【「砂の器」と木次線】を読み終えて
私は未だこの松本清張の代表作を読んでいない。映画の方も賞をたくさんとったということぐらいしか知らなかった。そこでこの本の著者である村田英治さんに直接アドバイスをお願いした。もちろんNoteを通じてであるが。原作と映画はどちらを先にした方がいいかをである。すると、彼は原作は文庫本でも上下あわせると1000ページ近くあるし、込み入っているから、映画を先に見た方がいいだろうということだった。50年前の映画である。どうしたものかと思案した結果、レンタルショップに問い合わせることにした。<ゲオ>にあった。初回割引サービスとかで、なんと55円で、2週間も借りられた。日本はやっぱりいい国だ。先入観なしで見ようと思い、解説などは一切調べなかった。
まずストーリーをネタバレにならない程度に紹介する。といっても村田さんの文章をそのまま書くだけだが。
ストーリーはある殺人事件の犯人探しを軸に展開する。東京・蒲田で、初老の男性の他殺体が見つかった。捜査は難航するが、、事件直前に被害者が若い男と近くのバーにいたことがわかる。店の女性が耳にした被害者の訛り(ズーズー弁)と「カメダ」という言葉を手がかりに、刑事が謎を追っていくと、意外な人物が浮かび上がり、その動機にまつわる秘められた過去が明らかになる。
1回目見終わったとき、何とも言えない感情に襲われた。感動というような使い古された言葉では言い表せない心の深い部分に突き刺さるような激しい動揺である。涙があふれているが、なぜかははっきり説明ができない。
そこで村田さんの本に助けを求めた。この本ではクライマックスを2部に分けてシーンの展開や背景が丁寧に解説されている。そこで本の読後もう1回、映画を見た。すると1コマ1コマが実によく心に響いてくるではないか。私自身こんなに映像を丁寧に見たことはない。ああ、あそこが本にあったあれだなあと思うと愛おしくさえ思われた。レンタルショップに返却する前日にもう一回見た。わかっているのにやっぱり同じシーンで涙が止まらない。名画であること間違いない。ぜひ皆さんに見てもらいたい映画である。もう一つ俳優陣が当時のベストメンバーと言っていいほど充実している。それに主役の丹波哲郎をはじめ、緒形拳・渥美清・加藤剛・森田健作などが若々しい。それもそのはず50年前だから。「映画はもう見た」という人も村田さんのこの本を読んでからもう1回見てもらいたい。私の書いたことが納得してもらえると思う。この本では映画を離れて山陰地方の地理や歴史にも触れ、また日本の戦後の経済全体を地方の視点から、とらえられているので、実に勉強になった。本当はもう少し内容に触れたいが、ちょっとした私の不注意でネタバレになるかもしれないので、これくらいにしたい。
一般的な原作と映像の比較論もあるが、この文庫本を読み終えたあとで、この著書を含め、原作・映画・とこの本の3点の、関係をネタバレ覚悟で書きたい。
郷土愛にあふれた名著である。
タイトル 「砂の器」と木次線 著者 村田英治
ハーベスト出版
1800円
文庫本 「砂の器」 著者 松本清張
新潮文庫(新潮社) 上 850円 下 900円
なお、松本清張の人物像も、生い立ちから、書き起こし、かなり丁寧に書かれてていたので、彼の他の作品も読む気になった次第。よく考えて見ると松本清張1冊も読んでなかった。司馬遼太郎や観音寺潮五郎、平岩弓枝、宮城谷昌光、佐伯泰英などの時代小説に夢中になっていたせいだろうか?
まあ、とにかく感謝である。