【人事労務的視点】山川穂積選手の件【WBC出場/日本プロ野球選手】※追記あり。
※2024年01月03日追記。
先日、顧問先と「従業員に問題を発生させないための仕組み作り」について話していたところ、その流れで「問題を発生させた従業員への懲罰」の必要性についての話となり、
プロ野球選手の山川穂高選手問題
についての話になりました。
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その顧問先は、『私の会社でこんなことしたら、直ぐに懲戒解雇だ!場合によっては、損害賠償請求裁判も起こす!』と言っていました。
先日の西武の株式総会では「許されない行為であり、即刻解雇すべき」という株主に対して、「現在は検察庁の判断を待っている状況。今後の対応につきましては、検察庁の判断および関係各所のご意見を伺いまして、適切に対処して参ります」と答えていたようです。
まず、株主の立場からすると、起訴だろうが不起訴だろうが、火のない所に煙は立たないということわざの通り、ですから、山川選手がこの件に関して全くの無実ということはほぼありえないと言えますので、こういった反応が出るのは当然です。
さらに、この問題を複雑にしているのが、山川選手は、
1.今年のWBCに出場し優勝に大きく貢献した。
2.打点王1回・ホームラン王3回、さらには最優秀選手やベストナインにも複数回選出される。
という、日本プロ野球界のスターと言える存在ですので、今回の件が西武という一球団に留まらず、日本プロ野球界に大きなマイナスの側面を与えてしまったというところです。
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上記がこの問題の背景ですが、では、球団としてどのような行動を取るべきかということになると、球団の考えによって下記のように考えられます。
1.起訴か不起訴かという状況に関係無く、週刊誌等により公になった時点での即時解雇
まず、会社として一番初めに考える措置です。
起訴か不起訴かという状況は、当然法的には重要なところですが、一般人からするとあまり気にする方は少ないですし、こういった状況が公になった時点で球団のイメージダウンは計り知れません。
問題を起こした人材をそのまま雇用していることは、球団としてデメリットが多い行為ですので、当然西武首脳陣は考慮したと思います。
しかし、今回の記事を書くために調べて分かったのですが
数年前に発生した、ロッテ清田選手の複数回不倫騒動に関して、球団が年度途中(2021年5月)で契約解除。
しかし、清田選手は「突然の契約解除は解雇権の乱用」と訴え、訴訟に踏み切った。
という出来事があったとのことです。
ネットでの情報だと、二年以上経過した今年に「上記訴訟を取り下げ、球団と和解」というニュースがありました。
しかし、問題行動を起こした選手を処分した場合に、その選手から訴えられるとなると、「裁判沙汰」というのはさらにイメージが悪くなってしまいます。
こういう前例があるため、球団としてもすぐに動きづらくなってしまいます。
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2.起訴・不起訴が決定してからの会社判断
検察庁が起訴判断した時点で有罪はほぼ決定であり、そうなれば官公庁も「山川選手側が悪い」という判断になりますので、球団として処分に動きやすくなります。
しかし、現在の状況からも分かるように「検察庁の起訴・不起訴判断」は長い時間がかかってしまいますので、その間、球団側として様々なリスクを抱え込むということになってしまいます。
当該選手に対してさらに問題のある言動が発覚する可能性がありますし、何も無かったとしても世論の変化によって、さらにイメージが悪化する可能性もあります。
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ここまで書いてきましたが、実は、
プロ野球選手は、一般企業でいうところの従業員ではなく、建設業などで多い「一人親方(もしくは個人事業主・フリーランス)」扱いと考えられています。
ですので、
山川選手は、労働者(従業員)としての身分では無いため、前述してきた考え・処分は当てはまりにくい
と考えることも出来ます。
こういったところも、今回の件を複雑にしている要件の一つです。
しかし、最近の人事労務関連業界の流れとしては、
会社は、自社で雇用している従業員だけでなく、自社に関連している業務を行っている人(一人親方や業務委託)に対しても、管理監督責任がある。
となっています。
球団としては、問題行動を起こした山川選手を処分したいと考えていますが、第三者の視点から考えますと、西武球団は、山川選手がそういった不祥事を起こさないような管理監督はしていたのか、という視点もありますし、このような指摘をされてしまうと、西武だけでなく他球団も他人事とは見なすことが出来ないでしょう。
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ここまで、プロ野球選手という、一般の人事労務関連業務にはあまり関わらない方を題材にして記述してきました。
しかし、従業員を雇用していたり、自社業務のために他社・他者の力を借りているのであれば、従業員(関係者)の不祥事という事件はどんな会社でも起こり得るリスクなので、これを読んだ方々も今回の件を他山の石とせず、
従業員・関係者の教育
従業員・関係者の管理監督
をしっかり行うための仕組みを作り運用することで、出来るだけ発生リスクを低下させる備えをすることが重要です。
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