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知っておこう!5つのタイプの『便秘』 〜自分のタイプを知って正しい対処をしましょう!〜

健康であるための条件の1つに「快便」があります。
近年では腸内フローラや腸管免疫といった言葉をよく耳にするようになり、快便を心掛けて腸内環境の改善を求める方も増加していますが、便秘に悩む方は一向に減りません。
便秘の場合、お腹が重たく不快であるということだけではなく、吐き気や食欲不振など消化器系の症状から、老廃物の再吸収によって汚れた血液が全身を巡ることで、肩こりや婦人科のトラブルなどあらゆる病気の引き金になることも十分に考えられます。
また、中医学の理論体系では、『大腸と皮膚は表と裏(皮膚が表で大腸が裏)の関係』とあり、便秘になると皮膚表面のニキビや吹き出物として症状が現れる理由はここあると考えます。便秘を改善することは、体の様々な不調の改善にも繋がるのです。

中医学の考え方では便秘を5つのタイプに分類します。
これらのタイプを理解して、それぞれに合った対応をすることが大事です。

・腸が乾燥している燥秘(そうひ)
・胃腸の働きが低下し、蠕動(ぜんどう)運動が弱い虚秘(きょひ)
・ストレスなどで気の流れが悪い気秘(きっぴ)
・腸が冷えている寒秘(かんぴ)
・腸に熱がこもっている熱秘(ねっぴ)


《燥秘・虚秘タイプ》
病院でよく処方されるものとして、酸化マグネシウム剤があります。マグミット錠が代表的なものです。腸管での水分の吸収を抑制し、腸管内容物を膨張させ排便を促します。優しい下剤として幅広く使用されています。
漢方では生薬・麻子仁(ましにん)が主成分の「麻子仁丸」がその働きによく似ています。便に水分を含ませ柔らかくすることで、硬くてコロコロ便になりやすい方に服用すると良い処方です。歳を重ねて体内の潤いが少ない燥秘タイプには便の出を助ける目的で使用します。虚秘タイプの方に使うこともありますが、虚秘タイプは必ずしも下剤を使用せずに、胃腸の力を高める「補中益気湯(ほちゅうえっきとう)」などを中長期的に服用することや、お腹周りの筋肉を鍛えること、ストレッチを入念にすることで便秘を改善することもできます。また、燥秘の方は水分をしっかり摂らなければと言いながら、利尿作用の高いコーヒーや紅茶を多飲していては、腸管の水分が不足し、体内の乾燥を助長しかねませんのでご注意を!

○オススメの食材
・燥秘タイプ/ハチミツ、ごま、クルミ、松の実、桃、梨、オリーブオイル
・虚秘タイプ/サツマイモ、じゃがいも、山芋、かぼちゃ

また、2つのタイプに共通して血虚(血液が不足した状態)も便秘の原因と考えられます。生理のある女性や、内臓機能が落ちてくる高齢者の方に該当するケースが多いです。血液は体の潤い作用でもあり、内臓機能を高める上で大事な働きをします。血液を増やす生薬で代表的なものに当帰(とうき)がありますが、当帰には血液を増やす働き以外にも「潤腸作用」といって、腸管をほどよく潤し、穏やかに排便を促す作用があります。よく婦人科で当帰の入った漢方薬を処方されることがありますが、下痢体質の女性は服用前によく注意しておくと良いでしょう。

○オススメの食材
血虚タイプ/レバー、豚足、牡蠣、イカ、タコ、赤貝、卵、ピーナッツ、ほうれん草、小松菜、人参、トマト、ぶどう、ライチ、なつめ、枸杞の実


《気秘(きっぴ)タイプ》
現役社会人などに多いのが気秘。
仕事や子育てに追われ、ストレスが原因で消化機能が低下し、便秘や下痢になる方がいます。他にも、
・便意があるのに排便できない
・ガスが溜まる
・お腹が張る
・頻繁にゲップが出る
・イライラする
といった症状があればストレスタイプの便秘といえます。
そんな時はストレスを発散させる行気(こうき)作用のある陳皮(ちんぴ)、枳実(きじつ)、枳穀(きこく)などの柑橘類を原材料にした生薬や、植物を原材料にした香附子(こうぶし)、木香(もっこう)、厚朴(こうぼく)、檳榔子(びんろうじ)などの生薬が良いとされます。香附子、木香の場合は止痛作用もあるので、ストレス性の胃痛やお腹の痛みの緩和にも併せて期待できます。

○オススメの食材
・みかん、オレンジ、グレープフルーツ、金柑などの香りの良い柑橘類
・玉ねぎ、らっきょう、そば


《寒秘(かんぴ)タイプ》
冬が終わりに近づき、春を迎え、だんだんと気温が高くなり、「暑くなってきてから便が出にくい」というのが寒秘タイプ。
寒秘の便は初めが固く後は軟便、便が細く切れ切れ、お腹が冷たい、手足が冷える、トイレが近い、舌が白っぽい … 等の特徴が見られます。「ヨーグルトや生野菜を食べているのに便が出ない」という方もよく店頭でお見かけします。冷房や冷たい飲食物の増加によって胃腸が冷え、腸の働きが鈍くなっていると考えられます。腸は37度で腸内環境が整いやすく、温めると働きは高くなり、冷やせば低下します。冷えたヨーグルトを食べれば腸は冷え、食物繊維の多い生野菜や果物をモリモリ食べても、寒秘の場合は火に油を注ぐとこになります。そんな時はシンプルに腸を温めましょう。お味噌汁は乳酸菌も豊富でオススメです。 常に体温以上の温かい物や火を通したものを口にすることを心掛けてください。
他にも、寒秘タイプは夏でも一日通して冷え対策をすることが大事です。毎日シャワーで済ませたり、冷たいものの摂り過ぎ、エアコンで冷やしっぱなしの状態には十分に気をつけましょう。
漢方薬では「桂枝加芍薬湯(けいしかしゃくやくとう)」、「小健中湯(しょうけんちゅうとう)」、「大建中湯(だいけんちゅうとう)」など腸を温める処方を活用されると良いでしょう。

○オススメの食材
・にら、えび、鮭、アジ、なまこ、クルミ、羊肉、シナモン、こしょう、山椒、黒砂糖


《熱秘(ねっぴ)タイプ》
便が固く臭い、お腹が張って痛い、口が渇いて口臭が気になる、顔が赤い、などの特徴があれば食べ過ぎタイプです。
中医学では食べ過ぎタイプのことを「肥甘厚味(ひかんこうみ)」と表現することがあります。文字の通り、肥とは脂肪、甘とは甘いもの、厚味とは味の濃いものを指し、揚げ物や肉食過多、お菓子などの甘いものを好む方を例えます。日常的に食事が「肥甘厚味」に偏り、食べ過ぎ飲み過ぎが加わると、腸管に熱が込もった状態になり便秘を引き起こします。市販薬の武田漢方便秘薬は「大黄甘草湯(だいおうかんぞうとう)」という処方が元になっており、生薬・大黄が腸の熱を取り去り、熱秘タイプの便秘には効果的です。他にも、脂肪を燃やすといったうたい文句で販売されているナイシトールZ(元は漢方の防風通聖散/ぼうふうつうしょうさん)なども、大黄が使用されているので熱秘タイプの便秘にはご利用頂けますが、虚秘タイプや寒秘タイプの方がこれらの処方を連用すると、内臓機能が消耗するのに加えてお腹を冷やし過ぎて、自力での便通が見込めなくなる可能性もありますので、十分にお気を付けください。

○オススメの食材
・バナナ、パイナップル、こんにゃく、アロエ、イチジク

《タンニンの摂り過ぎにはご用心》
皆さんの嗜好品の中にはタンニンを多く含むものがあります。
例えば、ワインやコーヒー、紅茶、濃い緑茶、柿などです。このタンニンには便を固くする作用があり下痢止めには効果があっても、多量に摂ると便秘傾向になることもあります。実際に下痢止め薬(止瀉薬)にもタンニンが主成分として使用されているものもあります。
便秘のつらい方はタンニンの多く含む食材の摂取頻度を控えてみるのも、便秘改善の養生になります。


自分自身の便秘のタイプを知ることや、その上で日常の習慣を少し変えることは便秘改善にとって大切なことです。人によっては便秘のタイプが複数にまたがることもあり得ますので、自分がどのタイプかを十分に理解して、それぞれに合った処方や対策をすることで、必ずしも下剤を使わなくても毎日の快便を得られることができます。
タイプによって対処法も本当に様々です。まずは自分の便秘の状態をしっかり把握してみましょう!!

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