ベッドでボール投げ
今回も「母の介護から想いだすこと」で、女医さんとヘルパーさんの次は、リハビリの先生についてです。
週に2回のリハビリが在宅でありました。リハビリのときは初めに検温や血圧測定、体調についての問答があり、実際のリハビリ時間は30分で、これがなかなか中身の濃い充実した30分なのですよ。
リハビリの先生はスポンジのボール(直径20センチくらい)を取り出し、母とボール投げをします。初め先生は母が受けやすいように投げますが、次第に少し逸らして投げるのですよ。それから手を伸ばさなくては取れないようなボールを投げ、母は叫び声を上げながらも本気でボール投げを楽しんでいましたね。
先生が逸らしたボールを投げた時には、母もちょっと外したボールを返して、子供に戻ってボール投げをしていました。
ボール投げが上手いと褒められて笑顔の母。先生が、次はお手玉でしましょうとお手玉の投げっこもありました。初めはゆっくりと投げ合っていても、次第にお手玉は早いスピードになり、「思いっきり投げていいですよ」と先生から言われた母は「いいですか?」と聞きながら、本当に思いっきりお手玉を先生に投げていました。その時の様子を今思い出しながら書いていますが・・・笑いがこみ上げてきます。まあ、見ものでしたね。母も先生も・・
母はずっとベッドの中ですからマッサージも大切で、脚も身体もほぐしてもらっていましたが、先生はいつも母に質問をしながらのマッサージでした。テレビの画面を見ながら「あれは何ですか?美味しそうですね?何色ですか?甘いでしょうか?酸っぱいでしょうか?固いでしょうか?柔らかいでしょうか?きれいな服ですね?好きですか?」などなど、質問攻めでしたが、母はゲーム感覚で応じて楽しんでいました。
リハビリとは、身体のマッサージだけではなくて、会話をして刺激を与えることだと知りました。会話のリハビリであれば身内でもできますよね。人と話をすると頭は活性化するようで刺激が大切のようですね。
母が元気な間は、身体をベッドの縁に腰をかけた状態でボール投げができましたが、だんだんとそれが難しくなりましたね。リハビリのメニューは少しずつ変化していきました。リハビリの先生にはたくさんの引き出しがあり、そこにはいろいろなものが隠れていて、次は何だろうという期待もあり、先生がまるでマジシャンのように思えました。
最期まで一人の人間として扱う。高齢になっても人としての尊厳が守られている。言葉の端々からそれが感じられました。母の介護を通して学んだことはいろいろとありますが、人としての尊厳が守られていること、これが随所に見られる介護でした。有難いことでした。
見出し写真はある年の1月に咲いていたミニ水仙。今年はまだです。