(本)相手は変えられない ならば自分が変わればいい: マインドフルネスと心理療法ACTでひらく人間関係
人間の悩みは人間関係・お金・健康に集約されるなんて言葉を聞いたことがあります。自分は幸い安定した収入があるのとすこぶる健康体なので、後ろの2点で思い悩むことはありませんので、悩み、というか日常のストレスの種はほぼ人間関係。
・会社の上司との折り合いが悪い
・後輩がいうことを聞いてくれない
・家に帰れば妻が・・・子供が・・・・
なんていう人も少なくないかと。
本書は特に男女関係・夫婦関係における悩みをACTという心理学的に確立された方法論を応用して解決していきましょうということを提案している一冊。
世にはN=1の”私はこうやって成功しました、解決しました”といったビジネス本・ノウハウ本が溢れていますが、本書を表したラスハリスさんは心理療法士でもあり、本書も科学的な裏付けを踏まえて書いてあります(もちろん、臨床の経験に関するハリスさんの実体験についても触れられています)
ニュースをつけると「おしどり夫婦の芸能人」が現れ、手を繋いでデートをしていたりする姿もよく見かけます。で、互いに旦那は素晴らしい、妻はできた人だなんて美男美女のカップルが褒めあっている。
そういう姿を見た後に、自分の家庭を見てみる。
で、絶望感に浸る・・・笑
半分は冗談ですが、にたようなループを経験している人も少なくないかと。
・なんで妻(夫)はこんなに私をイラつかせるのか
・嫌がらせでやってるのではないか
・マジでムカつく。今度こそ別れる!
自分も他人からはいつも落ち着いているといったような評をいただくことが多いですが、胸の内でこんなセリフを吐いたのは一度や二度ではありません。
本書を見る限り、多少の濃淡はあれば大多数の人は同じような境遇で安心(?)したり。。
そういう嫌な思いをするたびに、
・昔付き合っていた彼女と一緒になっていたら、こんなことにはならなかったのではないか
とか
・どこかにもっと自分にふさわしい人がいるのでは
と、思ってしまいます。
で、本書では「理想の人がどこかにいる・いたはず」神話をぶち壊すところからスタートしています。いろんなテクニックはあれど、イライラした時に神話に戻ってくるたびに感情が増幅するのは無駄ですからね。。。笑
ちなみに、ですがそうやって精神的な逃避を図るのは人間の進化の過程から見てもある意味当然だと。不快な感情をすぐにとうざけるという観点からは、目の前の問題(人間)に真摯に向き合い、原因を探り、解決するには時間も労力もかかりますから、手っ取り早く「相手が悪、自分が悪くない」とすれば、それらをセーブできる、というわけですね。
本書では実践形式でいろいろなワークが用意されていて、手を動かしながら取り組むとより効果が出るかとは思いますが、肝を挙げるとすると以下の3点かと思います
1 紙に書き出す
2 思考をメタ化する(脱フュージョン)
3 衝動的に行動発言しないために、まずは呼吸に注意を向ける
1はそのままですね。
人間、マイナス思考の反芻がこれ以上ないくらい得意な生き物。ACTでは徹底的に「その思考・考え・物語が人間関係に役に立つか?」という観点でどうすべきかを取捨選択しており、マイナス思考の反芻は何もプラスを産まない最たる例。
そういう時は紙に書き、外に出すことが肝要です。
これは、悩みに限らず何か計画するときにも使える手法ですね。
2はちょっと初見の人には分かりづらいかもしれないですが、自分の思考を切り離してみましょう、ということです。
例えば、相手の言動にイライラしたとします。
すると、「ムカつく!」と思いますよね。
で、「あー腹たつ。なんでこいつはこんなダメなんだ・・・」と悪循環ループが始まります。そうではなく、「ムカつく!」と思ったときに、それにとらわれずに
「私は 「ムカつく!」 と感じている/思っている。」
と入れ子構造にして、まずは感じたことを切り離す、というものです。
マインドフルネスでいう、雑念を第三者的に眺める、というのと異口同音かと。
完全に身につくまでには少し経験が必要ですが、徐々に気持ちの振れが減り、ストレスも感じづらくなります。
3もその通りで、上のような切り離しを行う際にも一旦立ち止まる必要があります。でその時のブレーキに呼吸を使いましょう、という提案です。
極端に感情がふれるような出来事に出くわしたら、まずは数回、深呼吸をしつつそれに意識を集中してみましょう。それだけで、少し冷静になれます。
ACTについては学術的に療法が確立されつつあることもあり、類書もたくさん。
その中でも、本書は取り組みやすい、分かりやすい一冊かと思います。
人間関係に悩む方は紐解いてみることをお勧めします。