自由が丘翻訳舎

出版翻訳者(主に英日)の集まりです。翻訳・レジュメ作成承ります。オンライン勉強会、企画…

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出版翻訳者(主に英日)の集まりです。翻訳・レジュメ作成承ります。オンライン勉強会、企画持ち込み、翻訳案件の互助など、ゆる~く活動中。お仕事のご用命は、Jiyuugaoka.honyakusha@gmail.com まで。https://x.com/mccfdp38ima1yre

記事一覧

海外ロマンス温故知新4 リン・グレアムの真骨頂! 大富豪xシークレットベビー『億万長者は天使にひれ伏す』

『億万長者は天使にひれ伏す』 リン・グレアム 八坂よしみ 訳 ハーパーコリンズ・ジャパン 2024年5月5日発行 ストーリー★★★★☆ ヒーロー ★★★☆☆ ヒロイン ★★…

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命がけの片思いが切ない! ありそうでなかった鉄道×恋愛×ホラー『眼下は昏い京王線です』

『眼下は昏い京王線です』 芦花公園 2024/8/28 大学二年生の琴葉は、サークルの飲み会の帰りにお持ち帰りされそうになっていたところを助けてくれた「シマくん」という男…

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ダークな読後感が癖になる!土着信仰×土地の因縁『極楽に至る忌門』

『極楽に至る忌門』 芦花公園 2024年3月25日 四国の山間部に伝わるとされる猿神信仰をベースにした、4扁の作品が収録されたオムニバス。昔からその辺りの山には天子(て…

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タイトルの付け方が独特な2つのホラー作品について

読んだ本について、特に深い考察もなく、感じたままに書くだけの緩い記事です。今回は去年『近畿地方のある場所について』で鮮烈なデビューを飾った背筋さんの新作2作を読…

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『新凱旋門物語 ラ・グランダルシュ』(北代美和子訳、草思社)の書評が掲載されました

フランスのパリにて夏季オリンピックが開催されているタイミングで、「図書新聞」(No.3651・ 2024年8月10日号)に、ロランス・コセ『新凱旋門物語 ラ・グランダルシュ』(…

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8/6(火)21~22時 NHK BSP4K『ダークサイドミステリー:「魔法使い」はどのように生まれたのか』に出演!

英国の大学でアーサー王伝説と魔法使いマーリンをテーマに修士・博士号を取得し、現在は日本の大学で非常勤講師を務める、自由が丘翻訳舎メンバーの田中ちよ子さんが、NHK…

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100分de名著 ジョーゼフ・キャンベル『千の顔をもつ英雄』

現在放送中のNHK Eテレの番組『100分de名著』にて、ジョーゼフ・キャンベル『千の顔をもつ英雄』(訳:倉田真木他)が紹介されています。 放送は、7/1、7/8、7/15、7/22(…

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循環系?ホラーコミック、コワい話は≠くだけで。

読んだ本について、特に深い考察もなく、感じたままに書くだけの緩い記事です。今回はホラー系コミックスを読んでみました。noteの中で素晴らしい考察をされている方がいら…

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『鳥が人類を変えた――世界の歴史をつくった10種類』(スティーヴン・モス著、宇丹貴代実訳、河出書房新社)の書評が掲載され…

「図書新聞」No.3644・ 2024年6月22日に『鳥が人類を変えた――世界の歴史をつくった10種類』(スティーヴン・モス著、宇丹貴代実訳、河出書房新社)の書評が掲載されまし…

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『絶海──英国船ウェイジャー号の地獄』

ノンフィクション作家デイヴィッド・グランの最新作、 『絶海──英国船ウェイジャー号の地獄』(早川書房)が発売されました。 1740年9月18日にポーツマスを出航したウェ…

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海外ロマンス温故知新3 元祖婚活女子が火花を散らす、きらびやかなロンドンの舞踏会へようこそ!

華やかで優美なロンドン社交界で夜ごと繰り広げられる舞踏会は、ヒストリカル・ロマンスの目玉といえるのではないでしょうか。貴族の子女たちにとって、社交シーズンの舞踏…

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海外ロマンス温故知新2 野性味あふれるハイランダー、いかがですか?

ハイランダーは通常、スコットランド北部に住む戦士たちです。ロマンス小説でハイランダーものの表紙にはたいてい「筋骨隆々で上半身裸にタータンチェックのキルト」という…

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海外ロマンス温故知新1 俺様系ヒーローに翻弄される快感がたまらない

ロマンス好きの方ならご存知でしょうが、海外ロマンス小説は「愛を知った侯爵」だの「愛を知らない侯爵」だの、似たようなタイトルが多いです。うっかりしていると、一度読…

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【2023年】私の推し本(岡田ウェンディ)

今年は西東京読書会に2回参加させていただき、その時の課題図書2冊と、翻訳家で西東京読書会世話人をされている小林さゆりさんの訳された1冊をご紹介します。 『誰?』 ア…

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【2023年】私の推し本(本間綾香)

今年は仕事のためアルコール依存症関連の本をたくさん読みました。その中からオススメしたい本(&映画1作)を紹介します。 まんきつ『アル中ワンダーランド』(ノンフィ…

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【2023年】私の推し本(曽根田愛子)

初めて書くnoteが、今年の終わりにあたってのnoteです。 私の推し本は、和書、洋書から一冊ずつ。 どちらも新刊ではないのですが、個人的に今年買ったもので、何回も読み返…

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海外ロマンス温故知新4 リン・グレアムの真骨頂! 大富豪xシークレットベビー『億万長者は天使にひれ伏す』

海外ロマンス温故知新4 リン・グレアムの真骨頂! 大富豪xシークレットベビー『億万長者は天使にひれ伏す』

『億万長者は天使にひれ伏す』
リン・グレアム
八坂よしみ 訳
ハーパーコリンズ・ジャパン
2024年5月5日発行

ストーリー★★★★☆
ヒーロー ★★★☆☆
ヒロイン ★★★★☆
切ない  ★☆☆☆☆
ゴージャス★★★★★
ハラハラ ★★☆☆☆
笑える  ★★☆☆☆
ホット  ★★★★☆

【萌えポイント】
ゴージャスなプレゼント、風光明媚なリゾート、珍しい料理。ヒーローの感情が高ぶったときに思

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命がけの片思いが切ない! ありそうでなかった鉄道×恋愛×ホラー『眼下は昏い京王線です』

命がけの片思いが切ない! ありそうでなかった鉄道×恋愛×ホラー『眼下は昏い京王線です』

『眼下は昏い京王線です』
芦花公園
2024/8/28

大学二年生の琴葉は、サークルの飲み会の帰りにお持ち帰りされそうになっていたところを助けてくれた「シマくん」という男性にひとめぼれし、猛アプローチの末に連絡先を交換します。それが命がけの片思いの始まりとも知らずに……。
琴葉によれば、シマくんはいわゆるイケメンとは違うけれど、蕩(とろ)けるような低い声で、メスを引き寄せる謎の電磁波みたいなもの

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ダークな読後感が癖になる!土着信仰×土地の因縁『極楽に至る忌門』

ダークな読後感が癖になる!土着信仰×土地の因縁『極楽に至る忌門』

『極楽に至る忌門』
芦花公園
2024年3月25日

四国の山間部に伝わるとされる猿神信仰をベースにした、4扁の作品が収録されたオムニバス。昔からその辺りの山には天子(てんじ)と呼ばれる猿に似た化け物が住んでいて、時々人と話をしに山から下りてくるという。天子は死後に極楽に行ける門の鍵を持っていて、ある契約を結べばその鍵を貸してくれるが、その契約とは、体の一部を3か所捧げ、最後に自分にとって一番大事

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タイトルの付け方が独特な2つのホラー作品について

タイトルの付け方が独特な2つのホラー作品について

読んだ本について、特に深い考察もなく、感じたままに書くだけの緩い記事です。今回は去年『近畿地方のある場所について』で鮮烈なデビューを飾った背筋さんの新作2作を読んでみました。緩い感想なので、特に何の知見が得られるものでもありませんが……。

『穢れた聖地巡礼について』
背筋
2024年9月3日

心霊系YouTuberの池田(チャンイケ)、フリー編集者の小林、オカルトライターで神社の娘で「見える人

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『新凱旋門物語 ラ・グランダルシュ』(北代美和子訳、草思社)の書評が掲載されました

『新凱旋門物語 ラ・グランダルシュ』(北代美和子訳、草思社)の書評が掲載されました

フランスのパリにて夏季オリンピックが開催されているタイミングで、「図書新聞」(No.3651・ 2024年8月10日号)に、ロランス・コセ『新凱旋門物語 ラ・グランダルシュ』(北代美和子訳、草思社)の書評が掲載されました。図書新聞編集部の許可を得て投稿します。https://toshoshimbun.com/

パリのカルーゼル凱旋門とエトワール凱旋門の延長線上に位置する、「新凱旋門」とも呼ばれる

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8/6(火)21~22時 NHK BSP4K『ダークサイドミステリー:「魔法使い」はどのように生まれたのか』に出演!

8/6(火)21~22時 NHK BSP4K『ダークサイドミステリー:「魔法使い」はどのように生まれたのか』に出演!

英国の大学でアーサー王伝説と魔法使いマーリンをテーマに修士・博士号を取得し、現在は日本の大学で非常勤講師を務める、自由が丘翻訳舎メンバーの田中ちよ子さんが、NHK BSP4K 『ダークサイドミステリー』に出演し、魔法使いの原点ともいえるマーリンについてコメントしました。

放送定日は8/6(火)21~22時です。魔法や魔法使いに興味がある方はぜひご覧ください!

100分de名著  ジョーゼフ・キャンベル『千の顔をもつ英雄』

100分de名著 ジョーゼフ・キャンベル『千の顔をもつ英雄』

現在放送中のNHK Eテレの番組『100分de名著』にて、ジョーゼフ・キャンベル『千の顔をもつ英雄』(訳:倉田真木他)が紹介されています。

放送は、7/1、7/8、7/15、7/22(再放送は7/5、7/12、7/19、7/26)の計4回です。第1回は「神話の基本構造「行きて帰りし物語」」、第2回は「冒険への合図にどう気づくか」、第3回は「イニシエーション――試練をどう乗り越えるか」、第4回は「

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循環系?ホラーコミック、コワい話は≠くだけで。

循環系?ホラーコミック、コワい話は≠くだけで。

読んだ本について、特に深い考察もなく、感じたままに書くだけの緩い記事です。今回はホラー系コミックスを読んでみました。noteの中で素晴らしい考察をされている方がいらっしゃいますが、これはあくまでも単なる感想です。

コワい話は≠くだけで。1~3
梨/影山五月

コワい話は≠くだけで。 3 (BRIDGE COMICS)www.amazon.co.jp 733円(2024年06月28日 21:09

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『鳥が人類を変えた――世界の歴史をつくった10種類』(スティーヴン・モス著、宇丹貴代実訳、河出書房新社)の書評が掲載されました 

『鳥が人類を変えた――世界の歴史をつくった10種類』(スティーヴン・モス著、宇丹貴代実訳、河出書房新社)の書評が掲載されました 

「図書新聞」No.3644・ 2024年6月22日に『鳥が人類を変えた――世界の歴史をつくった10種類』(スティーヴン・モス著、宇丹貴代実訳、河出書房新社)の書評が掲載されました。「図書新聞」編集部の許可を得て、投稿します。書評は下記のリンクよりお読みいただけます。(古森)

強欲にまみれた人間の性に翻弄されてきた、そして現在も翻弄され続けている鳥類に思いを馳せる非常に得難い機会となりました。本書

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『絶海──英国船ウェイジャー号の地獄』

『絶海──英国船ウェイジャー号の地獄』

ノンフィクション作家デイヴィッド・グランの最新作、
『絶海──英国船ウェイジャー号の地獄』(早川書房)が発売されました。

1740年9月18日にポーツマスを出航したウェイジャー号を含む小艦隊は、行く先々で伝染病や嵐など幾多の困難に襲われる。壮絶な航海の末、無人島に辿りついた船員たちは生き残りをかけた熾烈な争いを繰り広げる。絶海の孤島でいったい何が起きたのか。そして生き延びた33名の船員の運命は…

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海外ロマンス温故知新3 元祖婚活女子が火花を散らす、きらびやかなロンドンの舞踏会へようこそ!

海外ロマンス温故知新3 元祖婚活女子が火花を散らす、きらびやかなロンドンの舞踏会へようこそ!

華やかで優美なロンドン社交界で夜ごと繰り広げられる舞踏会は、ヒストリカル・ロマンスの目玉といえるのではないでしょうか。貴族の子女たちにとって、社交シーズンの舞踏会はまさに戦場。優雅に踊りつつも、相手の品定めに余念がありません。
今回は、貧乏な下級貴族のヒロインが、妹たちの生活を守るためにお金持ちの結婚相手をゲットしようと奮闘する、よく似た設定のお話を二作、ゆるい感想でご紹介します。二つとも人気作な

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海外ロマンス温故知新2 野性味あふれるハイランダー、いかがですか?

海外ロマンス温故知新2 野性味あふれるハイランダー、いかがですか?

ハイランダーは通常、スコットランド北部に住む戦士たちです。ロマンス小説でハイランダーものの表紙にはたいてい「筋骨隆々で上半身裸にタータンチェックのキルト」という姿で描かれ、つい「ムキムキマンのエンゼル体操」を思い出してしまうのですが(若い人、わかるかな?)、身長は2メートル近くあり、さっきも言いましたが筋骨隆々、非常に寒い地域に暮らしているせいか寡黙で口下手。大事なことを言わなかったりして時々誤解

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海外ロマンス温故知新1 俺様系ヒーローに翻弄される快感がたまらない

海外ロマンス温故知新1 俺様系ヒーローに翻弄される快感がたまらない

ロマンス好きの方ならご存知でしょうが、海外ロマンス小説は「愛を知った侯爵」だの「愛を知らない侯爵」だの、似たようなタイトルが多いです。うっかりしていると、一度読んだものをまた買ってしまったりします。そういうわけで、読んだ本の記録をつけようと思い立ち、書きためていたものを少しずつ投稿したいと思います。ただ感想を書くだけのゆるい記事です。軽くネタバレあったりしますので、これから作品を読みたい方はご注意

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【2023年】私の推し本(岡田ウェンディ)

【2023年】私の推し本(岡田ウェンディ)

今年は西東京読書会に2回参加させていただき、その時の課題図書2冊と、翻訳家で西東京読書会世話人をされている小林さゆりさんの訳された1冊をご紹介します。

『誰?』
アルジス・バドリス著
柿沼瑛子訳
山口雅也=製作総指揮
国書刊行会
2022年12月20日発行

東西冷戦下、アメリカの天才物理学者ルーカス・マルティーノは、極秘計画の実験中に大爆発に巻き込まれ、ソ連側に救助(拉致?)され、大手術の末に

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【2023年】私の推し本(本間綾香)

【2023年】私の推し本(本間綾香)

今年は仕事のためアルコール依存症関連の本をたくさん読みました。その中からオススメしたい本(&映画1作)を紹介します。

まんきつ『アル中ワンダーランド』(ノンフィクション漫画)/飲んだときの暴走ぶりに爆笑。翌日の祭りの後の虚無に首がもげるほど共感。

町田康『しらふで生きる 大酒飲みの決断』(エッセイ)/自分を普通以下のアホと思うことで味わえる人生の幸せ、解放感がある。なるほど!

岡康道&小田嶋

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【2023年】私の推し本(曽根田愛子)

【2023年】私の推し本(曽根田愛子)

初めて書くnoteが、今年の終わりにあたってのnoteです。
私の推し本は、和書、洋書から一冊ずつ。
どちらも新刊ではないのですが、個人的に今年買ったもので、何回も読み返したもの、という共通点で選びました。

Tillie Walden 『Are You Listening? 』(First Second、2019年)
今年、三辺律子さんの訳が話題になった本で、原書のほうで読みました。
どのコマも

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