【創作】面白いのは、作者ファースト本か?読者ファースト本か?
作家にとって大切な本と、
世の中的に売れる本は、
ぜんぜん違います。
なぜそんな違いが出るんでしょう。
岸政彦さんという
社会学者が最近、
小説を書いて芥川賞候補に
なったりしています。
『図書室』『ビニール傘』などなど。
ただ、私は岸さんが
社会学者として出会ってきた
様々な人とのエピソード集が
やはり断然面白く感じます。
『断片的なものの社会学』
おそらく、社会学者として
発表していたエッセイから
誰か、ある文芸編集者が
この人は小説家になる資質がある、
書いてもらおうと考えたに
違いありません。
文芸編集者はいつも
そんな目で学者や戯曲家を
見ていますから。
でも、巻末にある刷り数を見ても
社会学のエッセイ集が
一番よく売れてるのは明らか。
文芸編集者さんめ!
余計なことをしてくれて〜と、
私は一人勝手に怒っています。
この世には、小説を書けたら
人文系として最高の栄誉、
という暗黙の了解がありますね。
でも、わたしは岸さんからは
もっともっと、
社会学で出会った人たちの
エッセイ集をもっと出して欲しい。
でも、小説を依頼されたら
誰だって喜びますよね。
よく売れる本と、
著者が書きたい本は
どうも一致しないようです。
さて、今度は私の話…。
他社で長期連載してる女性漫画家に
年に1回くらいの割合で、
その作家が書きたいものを、
恋愛要素があるなら、
何を書いてもいいからという約束で
原稿をもらってました。
毎回、人物も設定も違う、
読切り恋愛ストーリーです。
2年半前に私が休職になり、
別の編集が担当になりましたが、
本にするまで残りあと一話でした。
さて、一年数ヶ月前、
会社に復帰したら、
新しい編集長や色々な人から
「お前、あれ、凄く面白いよ、
なんでうつ病になるんだよ、
自信持てよ」と励まされました。
書いたのは漫画家本人ですけどね(笑)。
私も前から自信がありました。
あの連載は面白いと。
ただ、不安もありました。
ファンが食いつくのは
長編作品が一般的です。
短編読切りはかなりリスキーです。
でも、他社で長期連載が売れてる訳で、
その作家の実力は十分です。
私の思考パターンですが、
せっかく私と仕事して頂くなら
他社や大手ではやらないような
冒険にチャレンジしてほしい。
その作家の新しいポテンシャルを
掘り上げるような企画に挑んで
作家の幅も豊かにして欲しい。
そう考えちゃうんです。
これが時には良い結果も
生むかもしれませんが、
正直、今振り返ると、
やはり定番に徹した方が売れ、
チャレンジ作は厳しい結果に…。
でも、漫画家さんからは
いやあ、あんな作品書けて
良かったあ、と。
問題は、私は作家ファーストであり、
肝心の、お金を出してくれる
読者ファーストではなかった
ということなんですねえ。
今なら、
読者ファーストにすべきか
作家ファーストにすべきか、
その両方を叶える物語にすれば
良かったんですねえ。
あまりに遅ればせながら
正解にやっと辿り着きました。
(笑)