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「漂流教室」SF、ホラー、パニック、サバイバル~その実体は愛憎劇(Part1)

「漂流教室」の記事を書くのは今回で2度目。

まだまだ書き足りていない部分があります。

漂流教室は、楳図かずおの代表作の一つであり、1972年から1974年にかけて週刊少年サンデーに連載された漫画です。この作品は、地震によって荒廃した未来世界にタイムスリップしてしまった小学校の児童たちが、生き残りをかけてサバイバルを繰り広げるという衝撃的なストーリーを描いています。

漂流教室は、当時の社会問題であった公害や核戦争の危機感、そして母子の愛や友情といった普遍的なテーマを取り入れ、子供たちの成長と苦悩をリアルに描き出しました。この作品は、恐怖漫画の巨匠である楳図かずおの持ち味である独創的な発想と鮮烈な表現力によって、多くの読者に強烈な印象を与えました。

漂流教室は、その先駆的な内容と手法で、後の漫画や映像作品に多大な影響を与えたと言われています。漂流教室は、漫画の可能性を広げた傑作として、今なお高く評価されているのです。

新世紀エヴァンゲリオンのキャラクターデザインを手がけ、漫画版のほうも執筆された貞本義行さんですが、少年向けで好きな作品は楳図かずおの『漂流教室斎藤惇夫原作の『ガンバの冒険』・松本零士の『銀河鉄道999』であるといいます。いずれの作品も少年たちの成長譚であり、過酷な状況下で苦難と試練を乗り越えて行く物語。高松翔と小学校の仲間、ガンバと冒険仲間たち、車掌とメーテルと共に機械人間になる夢を見てあてのない旅をする鉄郎。これらを踏まえて行くと、碇シンジという14歳の少年の苦悩と追い詰められた感が納得というものです。また、彼らのような人間として未熟な男子は、美貌の女性に護られていることにも注目です。

✅高松翔を取り巻く4人の女性 けっこうドロドロ



高松恵美子 
翔の母親。一人息子の身を案じ命がけで翔を救う息子の愛人的存在。
漂流前は翔を「おまえ」と呼び、翔は「ババア」と罵りあったりもしていた。翔の父で恵美子の夫は名前すらなく存在感が全く希薄であり、妻の恵美子の頭が狂っていると心配している。

川田咲子
翔のクラスメイト。彼のガールフレンドで最大の理解者。
ポニーテールのしっかり者美少女。
未来へ来た直後に下級生の弟が死亡している。
川田さん、咲子さん、咲ちゃんなどと呼ばれているが、翔と咲子を好きな大友の二人だけが「咲っぺ」と愛称で呼ぶ。このへん芸コマでリアリティがすごい。年下で美少女の西あゆみに嫉妬して「過去に戻れば夫婦でなくなる」と自殺を試みる。ユウちゃんの母親役で翔の妻役。正妻的存在。

以下、小学館サンデーコミックス初版より。

本記事の掲載、画像借用については、小学館サンデー編集部に話を入れています。また、筆者は千代田区一ツ橋の小学館は以前の取引先であり、この漫画については散々担当者と話をしています。熱烈なファンであることと、著作権に関しては法人による営利・商用目的でないことを承諾いただきました。この漫画の魅力を最大限にお伝えするために借用しました。

ただし、あくまで著作権は小学館様と作者楳図かずおさんにあります。
それは遵守していくことは当然のことです。自己責任での掲載です。

高松翔と大友の咲子を巡る名シーン

ついにその本性を現した大友。彼の一連の翔に対する嫌がらせと反抗心は、
全て咲子への屈折した愛情である。
恋は盲目。エリートで学級委員長の大友は自分さえ良ければいい。
咲子の意思に関係なく自分のものと勘違い。とんだエゴ野郎である。
これまで穏便に耐え抜いていた翔もこの時ばかりは大友を許せない。
咲子を巡る愛と憎悪の恋愛劇。後半はこの両者の戦いというテーマが主軸となっている。


マジな殺し合いに発展。天才の翔とエリート大友の一騎打ちは佳境へ突入。
狂気の大友から翔を救うべく咲子の一撃。
そりゃあ、翔ちゃんのほうが優先度高いわな。
ここでいったん戦いは終わり。形勢不利とみて、我に帰った大友はこの場を去っていく。
咲子のノートの走り書き。遺書を発見した翔。
咲子の翔への告白がこんな形でみんなにバレる。小学生の命を懸けたラブストーリー。
これ読んだ当時小学生の筆者は泣きが入りました・・・・
しかし、咲子は達筆ですね。字がうますぎる。
日ペンの美子ちゃんの通信教育でもやっていたのでしょうか。
大友、咲子のために全力疾走。この人は勉強も出来るし足も速いリレーの選手。だがモテない。
大友、いいとこあるじゃない。冷静に咲子への愛を告白。
「おれのことあんまり好きじゃないかも」じゃなくて全然咲子はお前に興味ねーから・・・
ダイナマイトを仕掛けて学校を吹っ飛ばした張本人の大友。
そのすべての理由は「屈折した咲子への愛と翔への嫉妬」であった。
巻き込まれた学校の人たちはとんだ迷惑だな。


西あゆみ 
翔より学年下の5年生。
テレパシーを使い翔と母親の会話を交信する霊感美少女。
障害者ゆえに翔は常に彼女の身を案じている。
愛人的存在。小学生でありながら髪の毛の色が黒でなく、カールした金髪のお人形さんのような印象があった。

女番長(高木摩耶・小説版のみ名前が語られている)
6年生。自分のことを「お姫様」と周囲に呼ばせている。トメ子とハツ子二人の子分を引き連れ、体格でも格闘でも男子に負けない。小学生なのに化粧をして吉祥寺や新宿で遊んでいたという。総理大臣を決める選挙では一票差で翔に敗れ学校を出て行く。のちに富士山のレジャーランドから帰還。老婆のような姿となって死亡。「女の方が男より優れているんだ!」という主張が1970年代当時では斬新で、男尊女卑の日本においては異例の名セリフだった。新書の「漂流教室」が文庫化された際に、作者の楳図かずお氏は「女番長は90年代の松田聖子の顔立ちや振る舞い、ケバケバしさにそっくりだとよく指摘されて驚いた」との言。近い将来にそのような男を見下して勝つという女性が出てくるだろうという予感がしていたと語っている。昭和40年代といえば、男女雇用機会均等法以前の時代であり、松田聖子は当時まだ小学生であった。

ガンバの女子キャラ
シオジ、イエナ、オリュウ。

星野鉄郎 
メーテル 
母性を持った憧れの恋人のような存在。

碇シンジ 
葛城ミサト(有能な上司・だらしない姉的存在)、
綾波レイ(母親のクローン)
惣流・アスカ・ラングレー(ガールフレンドでかつ性的対象)。



✅初見 1972年8月5日の夜


始めてこのマンガを読んだのは1972年8月5日のことでした。
なぜ日付まで明確に覚えているかというと、この日、両親と父の会社の同僚家族と千葉県勝浦の海に車2台で海水浴に行ったのですが、その夜に父の同僚の息子と一緒に宿泊施設のテレビで「人造人間キカイダー」を観たことをしっかり覚えていたからなのです。
キカイダーにはダーク破壊部隊のブルーバッファローというロボットが登場しました。ブルーバッファローはキカイダーのデンジ・エンドで葬られたことを記憶しています。

何年か前にその放映日を調べてみると、1972年8月5日。
「人造人間キカイダー」第4話。
サブタイトルは「ブルーバッファローが罠をはる」でした。
旅館に置いてあった小学館の「少年サンデー」。
何気にそれを読んでみると、楳図かずおのマンガが掲載されていたので、なんとなく読んでみることにしました。

楳図かずお先生のことは「おろち」や「へび少女」「ウトルラマン」「イアラ」「猫目小僧」「アゲイン」などの作品で既に知っていました。

それで、ページをめくってみると、とんでもない漫画があるではないですか。そのシーンは今でも覚えています。

✅予言その1.包丁を振り回して子供たちを次々と襲う「無敵の人」関谷久作と宅間守




その内容は、不気味な顔をしたおじさんが包丁を振り回して次々と小学生を惨殺して周り、子供たちが逃げ回るシーン。血だらけの子供たちは悲鳴を上げて泣き叫ぶ。これにはもうビックリ。
「こんな漫画を少年誌に載せるなんて大丈夫なの?」と思いました。

わたしは小学生の低学年。主役の高松翔を含めた登場している主な子供たちは6年生でした。

「このお兄ちゃんたち、この先どうなるんだろう?」とわたしはクラスメイトたちと一緒になって不安と期待が入り乱れてしまいます。
この惨劇。実際に起きてしまいましたよね。

それがこれです。

附属池田小事件(ふぞくいけだしょうじけん)は、2001年(平成13年)6月8日に、大阪府池田市の大阪教育大学附属池田小学校で発生した無差別殺傷事件(建造物侵入・殺人・殺人未遂・銃刀法違反事件)。同校に侵入した宅間守が、1年生・2年生の児童8人を出刃包丁で殺害、15人(児童13人および教職員2人)を負傷させた。日本の犯罪史上稀に見る無差別大量殺人事件として、社会に衝撃を与えた。

Wikipediaより

漂流教室のこの犯行を起こしたのは関谷久作というパン屋で給食を小学校に配達する男。
関谷 久作(せきや きゅうさく)
「長吉製パン」というパン屋、及び学校給食全般の納入をしている。年齢は38歳。学校給食を卸しに来たところ漂流に巻き込まれる。漂流以前は優しい人物を装っていたが、漂流後は残忍醜悪な本性を現し、学校を支配しようと目論む。「学校ごと未来にタイムスリップした」という状況を信じず、未来世界は「荒廃した現代」だと思っており、アメリカ軍の救助を待っている。後に怪虫に襲われた時、余りのショックで一時幼児退行を起こすが、あるきっかけで再び意識を取り戻し、何度も子供たちの足を引っ張ることになる。最後の“大人”であった若原がいなくなってからは事実上作中における唯一の大人になる。暴行の多くは己の欲望を満たすためであり、狂騒的に殺人に耽る子供達とは対照的でもある。最後まで高松たちの足を引っ張る作品中最大の悪役とでもいうべき存在だったが、ユウちゃんが現在に戻る帰還の儀式を妨害しようとした際、馬内によって顔面をつかまれ両目をつぶされ、地面に後頭部を何度も打ちつけられ、さらに首を絞められて妨害を止められる。結局現代に帰還することは叶わず、高松たちと共にこの世界に取り残されてしまった。生死は不明。
実在の漫画家、関谷ひさし(本名、関谷久)から取ったと推測される。

Wikipediaより

池田小の事件を起こした犯人の宅間守は関谷と同じく30代後半の同年齢。
宅間は育ちが劣悪で高校中退の中卒。子供時代から数々の犯罪歴のある世間一般でいうところの社会の落伍者で底辺の人。この宅間の犯行理由は「エリートでインテリの子をたくさん殺せば、確実に死刑になると思った」でした。

漫画の関谷も同様で「いつも、給食のおっさん、給食のおっさんとバカにしくさって!!」と言うセリフがあり、先生や子供たちに激しい憎悪を抱いていました。おそらく関谷も中卒でこの仕事をしていたのか、大和小学校の人間たちに激しい嫉妬と復讐心を抱いていたのでしょう。

✅予言その2.大和小学校は「東京都港区の区立小学校」という設定

作中には東京にある実在するいろいろな場所や建物が出てきます。東京駅界隈、八重洲地下街、地下鉄麹町駅、新宿のホテルケイヨー(京王プラザホテルがモデル)など。しかし、作中では一切、大和小学校は東京のどことは具体的には明記されていない。わたしたちは子供のころから長らく「大和小学校は東京のどこにあるのか?」というのが長らく謎であり疑問でした。

しかし、近年とうとうその疑問は氷解します。それがこれ。
漂流教室は1985年に小説化されていて、作者は風見潤さんです。

楳図はノベライズについて、「文章にするのではなく、小説にしてほしい」という注文をつけ、翻訳もしていた風見に直接白羽の矢を立てたという。風見はノベライズに当たって「大和小学校が位置する港区」を歩き回ったり~(後略)

Wikipediaより

今でこそもてはやされる東京都港区。連載開始時の昭和40年代はそこまで注目はされておらず、バブル時代に赤坂、麻布十番、六本木のキャバクラやディスコ、青山、表参道などが脚光を浴びることになり、港区を舞台とする「美少女戦士セーラームーン」。そして、森ビル開発が六本木にヒルズを建設してから、港区は日本中にその存在を知らしめたと言うことです。

昔は東京タワーのある芝公園の周りは畑だらけの未開の土地で、このことを知る人は余りいない。現在は日本一富裕層が多い平均世帯年収1200万ほどのセレブな高級住宅街。この年収数値は、23区、例えば足立区や葛飾区の3倍の年収であり、しかも港区民の50%は専業主婦や無職ですから、世帯主の平均年収は2000万から億単位であるとも推測されています。

楽天の三木谷社長、ライブドア時代の堀江貴文さん、ピーチ・ジョン野口美佳社長などがヒルズに住み、そんな彼らをヒルズ族と呼んで、港区は富の象徴エリアとなった。年収が億を超えるようなベンチャー企業社長らがゴロゴロ住むイメージが定着しました。これは誰もが知っていることでしょうけど。

話をもとに戻すと、漂流教室の舞台だった港区の小学校が未来へ行った。
いわゆる富裕層の子供たちが恐るべき災難に見舞われた。その恵まれた環境下の子供たちが、まず、底辺人間の関谷久作という人物に襲撃された。これがこの物語の出発点ということを頭に入れておきたいところです。

港区ブームの先駆者。それがこの漫画だったのは偶然だとしても、楳図先生の予言はすごいとしか言えません。実際に麻布十番に住む武内直子先生と違い、楳図先生は港区民だったことがないからなおさらです。

この作品は映画やドラマ以外でも、ラジオドラマ、舞台でも発表されていますが、今回は割愛させて頂きます。

✅作品世界の時系列は

現代(学校が消失した日)は、1985年6月28日。

時間螺旋理論に気付いた主人公・高松翔のクラスメイトの山田信一によって、未来はその137年後の2122年と特定されている。


3000字に近づいてきました。この続きはまた後程ということで。

最後まで、お読み下さり、ありがとうございました。よかったらスキ、フォローよろしくお願いします😉

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