映画ドライブ・マイ・カーの感想(原作も読みました)
1月末に観に行って、感想を書きかけていたら時間が経ってしまいました。今朝、アカデミー賞4部門にノミネートされた、というニュースがありましたね。今日は映画をみて、本も読んでの感想など。
(筋に関するネタバレはありません)
先月末時点では、大阪でもミニシアター1か所のみの上映、しかも終わりそうだったので慌てて観に行きました。「話題になっているのだからもっと大きな映画館でやればよいのに」・・と思っていたら、感想を書くまでの2週間の間に次々と他の映画館で上映が始まっていました。
観に行く前にVoicyでちきりんが「レベチの映画」と絶賛しているのを聞いてしまったので、「あまり期待しすぎたらがっかりするので無心で観よう」と心がけました。彼女が称賛していたノマドランドも感動する類の映画ではなかったし(そのあと議論は盛り上がったけど)。
結果、うん、良かった。抑制のきいた表現で、地味ですが3時間退屈とは思わなかったし、考えさせられました。広島の風景も美しかった!(特に旅館の窓からの景色 閑月庵)
ただ絶賛するかというと、個人の好みによると思います。間違ってもアクション映画が好きな人(うちの男ども)と行かなくてよかった。そして濡れ場が長いので、子供を誘いかけたけどやめておいてよかったです。
私が感じたのは、昨秋とある方からお話を聞いて知った概念に通じるということ。泉谷閑示「うつの効用」という本にある心の仕組みについてです。
「頭と、心の間には、開閉可能なフタがある。心の中には、喜怒哀楽が入っっている。心と体は判断を間違うことがないが、頭は「~すべきだ」とか理性で時々心との間にフタをする。フタをすると、感情が膿んでしまって、体に不調がでる」
↑この本と聞いた話だけで投稿を書きたいと思っているくらい常に思考の棚にあるのですが、映画の感想で小出しに紹介してしまいました(汗)
ドライブマイカーは、つまり「心にフタをして生きてしまった主人公」がテーマの映画です。
無理してはいけない、本音を他人への忖度で覆ってもいけない。今の私はそう思っています。
あと、映画で印象に残ったのは・・
ほぼ現代の設定にしてはあり得ないくらいタバコを吸うこと、
夫婦の関係が生活感なさすぎと思いましたが、まぁそれが村上春樹なんだろうなと。原作も読みましたが、女性という存在は村上春樹から見たら永遠にファンタジーなのかもしれません。
ちなみに私がフォローしているマレーシア人の映画監督(リム・カーワイ)の解説によると、「間違いなくアメリカの今にマッチするが決して媚びてない」点でこの作品はすごいそうです。
マッチする点は
・アメリカ人が共感しやすい、「愛する人が亡くなった」「無関心の罪悪感」がコロナの時代にマッチ(コロナでアメリカでは大勢の人が亡くなっている)
・アメリカ人が好きなロードムービー
・アメリカインテリ層には村上春樹は日本人が思うよりずっと人気
であること。
また、パラサイトのあたりからアメリカ社会が「多様性」について重視するようになり、アカデミー賞を評価する会員に大量にアジア系の映画人が入ったことも、これ以上ない良いタイミングとのこと。
ちなみに、パラサイトとドライブマイカーの配給は、どちらも「ビターズ・エンド」という会社が配給しているそうです。独立系で興行的にあまりもうからないアート系映画を配給し続けている会社だとか。
快挙になると良いですね!
Eye catch photo By tina_kazusa, CC BY 3.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=53847229