「ジアタマが良い」人の特徴をコンピテンシーを使って表すと?
以前に書いたコンピテンシーに関する記事を改めて読み返したところ、「コンピテンシーはすごい、コンピテンシーは便利、コンピテンシーは新しい」と、コンピテンシーについて一人で盛り上がるばかりで、具体性に著しく欠いているとことに強く反省しました。
そこで今回は改めて、コンピテンシーを使うと具体的にどんな良いことがあるのか、という観点で書いてみたいと思います。
たとえばコンピテンシーではなく、ヒトの特徴を表す上で圧倒的な破壊力のあるパワーワードって、いくつかありますよね?
ひとつ挙げるとすれば「ジアタマが良い」という表現。
改めて考えると、ジアタマってなんでしょう(そもそも地頭?自頭?)。後天的な努力によらずに先天的に頭が良い、ということを表そうとしているのだと思いますが、正確には何を意味するのかわかりません。
受け手の立場になっても、「はっきり言って、あなたはジアタマが良くないですね」、「もしかして、あなたはジアタマが良くない可能性があります」と言われても、何も得るところはありません(その職場や人間関係と縁を切ろうという決心だけは確実に得られるかもしれません)。
なんだかわかったような気持ちにさせるパワーワードには、さまざまな意味が含まれています。それらをひとまとめにして「ジアタマが良い」と表現しているため、ヒトのもつ特徴を正確にとらえて、さらなる活躍・成長につながることができません。
そうしたわかったようでわからないパワーワードの代わりにコンピテンシーを活用することで、ヒトの強みや開発課題などの特徴を正確に把握し、さらなる活躍・成長に結びつけることができます。
たとえば「ジアタマが良い」という特徴を、以前紹介した「コンピテンシーマネジメントの展開」で紹介されているコンピテンシーに当てはめてみると、まったく異なる3つのコンピテンシーが当てはまることがわかります。
分析的思考
「ジアタマが良い」ということをコンピテンシーで表した場合、当てはまりそうなひとつのコンピテンシーは「分析的思考」です。
物事を分解する、構造や体系を把握する、流れや関係を理解する力です。よく言われる表現をつかえば「論理的である」という特徴です。
分析的思考の強みは、未知の状況においても、大きな問題を分解し、構造的にとらえることで、対応の道筋を立てられるところにあります。分析的思考が高い人は、プランニングやシミュレーションに長けています。分析的思考が高い人ほど、未知の状況においても一定の仮説や前提をおいて自分なりの結論を導き出すことができます。
逆に分析的思考が低い人は、問題の複雑性や規模を十分特定することなく、誤った因果関係で物事を捉える傾向があります。
概念的思考
しかし「ジアタマが良い」というのは「論理的である」というだけではありません。「創造的である」という発想力に長けた「ジアタマの良さ」もあります。
そうした特徴は「概念的思考」というコンピテンシーで表すことができます。概念的思考は、物事を結び付ける、パターンを見出す、アイデアとしてまとめる力です。
概念的思考の強みは、新たな企画の構想や、多くの人が気付かないとトレンドの洞察に長けています。概念的思考が高い人ほど、他の人には発想できない関係性や結びつきを見出します。
概念的思考の低い人は、自分の限られた経験の中で物事に対処しようとする傾向が見られます。
情報探求
もうひとつ「ジアタマが良い」に含まれる特徴を挙げるとすれば、「物知り」であるということもあります。
コンピテンシーでいえば「情報探求」です。情報探求は、新たな情報を得る、物事を掘り下げる、実態を観察する力です。
情報探求が高い人の特徴は、ひと手間もふて手間も惜しまず情報を集めます。情報探求が高い人ほど、普通にはない情報源や入手方法を見出します。また、必要になってから調べるのではなく常に最新の情報が手元に入るように日ごろから努力を惜しみません。
逆に情報探求が低い人は、必要がなければ好奇心や探求心を発揮して自ら知見を増やす努力をしません。
コンピテンシーはヒトの特徴の解像度を上げる
このように「ジアタマが良い」と一言で片づけられてしまう特徴も、コンピテンシーを活用することで「分析的思考」「概念的思考」「情報探求」という異なる特徴として整理することができます。
これら三つのコンピテンシーの中で何が高く、何が低いのかを見極めることで、そのヒトの特徴にあった育成施策を策定することができます。
たとえば、概念的思考と情報探求が高く、分析的思考が低い人であれば、過去の経験や最新の知見に基づいて物事を判断することに強みを有する一方で、将来の可能性を場合分けして予測し、それぞれに必要な対応を洗い出す力が課題になるかもしれません。
分析的思考と情報探求が高く、概念的思考が低い人であれば、複雑かつ広範にわたる事象の因果関係を理路整然と整理することに長けている一方で、それが一体何を意味するのか、という方針につながる洞察を導き出す力が課題になると考えられます。
また分析的思考と概念的思考が高く、情報探求が低い人であれば、ファクトを交えたわかりやすいストーリーは示せるものの、分析や構想が過去の実態をベースにしており、市場や競合に関する最新の動向を踏まえて判断をする力が課題になるでしょう。
このようにヒトの特徴を的確に表すことのできるコンピテンシーですが、決してMECE(モレなくダブりなく)にはなっていません。いずれも関係している要素はありますし、特に高いレベルのコンピテンシーには様々なコンピテンシーが関係します。
コンピテンシーは、ヒトの似顔絵を言葉で表したもの、といえます。コンピテンシー間で共通する要素があったとしても、そのヒトの特徴を最も表すコンピテンシーが何かを考えることで、ヒトの特徴の解像度を高めることできます。
「ジアタマが良い」と一般的に言われる人も、分析的思考・概念的思考・情報探求のどれが最も高いのかを把握することで、そのヒトの特徴を的確に把握し、さらなる活躍・成長に結びつけることができます。
今回紹介した分析的思考・概念的思考・情報探求は、思考系といわれるコンピテンシーですが、それ以外にも様々なコンピテンシーがありますので、それらについても改めて紹介できればと思います。
最後まで読んでいただきありがとうございました。