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海外ロマンス温故知新4 リン・グレアムの真骨頂! 大富豪xシークレットベビー『億万長者は天使にひれ伏す』

『億万長者は天使にひれ伏す』
リン・グレアム
八坂よしみ 訳
ハーパーコリンズ・ジャパン
2024年5月5日発行

ストーリー★★★★☆
ヒーロー ★★★☆☆
ヒロイン ★★★★☆
切ない  ★☆☆☆☆
ゴージャス★★★★★
ハラハラ ★★☆☆☆
笑える  ★★☆☆☆
ホット  ★★★★☆

【萌えポイント】
ゴージャスなプレゼント、風光明媚なリゾート、珍しい料理。ヒーローの感情が高ぶったときに思わず口走るイタリア語。

ヒロインは小学校教師のスカーレット。結婚して間もない夫が事故で他界し、まだ一歳かそこらの双子と夫の両親と暮らしています。夫ルークの死から1年後の追悼式に、二年半前に別れた元カレ、億万長者のアリスティド・アンジェリコが現れ――。

アリスティドは祖父も父も女運が悪く、自分の母が毒女であり、さらに双子の弟がヤバい女にひっかかって自ら命を絶ってしまったことから、結婚に否定的。50歳を過ぎるまで結婚しないとつねづね口にしていました。50歳過ぎたらもう自分の生活ペースが出来上がっていて、逆に結婚は難しいような気もしますが……。
それはともかく、日ごろから「どちらかが飽きるまで一緒にいよう」などと言って常に別れの予感を漂わせたり、「君のことはステディではない」みたいなことを言ってみたり、スカーレットの気持ちをえぐります。

そんなとき、スカーレットは妊娠していることに気づきますが、普段から結婚する気はない、子どももいらない、と言っているアリスティドに打ち明けることができず、黙って家を出ます。後から思えばこれが良くなかったのですが……。そして親友だったルークと結婚し双子を出産(これには事情があるのでした)。ところが、不慮の事故でルークが他界してしまいます。未亡人になったスカーレットの前にアリスティドが現れ、「自分の30歳の誕生日パーティーにパートナーとして同行してほしい」と言い出すのでした。

大御所リン・グレアムによるシークレットベビーもので、安定感があって読みやすいです。ストーリーを動かすようなショッキングな展開はそれほどないのですが、そのぶん二人の心の動きがていねいに描かれていて、「あなたがあのときこう言ったから、わたしはこうした」「君がそういう態度をとったから僕はこう思った」など、繰り返し思い出させてくれるので、ちょっとダレますが、途中で置いてけぼりになることはありません。
ただ、せっかくのライバル金髪美人コゼッタや、ラスボスである母親エリザベッタがもうひと暴れしてくれればさらに面白くなったのに、という気がします。

ヒーローもヒロインもやっぱりお互いにどうしようもなく惹かれあっているので情熱的な描写が多く、あとは二人の心の中にあるわだかまりさえ解決すれば無事に元サヤな感じです。でも粘着質なアリスティドは「僕を捨てて他の男と結婚するなんて!」といつまでもウジウジしているので、そう簡単には元サヤになりません。一冊まるごとかけてようやく解決です……。プライドが高く(スカーレットのことが好きすぎて)嫉妬深いので、いくらお金持ちでも気を付けなくてはならないタイプだと思いました。その分、ハンサムで大富豪なのにプレイボーイというわけでもなく、ヒロインに一途で、別れていた二年半の間もだれとも付き合っていなかったようなので、そこは好感度高いです!

この作品の見どころのひとつは、なんといっても億万長者ならではの、金に物を言わせたゴージャスな旅行やプレゼントです☆彡 ヒーローはイタリア系大富豪でアンジェリコ・テクノロジーズのCEOなので、年商がいくらかは知りませんが、とにかくお金持ち♪ ひとたび旅行に行くことになれば、自家用ジェットでの旅に、旅行用の服とアクセサリーをプレゼントしてくれます。自家用ジェットならもうTシャツとかジャージでいいのではと思いますが、どこでパパラッチに見られているかわからないので一時たりとも気が抜けません。そして旅先でのパーティー用のドレスはもちろん特注。スタイリストがコーディネートしてくれます。ただ、二年半前に別れたときにスカーレットが置いていった、自分がプレゼントした高価なアクセサリーを全部箱に入れてしまってあり、後から返してきたというくだりには、ちょっと引きました……。

また、アリスティドはドミニカに別荘を所有していて、二人でそこを訪れるのですが、その様子も素敵です。特別に用意されたワードローブにジュエリー、歓迎の花々。料理もマンゴーのスムージーにバナナの肉詰めにスイカのピザ! 初めてきくメニューに胸がときめきます。ドミニカの名物料理なんでしょうか。バナナはプラタノなどと呼ばれる料理用バナナを使った料理があるらしいですが。

外国人とのロマンスに欠かせないのが、ヒーローがふとしたときに漏らす母国語です。たいてい気持ちが高ぶったときに出るので、甘ったるい言葉もしくは卑語です(笑)本作では「bella mia・ベッラ・ミーア/僕の美しい人」「Madonna mia・マドンナ・ミーア/僕のマドンナ」「Porca miseria・ポルカ・ミゼリア/ちくしょうなど」。(諸説あり。最後の言葉は絶対にDeepLでは調べないでくださいね!)
外国系大富豪とのロマンス&シークレットベビー、これからも注目していきたいテーマです。
(文責:岡田ウェンディ)
 


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