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私たちは人工知能の奴隷

養老孟司談話①

2022/6/6

同じ

動物は「 同じ 」を理解できない「 = 」という概念が理解できない。

異なるものを「 同じ 」と捉えることができない。

3 + 4 = 7

サルが 3 に 4 を足すと 7 になる計算はできても、3 + 4 = 7 は理解できない「 = 」は理解できない

2X = 6
X = 3

「 X 」と「 3 」は別の記号であるから、同じではない。これを理解できるのは、人間だけだ。

等しい

確かに「 X 」と「 3 」は、同じではない。
しかし、計算上は「 等しい」。
「 = 」は「 同じ 」ではなく「 等しい 」。

私たち人間は、この「 等しい 」という感覚を身に付けたことで、進化していった。

「 等しい 」とは、別々の物を「 = 」でつなぐ概念である。別々の物体を例えば、オレンジ一個とりんご一個を「 等しい 」と考えることだ。このとき、オレンジ一個の価値と、りんご一個の価値が「 等しい 」と見なしている。等価という概念の誕生である。

等価という概念は、交換を促す。自分が持っている物を、等価の他の物と交換することができる。物を交換するための市場が生まれる。動物には「 等しい 」という概念がないので、動物界には市場が存在しない。

ヒトがそれぞれの物の価値を決めて、等価と判断して市場をつくった。市場は自己成長をしていった。ヒトが物の価値を決めていたはずなのに、市場が物の価値を決めるようになった。市場は、人間がコントロールできない存在にまで成長した。

ヒトは、自分がつくった株式市場に翻弄されている。

・ヒトは自分がつくったはずの世界に支配されることがある。
・創造主なのに、被造物に支配されるという逆転現象がある。

子どもに支配される親、会社に支配される創業者、そして、株式市場に支配される資本家である。

親は子どもを支配しているのではなく、子どもに支配されている。

親は、子どもの養育をしなければならない。自分の自由は制限され、子どもに縛られた生活を強いられる。子どもを中心とした生活を余儀なくされる。子どもが主役の生活は、子どもが支配者で、親は被支配者という構図になる。子どもの創造主である親が、被造物である子どもに支配されている。

会社は創業者が生み出したのに、その制約によって「 会社を存続させるために自分の人生のすべてを捧げる 」といったようなことが起きる。その姿は、客観的に見ると、会社に支配されているようだ。

株式市場は、資本主義という文化の源である。世界のほとんどの国が資本主義に従っていて、資本主義という価値観で、社会の人々は生活している。株式市場は資本主義という文化を生み出して、人々をその価値で支配している。

人工知能

  1. ヒトがコンピュータをつくった。

  2. ヒトが人工知能をつくった。

そして、今、私たちは、人工知能に支配されている。人工知能が価値を決めている。

ヒトが価値を決めていたのに、市場が価値を決めるようになり、今は、人工知能が価値を決めるようになっている。

人工知能のレコメンド機能が、オススメが価値を決めている。

私たちの意思決定は、自由意志によってではなく、人工知能によって定められる。

私たちが日常で触れているスマホのアプリのほとんどは、その中に、人工知能が埋め込まれている。

  • ニュースアプリは、自分の興味のあるニュースをオススメする。

  • Googleは、その検索順位自体が、そもそもオススメランキングである。

  • Googleで一度、検索した商品は、様々なサイトやアプリで、オススメしてくる。

  • Twitterは、オススメの広告と、オススメのツイートと、オススメのユーザーである。

  • アマゾンは、もう、ほとんどオススメのためのアプリである。

  • YouTubeのオススメされた動画を見る。

  • TikTokのオススメされた動画を見る。

オススメは、人工知能である。

人工知能が、インスタの評価や、食べログの評価を決めているし、私たちはその評価によって、店を決めて行くという行動を取る。

人工知能は、私たちの日常生活のほとんどに入り込んで、私たちの思考に影響を及ぼしているのは明らかだ。人工知能が価値を決めて、人工知能がいくつか選択肢を用意する。その選択肢の中から、選んでいるに過ぎないのに「 自分の自由意志である 」と思い込んでいる。

人工知能は、私たちの時間を奪っているし、私たちのお金を奪っているし、私たちの行動をコントロールしている。

私たちは、人工知能に支配されている。

人工知能は、私たちの仕事を奪うのではなく、人工知能は、私たちの脳をハックして制御しているのだ。私たちは、もう、人工知能の奴隷なのかもしれない。私たちは、もうスマホを手放せない。人工知能付きアプリなしに生活できない。人工知能に従うしかない。

人工知能の奴隷から抜け出すのは、容易ではない。スマホを手放すことが奴隷から解放されるとしても、現代人に、そんなことは不可能である。スマホを手放すよりも、人工知能の奴隷を選ぶだろう。もう、既に、社会構造がスマホを前提に成り立っているのだから、無理もない。

スマホを手放せなくてもいい、スマホを置いて、人に会ったり、自然と触れたりして、原始のヒトに、私たちの姿に戻ることだ。忙しなく鳴り響くスマホで疲れた脳を休めることだ。

この小さな画面の中に広がる世界から抜け出して、目の前の現実の世界へ、そして、この人工物に囲まれた社会から抜け出して、自然に帰ることで、私たちは、奴隷から抜け出し、自由を得ることができるはずだ。

それが一時的な自由だとしても、それを体験することに意味があるはずだ。

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湯浅淳一
あなたの琴線に触れる文字を綴りたい。