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ロンドン橋は落ちなかったけれど私は走って最高の朝を迎えた。

最高の朝を迎える方法を知っているだろうか?それは、ロンドンの中心街で夜明け前に目を覚まし、静かな朝のテムズ川沿いを走ることだ。いや、ロンドンじゃなくてもいい。テムズ川じゃなくてもかまわない。パリのセーヌ川でも、ニューヨークのハドソン川でも同じことだ。もしそれも難しければ、東京の隅田川や京都の鴨川でもいい。重要なのは、街の中心に流れる川沿いを走ること。それは、僕にとって特別な意味を持つ。

朝には、特有の静けさがある。そして、その静けさは時間とともに微妙に変化していく。朝5時の静けさと6時の静けさ、そして7時の静けさ。それぞれに異なる空気が流れていて、その違いに気づくと、ただ走るだけでなく、朝そのものを味わうことができる。もしかしたら、それが朝を早く起きて走る理由の一つかもしれない。

05:30 AM
06:00 AM

今日、僕は朝5時に目を覚ました。理由は特にない。体が少し疲れていたから早く寝たのか、それとも時差ボケが残っていたのか。どちらにせよ、4時過ぎに目が覚めてしまった。7時ごろから朝食をとって、美術館巡りを始める予定だったけれど、その時間まで二度寝するにはちょっと中途半端な気がした。そこで、僕は走ることにした。

28人が一部屋を共有するという、なんとも言えないホステル。牢獄みたいで、でも不思議と寂しくはない。そんな部屋を朝5時に抜け出し、僕は冷たい空気に包まれたロンドンの街へ出た。ビッグベンが真正面に見える橋を中心に、2~3個離れた橋まで向かい、再び戻る。そしてビッグベンの少し先にあるバッキンガム宮殿の公園を一周する。結局、僕が走ったのは約8kmだった。コースというより、気ままに走ってみたらそんなルートになった、という方が正しいかもしれない。

9月のロンドンはかなり寒い。朝5時の気温は8℃。ロンドンには長く滞在せず、すぐにシチリア島に行くつもりだったので、持っている服は長袖のシャツが一枚にTシャツが数枚だけだった。しかも、ホステルのシャワーは冷たい。その冷水を浴びると、日本人は日本人をやめたくなるかもしれない。いや、真剣にそんな気がした。お湯がどれほどありがたいかを、心から実感した瞬間だった。

でも、いざ走り始めてみると、案外悪くない。寒さも忘れるくらいに汗が流れてくる。朝5時から1時間ほど走ったころには、体も温まってきた。ただ、シャワーを浴びようとすると、またあの冷たさが待っていた。それはパスタを茹でるどころか、うどんも茹で上がらないほどの短時間のシャワーだったが、なんとか体を洗い流した。

ロンドンの街には、多様な人々が交じり合っている。それがロンドンの魅力のひとつだ。僕はたった数日しか滞在していないよそ者だが、街を走っていると、なんだかその一部になれたような気がして、少し嬉しかった。Tシャツ一枚の有色人種のアジア人、パスポートは日本人の僕が走っても、誰も気にしない。それがロンドンの良さでもあるのだろう。

ランニング中のプレイリストは、もちろんUKロックだ。Oasis、Beatles、Blur、The 1975。Oasisの再結成が話題になっているこのタイミングでロンドンにいられたことは、ちょっとしたラッキーだ。Beatlesの「Here Comes the Sun」を聴きながら、テムズ川沿いを走る。映画のワンシーンにいるような感覚だった。たまには、そんなふうに自分をイメージの中に溶け込ませてみるのも悪くない。

さて、今日はどんな一日が待っているのだろう。まるで昔の映画のエンディングロールのように、何かが始まる予感がする。最高の朝を迎えたわけだから、きっと最高の夜も迎えられるに違いない。

いかにも欧米らしい朝食。

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ジョン | Jong
この先も、最終着地点はラブとピースを目指し頑張ります。