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地域とつながれたのは、子どものおかげ【子育てポジティブキャンペーン】

2020年の夏の話。

私たち夫婦は誰も知り合いのいない街に引越しした。双方の実家から等間隔だったことが最大の決め手だった。

世界はコロナ一色だったし、別に積極的に知り合いを作ることもないと思っていた。同じマンションの住人にすれ違う時に会釈するか、挨拶を交わす程度。



2020年の末に妊娠して、どんどんお腹が大きくなって。誰が見ても妊婦だとわかるようになる頃には、同じマンションの住民や近所のおじいちゃんおばあちゃん、スーパーの店員さんが話しかけてくるようになった。

「予定日は何月?」
「性別はわかっているの?」
「体に気を付けてね。」

マスク越しの唇はきっと弧を描いているだろなと思った。かけられる言葉はいつもとてもやわらかくて、優しくて、あったかくて。生まれてくる命へ希望がむくむくとわいてきた。



娘が無事に生まれて、1カ月健診をパスして、お散歩に行くようになった。3ヶ月頃になると首が安定して、1時間くらいお外を歩き回るようになった。すると、妊娠していた頃に話しかけてきた近所のおじいちゃんやおばあちゃんが私のことを覚えていた。

「無事に産まれたんだね。よかったね。」

名前も知らない人だけど、その瞬間、近所のおばあちゃんが顔見知りの人になった。



もっと月齢を重ねて、お座りができるようになった頃、図書館や公園に行くようになった。顔見知りのお母さんとその子どもができた。

いつものスーパーに行く。店員さんが手を振ってくれる。

エレベーターに乗る。先に乗りなさいと譲ってくれる。

市役所に行く。そのためにバスに乗る。後ろに座った人が娘に笑いかけ、あやしてくれる。市役所で地域の子育てサポートにお世話になる。保育所の一時保育事業でお世話になる。

さまざまなことを通して、地域と関わること・人と関わることが増えた。知り合いができた。顔見知りができた。



そして、こんなにもこの街が優しかったのだと気づいた。




子どもたちが私たち夫婦に今までと違った景色を見せてくれる。
今まで特に知り合いもいなく、孤独だった夫婦はもういない。新しい家族をむかえて、成長していく姿に沿うように、地域にゆっくりと根差していく。




世界は優しいな。

私が子育てができるのは、たくさんの人の優しさがあるからだ。たくさん受け取ったぶん、子どもたちが大きくなって余裕ができたら社会に優しさを返していきたい。




明日もいい1日になりますように。



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