漂流教室 No.43 「『源氏物語』から『ぶんしゅう』」
白居易は日本で最も親しまれている漢詩人の一人です。
彼の詩集に『白氏文集』というのがございます。
私の若いころは『はくしもんじゅう』と読むように、と習ったんですが、
どうも実際には平安時代から『はくしぶんしゅう』と読んでいたらしい。
ということで、授業では『はくしぶんしゅう』と言ってきたんですが、
定年少し前に学校の廊下を歩いていると先輩教員の授業が聞こえてきました。
定年少し前の私から見て先輩ですから、とうに定年は過ぎていらっしゃる。
「再任用」という制度で働かれている先輩でした。
再任用以外にも「非常勤講師」として授業をされている先輩もいらしゃった。
みなさんよく働きますなあ。
私なんか絶対嫌ですけどね。
これ以上人の命令を聞くのなんか。
ましてや嘘つきや、ばかや狂人のいうことなんか聞けるもんか!
てなことは早く忘れましょう。
忘れたいもんだ。
閑話休題。
話を元に戻します。
で、件の先輩が授業の中でこうおっしゃっていた。
「これ『はくしもんじゅう』って読むんですよ。
現代人はつい『ぶんしゅう』って読んでしまうから間違えないように」
いや、先輩。
『ぶんしゅう』って読むらしいですよ。
とは、言えなかった。
よくよく考えたら、『ぶんしゅう』でも『もんじゅう』でもたいした違いはない。
ホントにホントのもともとは中国語読みのはずですしね。
(白居易自身はどう読んでいたんだろう?)
というふうに詩集の読み方ひとつとっても10分ぐらいは雑談ができちゃうのが白居易です。
雑談屋(?)にとってはありがたい存在ですね。
白居易の代表作中の代表作はやっぱり『長恨歌』でしょう。
玄宗皇帝と楊貴妃のお話です。
これがまあ長い。
「長い恨みの歌」っていうくらいだから、そりゃ長い。
いわゆる七言古詩なんですが、なんと120句もある。
7文字×120句。
この詩で有名なのフレーズが「比翼の鳥」「連理の枝」です。
片方の翼しか持たないから、雌雄2匹が一対にならないと飛べない鳥が「比翼の鳥」。
不便ですなあ。
もともとは違う木が空中でくっついちゃうのが「連理の枝」。
金沢の兼六園には「夫婦松」なんていうのがありました。
二本の松の枝がくっついて一体化した松です。
「天にあっては願わくは比翼の鳥となり、地にあっては願わくは連理の枝とならん」
玄宗皇帝と楊貴妃がそう誓い合ったのが七月七日。
昔の人にしてはエラくロマンチックです。
『源氏物語』はこういうロマンチックな漢詩なんかをモチーフにしています。
もちろん『長恨歌』だけではなく、いろんな日本の古典やら、漢詩漢文やら、当時の貴族社会の出来事や噂話、紫式部の創造や妄想が盛り込まれています。(いると思います)
さて、今年はこの記事で最後。
お読みいただいたみなさん、ありがとうございました。
来年もまたお読みください。
できれば私の塾に通ってくれる生徒さんをご紹介ください。
それでは、よいお年を!
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