【文学】ベストセラーはいかにして書かれるのか?
《ベストセラー創作入門》
「ベストセラーになる作品にも
欠陥や偏りはあるものだ。」
これは、20世紀イギリスを生きた
文豪モームの言葉です。
それでもなお読者を虜にする力が
あるものがベストセラーになる。
では、何があれば、
読者を虜にできるのでしょう?
以下、モームが書いた
「ベストセラー論」を
ご紹介しましょう。
ベストセラーになる魅力は、
まずは、読者に我を忘れさせる
「物語性」が宿らねばならない、
そう、モームは書いています。
ここでいう「物語性」とは
何でしょうか?
登場人物たちが、
あまりにいきいきと描かれていて、
そのために、読者が次々と
ページをめくらないではいられない
誘惑や魅力のこと。
そこには、
どんなに時代がうつろうとも、
我々にとり、
永遠のテーマである、
生と死、善と悪、野心や要望等が
取り上げられている。
しかも、
作者独自の強い個性を通して
描かれていることも肝要です。
そのため、どの作中人物の中にも、
激しい意欲や感情が脈打っている。
言いかえれば、
ベストセラーの作品たちは
人間だれしもが共通にもつ
本能と情熱と欲望とが、
作者独自の強い個性によって
開花されていて、
永遠に失われぬ魅力になっている、
とモームは言うのです。
作中の人物といい、
作品のテーマといい、
結局は、その根本には
それぞれの作者の異常な個性が
あればこそ、
その作品は時と所を超えて、
数多くの読者に
読み続けられるのだという。
言うなれば、
異常なほど強い性格、強い個性が
どうも必須のようです。
そうした指摘は、最近の日本の
ベストセラー講座では、
まず為されていないような…。
それは、
異常に強い個性の持ち主、
いわば、かなりの変わり者しか
ベストセラーは書けないのか?と
読む人間を門前払いにするような
印象を与えそうで、
そんなベストセラー指南本は
今の日本では売れないからでしょう。
さすが、歯に衣着せぬ
モームの辛口エッセイだ(笑)。
でも、モームが言う「個性」は
人が努めて磨くものを指している。
単なる異常な変わり者、ではなく。
だから、門前払いはしていない。
ちなみに、このモームが
ベストセラーと呼んでいるのは、
『ゴリオ爺さん』
『戦争と平和』
『デイヴィッド・コパフィールド』
『赤と黒』
『カラマーゾフの兄弟』
『嵐が丘』
『高慢と偏見』
『ボヴァリー夫人』
『白鯨』などなどです。
このモームのベストセラー論は、
岩波文庫『読書案内 世界文学』の
中に収められた、
わずか12ページのエッセイです。
良かったら
直にお読みください。
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