【最高の冒頭文】私と世界のあり方とは?
《この世界がきみのために存在すると思ってはいけない》
毎回この文章を読むと
心の背筋が凛とする。
これは、池澤夏樹さんの
芥川賞作品『スティル・ライフ』
冒頭文。
上に続けて、
「世界はきみを入れる容器ではない。
世界ときみは、二本の木が並んで立つように、どちらも寄りかかることなく、それぞれまっすぐに立っている。」
続けて
「…略……きみの中にも、一つの世界がある。きみは自分の内部の広大な薄明の世界を想像してみることができる。
…略……並び立つ二つの世界の呼応と調和をはかることだ。たとえば、星を見るとかして。」
こんなに、人生や生命の摂理を
分かりやすく語り切った文章は、
なかなか見当たらない。
文学の冒頭文なら、
個人的には、
この『スティル・ライフ』が
ずっと、ずっと、ナンバーワンです。
人生に迷ったり、
絶望しかけたり、
誰かに依存しかけたら、
また、過度に期待し過ぎたら、
その度に何度も読んできた。
こんなに、人生や世界の
全てについて答えた文章に
出会えた事は本当に幸せ。
最後に。
略した部分で、
捨てがたい箇所がもう1つ。
「きみは自分のそばに世界という立派な木があることを知っている。それを喜んでいる。世界の方はあまりきみのことを考えていないかもしれない」
実存について、こんなにスッキリ
説明してくれた哲学者はいただろうか。