ルーヴル美術館は愉快な思い出と共に
今から30年以上前になるでしょうか
祖父に連れられて、姉と一緒にパリに数日間滞在したことがあります。
フランス、パリといえば
芸術の都
麗しい街並み
お洒落なカフェ
優美な設えのアパルトマン
(扉はロード・オブ・ザ・リング)
行き交う人々は美男美女
(思い出の修正力が入っている)
そんなイメージですが
私は(姉も)パリに行くと
ふわ〜っとしたアジア人差別に
遭遇するので、フランスへ行くときは
少し身構えてしまいます
ただし
祖父は私にとって規格外の男で
アジア人差別に立ち向かう一面が
ありました
座右の銘が
愛と愚と根性
令和には絶滅危惧種のような強いエネルギーの持ち主。NHKのラジオ講座で外国語をマスターする独学の達人で英語と中国語を話しました。
さて
当時ロンドンに駐在していた
叔父夫婦(祖父にとっては息子)の元へ遊びに行ったときのこと
孫娘をパリに連れていってやる
ルーヴルとオルセー美術館は
絶対観に行くべき
ワシと一緒に行けば絶対楽しい
という揺るぎない自信と共に
姉妹はパリへ連れていかれました
わぁ 凱旋門!
エッフェル塔、美しいねー
洋服、雑貨好きな姉妹としては
シャンゼリゼ通りは絶対に行きたい
そうなる予定のパリ旅行は
スポンサーである祖父により
くだらん
そう言われて諦めました。ワシが行きたいところへ孫を連れて行くというミッションはブレることなく遂行されたのです
そんなわけで
行きました
ルーヴル美術館とオルセー美術館
祖父の愉快な解説付きで、ドラクロワ、アングル、レオナルド・ダ・ヴィンチのモナリザ(当時はガラスケースに入っていませんでした)などを観てまわりました。オルセー美術館は元駅舎が美術館になっている素晴らしい建築でした
パリへ連れていってくれた祖父へ
ささやかな御礼がしたいね
密かに話し合い
姉と小遣いを出し合って
この絵の特大ポスターを売店で買ってプレゼントしました。祖父がしきりにこの絵を褒めていたからです。
実際、祖父はありがとうありがとうと礼を言って喜び、叔父や祖母にも自慢していたようです。
ところが
この話しには隠れエピソードが
存在していました
実は どうやら
このポスターをあっさり
初期段階で失くしていた模様
姉と私がこの事実を知るのは
だいぶ後のこと
祖父が亡くなったことで秘め事は
時効を迎えました
さしずめ、ルーブルのトイレ辺りでポイッと置いたと推察しています。一緒にいたのに気づきませんでした。
(ごめんね)
祖父は孫がくれたポスターを落としてしもうたと焦ったそうです。しかし、祖父はそこで終わらない男でしたから、ポスター奪還(買い直し)を叔父夫婦に頼みました。息子よ、どうかルーヴルへ行き、同じポスターを買ってワシへ届けておくれ
お駄賃はハズんだと思います
そんなわけで
今は空き家となった祖父母の家には
リビングにこの特大ポスターがババン!と額に入って飾られています
姉と私が購入して
叔父夫婦が陰で支えた
ナポレオンの戴冠式は
迫力と凄みがあります
額の片隅には写真も添えて
あります。私達姉妹が米粒ほどの大きさで絵の前に棒立ちしている写真
何故なら
いかにこの絵のサイズが大きいか
祖父が気にするポイントは
この絵の偉大さを伝えること
姉妹の棒立ちが物語る
愉快な思い出です
パリ滞在当時、ふと入店した
レストランで英語が通じずに
聞こえないフリをされても
祖父は屈しませんでした。ついには、レストランのメニューをトレンチコートの中に忍ばせて持ちだしました。
自称/一晩拝借するだけ
おじいちゃん
ヤバいよヤバいよ
焦る姉妹の言うことには耳を貸さず、一夜漬けで辞書を片手にメニュー内容を暗記していました。
焦るでない
ワシには算段がある
そうして
僅か数日のパリ滞在は数多ある名店へは行かず、ごく普通の無名なレストランへ連日通うことになりました
何故なら
盗ったメニューを返すため
何なら
この短期間でフランス語
ちょっと話せるよとアピールできる
祖父の負けん気根性と、メニューを(無断で)拝借したお代として店にお金を落とすことになったのでした
思い返すと
パリ越えの個性を出してくる
祖父との旅は楽しかった
たとえ、1ミリもお洒落な場所へ
行けなくとも
ジャック・ルイ・ダヴィッドの傑作
ナポレオンの戴冠式は
縦6.21メートル
横9.79メートル 約60平米
畳では37畳ほど
のサイズがあります
私にとって思い出深い名画の一つ
です。
Junko Summer