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【ドラマ】宮藤官九郎、あなたはどこへ行くのか?
どうしたんだろう、宮藤官九郎は
今年、2クールもヒットの予感だ!
『不適切にもほどがある』に続き、
『新宿野戦病院』もヒットしそうです。
宮藤官九郎は、もともとは
あまり得意ではなかった。
『池袋ウエストゲートパーク』
『木更津キャッツアイ』
『おれの家の話』
『タイガー&ドラゴン』では
ヤンキーや不良やヤクザが
やたら活躍する場面が多いから。
あるいは
『うぬぼれ刑事』や
『ごめんね青春』は、
何を目指しているのか、
よく理解できなかった。
クドカンのドラマは
悪ふざけ気味な気すらした。
そう。
クドカンはなんだか、
真面目さと悪ふざけのはざまを
縫っていくところが魅力なのかと
今までは思ってました。
でも、あの『あまちゃん』も
クドカンだ。
『流星の絆』もまたクドカンだ。
これらはあくまで真面目だ。
ふざけてはいない。
それから、最近では
『不適切にもほどがある』の
大ヒットは記憶に新しい。
これもまたふざけてはいない。
でも、『季節のない街』を
ドラマ化した時は、
ちょっと見間違いかと思った。
これはもともと山本周五郎の
同名小説があり、
社会の底辺にいる貧しい人たちの
切なくて悲しくて、
でも前を見て行こうという
社会派ヒューマン小説です。
クドカンと、社会派ヒューマン小説?
最初、私はやはり
山本周五郎の『季節のない街』に
巻かれたオビを、
見間違っているのかと、
何度も見返しました。
でも、間違いではなかった。
クドカンはもともと、
山本周五郎の同名小説を
いつかドラマ化するのが
夢だったとさえ言っていた。
へえ〜?
クドカンが、
そんな倫理的なドラマに
執着心があったなんて、、、、
私はクドカンを誤解していたのか。
なにせ、山本周五郎!ですよ。
倫理、道徳、忍耐、修養、、、
説教くさくて、
ふるさを感じます。
道徳や我慢を謳う山本周五郎を
私はもう、正直いって、
令和には置いていかれる作家だとすら
思ってました。
『季節のない街』は
どん底に貧しい人が集まる吹き溜まり。
挫折と苦境に向き合い、生きていく。
人はなんの為に生きるのか?
そんな宗教的な主題を据えた
山本周五郎の代表作は、
実は、かの黒澤明監督が
昭和時代に、
黒澤監督自身の再起をかけて
作り上げた映画『どですかでん』の
原作でもありました。
しかし、この小説は
正直、あまりに人生論過ぎて、
それを映画にした黒澤作品も
説教くささが強くなり、
決して興行成績的には
良かったとは言い難かった。
そんな説教くさい小説を
クドカンも、ドラマ化するとは?
これは今は、
ディズニープラスで観られるけど、
クドカンらしさは
ちょっと鳴りを潜め、
丁寧に原作小説を再現している。
どうしたんだろうか?
宮藤官九郎は?
何か、あったんだろうか?
いや、宮藤官九郎には
そうした人生論みたいな要素が
前々からあったのか?
と不思議に思っていたら、
今度は、歌舞伎町にある設定の
底辺病院のドラマが始まった。
この世は不平等にできている!
という観点から、
不法就労外国人や、
家出少女やホームレスに
手を差し伸べる救急病院が舞台。
なんだか、山本周五郎の
『赤ひげ診療譚』に
インスパイアされている
気配がないでもない。
やはり、宮藤官九郎は
池袋ウエストゲートパークや
木更津キャッツアイの時のような
エンタメ脚本家ではなくなった
ことは間違いない。
一人のクリエイターが
どんなふうに年齢を重ね、
どんなふうに変化していったか
それを同時代でリアルに
観られたのは、感慨深いなあ。
歌舞伎町の病院ドラマはまだまだ
3話までで、見どころはこれから。
毎週水曜日夜10時が楽しみです。