自分の適職が見えてくる「制御焦点」のお話
こんにちは。Jobgram公式キャラクターの「おみそ」です。
「転職してみたら、なかなか成果が出せない」「自分の適職がいまいちわからない」そんなお悩みはありませんか?
今回は、どうすれば自分の能力を発揮できるのか、どうすれば自分の適職がわかるのか、そんなことを理解するための心理学的テクニックを教えちゃいます。
「会社と人」のミスマッチが起こる要因
まずは、どうして「会社」と「人」の間でミスマッチが起こるのかを考えてみましょう。
ミスマッチが起こる要因は、主に2つです。
【1】に関しては、入社前にお試しで副業をしてみたり、スキルを証明するテストを実施してみたり等、選考の段階で互いにすり合わせることが大事ですね。
【2】に関しては色々なパターンがありますが、今回はよくある以下のようなケースを紹介します。
スキル不足ではないのに活躍できないときのあるある
会社は「とにかくやってみてほしい」「失敗してもいいから」と言っているが、そんなんでいいわけない!目標達成できなくて責任を取るのは私なんだから!
成果につながる可能性があるアイディアを提案したのに、上司は「前例がない」「リスクがある」と言って許可してくれない!こんなに窮屈な職場だと思わなかった!
これらは、あなたの「目標達成スタイル」と「会社が求める役割」が一致していないから起こるのです。
人間の「目標達成スタイル」には攻撃型・防御型がある
人にはそれぞれ目標を達成する際のスタイルがあり、それは大きく2つに分けられます。
■目標を達成して得られる「利益」に焦点を当てて行動する「攻撃型」
■目標を「責任」と捉え、それを果たすことに焦点を当てて行動する「防御型」
この攻撃型・防御型の概念は、制御焦点(regulatory focus)という理論で科学的に検証されています。
制御焦点とは、人間の性格を「目標達成への向き合い方」によって攻撃型・防御型の2つに分けた理論です。人間は誰しも攻撃型と防御型の特徴を両方併せ持っており、状況に応じていずれかを活性化させて使い分けています。
ちなみにこの制御焦点の傾向は、遺伝や成長過程によって形成される特性によるものと、その時々の目標への向き合い方など環境によるものがあります。
特性によるものは、大人になってからは大幅には変わらないと言われています。
攻撃型・防御型それぞれの特徴と仕事の進め方
本記事では、個人ごとにどちらの傾向が強いかで、「攻撃型の人」「防御型の人」としてお話ししますね。
■ 攻撃型の人の特徴・仕事の進め方
■ 防御型の人の特徴・仕事の進め方
■目標達成スタイル別:「体重マイナス5kg」という目標に対しての向き合い方の違い
同じ行動をする際も、攻撃型・防御型では向き合い方が異なります。
仮に、減量という目標達成のために「毎日ランニング5km」という施策を選択した場合、攻撃型の人は「ランニングすることでスリムな自分に近づいていく!」という意識で取り組み、防御型の人は「ランニングをしなかったら痩せられない」という義務の意識で取り組みます。
攻撃型・防御型でわかる、人の「能力の発揮条件」
攻撃型・防御型ともに、それぞれの特徴と一致した仕事の進め方をしていると、「制御適合」という状態となり、モチベーションや適切感の向上が生じ、本来持っている能力以上の力を発揮しやすい状態になります。
逆に、特徴と実際の仕事の進め方が一致しない場合は、本来の能力が発揮されにくく、目標達成へのモチベーションが上がらない状態となります。
例えば、冒頭で挙げた
という場合は、防御型の人が攻撃型の要素が強い役割に配置されていることによるミスマッチの可能性が高いのです。
※「攻撃型」「防御型」はあくまで、目標達成に対して何にフォーカスして向き合うかの特性の違いであり、それ自体に良し悪しはありません。その人の個性です。
■攻撃型要素の強い仕事・役割の例
■防御型要素の強い仕事・役割の例
重要なポイントは、職種ではなく役割に注目することです。
「攻撃型だから営業職で活躍する!」「防御型だから管理職に向いている!」ということではなく、同じような職種でも求められる役割によって大きく異なります。
例を挙げて考えてみましょう。
この場合は、リスクを排除するのが得意な防御型の人が能力を発揮しやすい環境です。
この場合は、今ないものを手に入れるために動くのが得意な攻撃型の人が能力を発揮しやすくなります。
つまり、同じ「財務担当者」というポジションでも、求められる役割や仕事の進め方によって攻撃型・防御型の適性は大きく異なるのです。
どんなにスキルがあっても、仕事の進め方と自分の目標達成スタイルが一致しないと能力は発揮できない
たとえあなたの学歴が高く、前職での実績があったとしても「会社に求められる役割や仕事の進め方」と、自分の「目標達成スタイル」が一致していなければ十分に能力は発揮されません。
自分が持っている能力をちゃんと発揮できる、ミスマッチのないポジションで働くためには、まず自分の目標スタイルを理解することが第一歩です。
そして、ジョブチェンジをする際にはそのポジションで求められている役割・仕事の進め方が「攻撃型」「防御型」どちらなのかを考えてみましょう。
その観点で転職サイトを見てみると、「この仕事は攻撃型の要素が強そうだ。自分の特性を活かせそう」といった感じで、以前よりも具体的なイメージがしやすくなります。
面接の際も、「このポジションでは、ミスをなくすことが重要ですか?それとも、失敗したとしても大きな成果につながるアクションをすることが重要ですか?」など、目標達成スタイルの把握を意識した質問をするとミスマッチが減らせます。仕事への具体的な取り組み方の話ができるので、相互理解が深めやすくなります。
おみそのまとめ
今回は、「目標達成スタイル × 適職」をテーマにあれこれお話しました。
制御焦点理論はとても直感的に理解しやすく、かつ強力な指標です。しかし、あまり広く知られておらず、自己分析や適性検査などにも導入されていません。
弊社が開発運営しているJobgramではもちろん、性格診断の中に目標達成スタイル(制御焦点理論)の診断を含んでいます。
「あなたは営業職に適性があります」「あなたの適職はエンジニアです」
くらいの粒度のキャリアアドバイスや性格診断は、正直無意味です。役に立ちません。
ひとことで「営業」といっても、
・何を売るのか
・商材は新しい概念なのか、既に世の中に普及しているものなのか
・新規開拓なのか、既存顧客へのルートセールスなのか
・売れて当たり前のものなのか、まだ誰も売ったことがないものなのか
・嗜好品なのか、必需品なのか
・急成長している領域なのか、低成長領域なのか
・大手企業なのか、スタートアップなのか
・上司、一緒に働く人の目標達成スタイルは攻撃、防御どちら寄りなのか
などなど、環境によって求められる役割は全く異なるのです。
これを考慮せずに、「自分の適職は営業だから、条件が良さそうな営業の募集に全部応募していこう」という転職(就職)活動をすると、ミスマッチが起こる可能性が高くなります。
ちなみに、Jobgramを導入いただいている顧客企業さまでの「短期離職が起こるパターン」で最も多いのが、
“存在が攻撃型のかたまりである急成長ITベンチャー企業が、防御型の人を採用し、攻撃型のミッションを与えて潰してしまう”
というもの。
急成長スタートアップ・ベンチャーの短期離職の半分はこれです(おみそ調べ)。スタートアップが一定の規模になると、「なんかきちんとしてそう」という理由で防御型の人が採用されやすくなるフェーズがあるみたいですね。
個人の目標達成スタイル × 仕事の役割
これらを一致させることを意図的にやっている経営者・人事チームのいる会社があったら、ぜひ話を聞いてみてください。あなたの適職が見つかる可能性は他より高いはず。
我々は、そんな企業をもっともっと増やしていくためのプロダクトをつくっていきます。
目標達成スタイルを始めとする性格特性を診断したい人はこちらから(無料・所要時間の目安5分)。
※ 制御焦点は、促進焦点・予防焦点の2種類の特性についての理論ですが、本記事ではイメージしやすいよう攻撃型・防御型と表しています。
【参考文献】
ELLEN CROWE AND E. TORY HIGGINS(1997) Regulatory Focus and Strategic Inclinations:Promotion and Prevention in Decision-Making
Yuka Ozaki and Kaori Karasawa(2011) 自己に対する評価と接近回避志向の関係性 ──制御焦点理論に基づく検討──