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命がけの片思いが切ない! ありそうでなかった鉄道×恋愛×ホラー『眼下は昏い京王線です』

『眼下は昏い京王線です』
芦花公園
2024/8/28

大学二年生の琴葉は、サークルの飲み会の帰りにお持ち帰りされそうになっていたところを助けてくれた「シマくん」という男性にひとめぼれし、猛アプローチの末に連絡先を交換します。それが命がけの片思いの始まりとも知らずに……。
琴葉によれば、シマくんはいわゆるイケメンとは違うけれど、蕩(とろ)けるような低い声で、メスを引き寄せる謎の電磁波みたいなものを発しているそうですが、はっきり言って変なヤツです。
「幽霊に会う」ことを切望する彼は、琴葉がその目的に役立つかどうかのテストをするのですが、それは「ミナミミキコ」にまつわる怪異でした。……ミナミミキコ? 思わず『OH!エルくらぶ』で田中康夫氏に「康夫ちゃ~ん」と呼びかけていた南美希子さんの顔が浮かび、怖さが半減してしまいました(笑)
怪異を引き寄せる体質のためテストに合格した琴葉は、その後、シマくんの願いを叶えるために怖い目に遭いまくることに。ひとつ不思議なのは、シマくんがいつも琴葉をひとりで怪異の起こる場所に行かせ、「終わったら、連絡して」と去ってしまうことです。幽霊を見たいんだよね? そこにいなくちゃダメなのでは?

作品のタイトルにあるように、調布、つつじケ丘、千川、千歳烏山、桜上水、明大前、笹塚、新宿と、京王線沿線の8つの町で琴葉が怪異に遭遇し、シマくんが一応助けるというスタイルの連作です。特にご当地怪談というわけではなく、井の頭線でも小田急線でも山手線でも良さそうですが、バラバラの怪談を沿線でまとめるというのは面白いと思いました。特に好きなのは、つつじケ丘のたけおの話、千川の家のオブジェの話、桜上水のサレ夫の話、明大前の焼き肉屋の話です。ええ、わかりやすい話が好きなんです。特につつじケ丘の話は、幽霊とか以前に悲しいわ胸糞だわで、読後感が最悪です♪

結局、琴葉とシマくんの恋の行方はどうなるのでしょう? また、怪異の正体が明かされていないものもいくつかあり、焼き肉屋のあのへんなものや最後のチラシはどういうことか、琴葉が買った本にはどんな意味があるのかなど謎が残ります。エピローグにある人物が登場したということは、いつか続編が出るかもしれません。楽しみに待ちたいと思います。
(文責:岡田ウェンディ)


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