが試みられているのです。


興味深いのは、“移住者や外国人がむしろ伝統文化を守っている”という逆転現象も起きている点です。

 たとえば、東北地方のある祭りでは、若者の担い手がほとんどいなくなった状況下で、移住者のグループが太鼓や踊りを学び、自らが継承の中心になって盛り上げているという事例が報告されています。

 地元住民が「よそ者が本当に守れるのか」と当初は懐疑的だったものの、実際には移住者が一生懸命に習得することで、地元民も改めて伝統を見直すきっかけになったというわけです。


 ここで重要なのは、「伝統文化をすべて残す」か「まったく手放す」かの二択ではなく、地域社会の残存人口や意欲を踏まえて「どこに力を注ぎ、何を簡素化するか」という具体的な取捨選択を迫られることです。

 たとえば、神社の祭りは続けるが、地域ごとの小さな行事は統合する、といった折衷策も現実的な選択肢の一つでしょう。

 デジタル技術が進むことで、古い行事をオンラインで記録・配信し、外部の協力者を募るという発想も浸透しつつあります。何が、尊く守り育んでいきたいのか。


 少人数の地域社会でも「維持すべき価値はどこにあるのか」を真剣に見定め、守る文化と手放す文化を明確に分ける“文化的断捨離”こそが、人口減少時代における新たなコミュニティ形成の鍵になってきます。

 多文化共生を大々的に謳うのではなく、「縮んだ地域で何を残せるか」という覚悟を住民自身が持つからこそ、外部から来た移住者や外国人が活路を見いだしたり、逆に住民が新しい文化要素を受け入れたりする余地が生まれます。

 こうした“再定義”の動きに注目し、具体的な再編の手段や成功事例・失敗事例を通じて、人口減少社会の文化継承をどのように考えればいいのかを探っていたいと思います。

【次回に続きます】


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