ジョン(Jong)

Sentimental Boy | コーヒーの仕事 | 執筆と編集 | コンテンポラリーアート ・写真論の研究 | Based on Kyoto but Nowhere Man | jongminworks@gmail.com

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マガジン

  • 読書健康手帳

    リアリティのある体験を交えた読書記録を、有料公開していますが、内容は無料でお読みいただけます。最後に思い出の写真や個人的なエピソードも記載しています。

  • 写真論家の手帳

    白黒のフィルム写真を撮っています。記憶は本来、曖昧で不鮮明なものだから、それを記録するには白黒を基本とした表現で充分だろうと考えます。かえって鮮明に見せられても、覚えなきゃいけないことが多くて困っちゃいます。

  • 他者の思考をピン止めした手帳

    仕事関連のものが多めです。

  • コーヒー香る手帳

    2018年11月にオープンした「ものがたり喫茶」を閉じてから、2021年訪れた学生としての三度目の夏。私はコーヒーを仕事にしたいと決めました。そしてその後、とあるコーヒーショップで焙煎土をしていました。

  • 同時代的アート手帳

    美術館・展覧会の感想まとめ

最近の記事

  • 固定された記事

一枚の白黒フィルム写真を通して心が休まる体験を

 カメラってとても良い趣味だと思う。 色んなものごととの相性が良いし、カメラって比較的に荷物にならない。続けやすい趣味だと思う。極め続ければ、個展を開催したり、フリーのカメラマンとして仕事にすることもできる。もちろん、儲かるような仕事ではないけど、楽しいから良いじゃないかなと。 自分もそんな感覚でカメラを手にして3年くらい経て、やっと最近、自分の中で問うようになった質問。 ”私にとって、カメラで「写真」をやるということは?” どんなカメラで撮ったどんな写真も写真であると

    • 深夜特急に乗って、生きててよかったと思えた夜が確かにあった | 椋本湧也「26歳計画」 | 読書健康手帳004

      最近、『読書健康手帳』という名前で、読書の記録をまとめています。今回は、久々に自分の原体験として残る本、『26歳計画』との出会いを紹介したいと思います。ただ、その前に、このマガジンの企画について少しだけ説明させてください。 実は、この『読書健康手帳』がどんなものなのか、これまで一度も説明したことがありませんでした。 道半ばの人間が綴る、リアリティある読書体験の記録―『読書健康手帳』 筆者は2000年生まれ(note執筆時点で24歳)。大学卒業後に2年ほど会社員をしていまし

      • 演出された、そのキスって本当にロマンチック? | ドアノーの愛したパリ「何必館」

        かなり今さらではあるが、なぜかロベール・ドアノーの写真展に行ってきた。最近、モダニズム期の写真を見ることは、そういう感覚と距離感である。 「パリ庁舎前のキス」を見ると、確かにロマンチックな雰囲気だなぁ、と改めて感じる一方で、「この内容でこのチケット代?」と思ってしまう自分もいた。ロベール・ドアノーの写真集なら、古本屋を探せば2000~3000円程度で見つかる気もするし、額に飾られた写真をわざわざ展示で見ることの意味や価値ってどこにあるのか、悲しいけどそんなことを考えてしまっ

        • 恋しい言葉に酔う夜、手紙を書いたことをふと思い出した

          今日も行きつけのバーでビールを飲む。とはいえ、正直「バー」と呼ぶには少し違和感がある。「バー」という言葉には、ずいぶん期待が積もっているのだ。 初めて通った「ミルクホール」 学生時代、タイミングが良かったのか、少し年上の「いい大人」に恵まれた。だからか、まだ20歳にもならない頃、少し背伸びしてウィスキーバーに通い詰めた。もちろん学生だから、いくつもバイトを掛け持ちして稼いだお金を、カタカナのウィスキーに注ぎ込んでいた。大人の仲間入りをした気分で、一杯一杯に酔いしれていたの

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        • 読書健康手帳
          4本
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          13本
        • 他者の思考をピン止めした手帳
          31本
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          27本
        • 同時代的アート手帳
          9本

        記事

          足して94歳の男たちの空想対談

          Escape. 自分から逃れ、自分じゃないものを探し求め逃げる旅に出た男がいた。逃げ続けることに理屈などない。その逃避行は、いずれ世界の果てを目指して彷徨うことになる。 やがて、足元に大地が途絶え、水平線が広がる海にたどり着く。男は、そこで立ち止まらず、見知らぬ船に乗り込み、荒れた波間を進むことを選ぶ。灯台の光もなく、月明かりに頼ることもままならない暗闇の中、ただ漕ぎ続ける。航海の先で、いつか遠くへの旅が自分の足元へと戻ってきていることに気づく。面白いことに、逃げ続けた矢

          足して94歳の男たちの空想対談

          なぜ放浪癖を抱き、離れた土地へ惹かれるのか | テジュ・コール「オープン・シティ」| 読書健康手帳003

          職場の帰り道、皆さんはまっすぐ家に帰れていますか? 私には、それができない。どれだけ最短ルートがあっても、つい寄り道をしてしまうのである。立ち寄る先は、ジャンク品が並ぶカメラ屋や、知り合いのバリスタがいるコーヒーショップ、あるいは川沿いであることが多い。拠点が京都にあるため、鴨川デルタでぼんやりと過ごすこともよくある。すると時々、妙なものを収集してしまうのである。使い道のないジャンクの二眼レフを購入したり、すでに何杯も飲んでいるにもかかわらず、空腹感に負けてさらにカフェイン

          ¥100〜
          割引あり

          なぜ放浪癖を抱き、離れた土地へ惹かれるのか | テジュ・コール「オープン・シティ」| 読書健康手帳003

          ¥100〜

          眠れぬ夜に寄せて思いにふける | アントニオ・タブッキ「インド夜想曲」 | 読書健康手帳002

          今日もシアトル発「星の珈琲」のコーヒーはやっぱり苦い。一昔前に比べると少し焙煎度が浅くなった気がするけれど、それでも変わらず苦味が立っている。クリスマスが近いせいか、坂本龍一さんの「戦場のメリークリスマス」が流れている。わかりやすい選曲だよね。クリスマスと言われなくても、自然とその気分にしてくれるこの距離感が心地よい。作品に対しても同じような距離感が好きなんだ。でも、「星の珈琲」には作業スペースとしてかなりお世話になっているから、あまり辛口なことは言えない。ありがたい場所だな

          ¥100〜
          割引あり

          眠れぬ夜に寄せて思いにふける | アントニオ・タブッキ「インド夜想曲」 | 読書健康手帳002

          ¥100〜

          非暴力は、必ずしも暴力の対立者ではない | ジュディス・バトラー「非暴力の力」 | 読書健康手帳001

          2024年11月。 世界は平和なように見えて、全く平和ではない。スーザン・コリンズの小説を映画化した「ハンガーゲーム」を見たことがある。物語の筋としては、近未来、パネムという名の独裁国家に変貌したアメリカでは、キャピトルが政治の中心となり、その市民たちは貴族のような特権を享受している。民衆の反乱を防ぐため、キャピトルは周囲にある12の地区から男女1名ずつを選び出し、計24人の若者に殺し合いを強制する「ハンガー・ゲーム」を開催する。 ウクライナ戦争の拡大を防ぐため、NATOは

          ¥100〜
          割引あり

          非暴力は、必ずしも暴力の対立者ではない | ジュディス・バトラー「非暴力の力」 | 読書健康手帳001

          ¥100〜

          荒地という名のユートピア、大都会という名のディストピア

          最近、ソウルという街で12年ぶりに友達と再会した。彼は木浦(モッポ)という錆びれ果てつつある小さな港町に住んでいた頃の友達だ。 彼の家はカトリック教会を営んでいて、彼自身も聖職者の道を歩むために、今は大学で神学を学んでいる。しかし、彼は「神は死んだ」とも考える立場の人間であり、宗教批判や虚無主義的な立場も肯定できる、私にとっては非常に啓蒙された存在だと思う友人である。それに加えて、現代という合理的で複雑化した時代において、宗教がどのような役割を果たせるのか、実践的な立場から

          荒地という名のユートピア、大都会という名のディストピア

          バウハウス出身女性写真家が記録したデザイン運動の形成過程 | Kunsthalle praha「Lucia Moholy : Exposures」

          プラハ市内の中心部にある美術館「Kunsthalle praha」に訪問。ゼンガー変電所の跡地に2022年オープンした新しい現代美術館。特に何の事前調べもなく、訪問したのだが大学院の講義で取り上げられたバウハウスに関連した内容で良い学習になった。写真に関連している内容だったり、アーカイブされた資料の量も充実しており、見応えのある内容だったので、記録する。 ルーシー・モホリの初の大規模回顧展『Exposures』 ざっとした彼女のキャリアとして、ルチア・モホーリは、ドイツ系ユ

          バウハウス出身女性写真家が記録したデザイン運動の形成過程 | Kunsthalle praha「Lucia Moholy : Exposures」

          ビールグラスに海風あたり、ひとときの独り言が流れる

          一人で飲む時間一人で飲む時間って、なんだか嫌いじゃない。独身だから、毎日基本的には一人で飲んでいるはずなのに、毎回繰り返されている夜の思索には、どこか特別な輝きがあって、流れる時間とともに少しずつ色褪せていく気がするんだ。そこには、その夜だけの感情、飲み物、音楽があって、さまざまなものが織り交ぜられる中で、その夜だけの小さなハプニングが起こる。何事も起こらななかったとしても、独り酔い事を喋りながら帰る道だって嫌いじゃない。 今晩は初めてのビールに出会う。ベルギーのビール、G

          ビールグラスに海風あたり、ひとときの独り言が流れる

          イタリアは美しすぎるから感動がつい声に出てしまうんだ。

          イタリア人は、よく感動する。感嘆詞であるBellissimo(とても美しい)、buonissimo(とても良い)、Bravo(素晴らしい)など、 彼らが手を上げて使うそんな言葉がいくつも浮かぶ。日常に溢れる感動を、その都度きちんと受け止め、言葉にしているように感じるんだ。彼らは何かに対して心を動かされることが多いんだろう。 街の中心街に必ずある聖堂をめぐると、一つキリスト教も関係しているんじゃないかと僕は思う。キリスト教は、絶対的な神、イエス・キリストに誠実に祈り続ける宗教

          イタリアは美しすぎるから感動がつい声に出てしまうんだ。

          ロンドン橋は落ちなかったけれど私は走って最高の朝を迎えた。

          最高の朝を迎える方法を知っているだろうか?それは、ロンドンの中心街で夜明け前に目を覚まし、静かな朝のテムズ川沿いを走ることだ。いや、ロンドンじゃなくてもいい。テムズ川じゃなくてもかまわない。パリのセーヌ川でも、ニューヨークのハドソン川でも同じことだ。もしそれも難しければ、東京の隅田川や京都の鴨川でもいい。重要なのは、街の中心に流れる川沿いを走ること。それは、僕にとって特別な意味を持つ。 朝には、特有の静けさがある。そして、その静けさは時間とともに微妙に変化していく。朝5時の

          ロンドン橋は落ちなかったけれど私は走って最高の朝を迎えた。

          Translate·Transit·Transな世界を地図の中心においたら?

          上海のトランジットゲートの前でただいま、朝の5時。10日ほど、ギリギリの若さで強行突破した、韓国・現代アートをめぐる旅を終えて、上海経由でこれからロンドンに向かう。空港の床は冷たくて、心地よい。家のベッドよりも硬い。いや、ベッドと比べてどうするんだ。大理石よりは柔らかいのかもしれない。とはいえ、硬度を測定できるほど、私の背中は精巧ではない。というか、猫背だし、むしろ空港の床を「重要生息地」として生きるような「ジベタリアン」として、この先も生き続けた方が、絶滅危惧種として保護さ

          Translate·Transit·Transな世界を地図の中心においたら?

          覚えているかい? とある日の9月の朝を

          モーニングコーヒーなんだろう、このどうしようもない非日常的な風景の中にいる心地よさは。自分でもその理由を明確に説明するのは難しい。けれど、確かに感じていることだ。 京都の街を歩くときとは違う、どこか自由な気持ちがここにはある。京都では、街の人々を眺めながら、ほんの少しだけ、いや、もしかしたらもっと深く、いつも何かに怯えている自分がいることに気づく。日本語という美しくも洗練された言語が、頭の中に張り巡らされた蜘蛛の巣のように、思考を絡め取ってしまう。それとも、周囲との関係性

          覚えているかい? とある日の9月の朝を

          分岐する世界の果てで流れる私たちの時間 | ソウル市立美術館「SeMA」

          フリーズソウル2024やKiaf SEOULを鑑賞しに韓国へ。初日、たまたま、ホテルの近くにソウル市立美術館(Seoul Museum of Art)があった。美術館は夜8時まで開いていたため、ホテルに着いてからもギリギリ訪れる時間があり、特に計画も立てずに行ってみることにした。欲望に負けてチキンとビールを食べ、胃もたれするよりは、ずっと良いだろうと思ったのである。 これは現代アートへ誘う仕掛けなのかまず、観覧料が無料であることに驚いた。いくつかの企画展が開催されていて、会

          分岐する世界の果てで流れる私たちの時間 | ソウル市立美術館「SeMA」