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まずはオリジナルではなく模倣から
こんにちは。Big4でコンサルタントを経験した私が、身近な出来事を通じ、学んだり考察したことをゆったりと語っています。今回は真似をすることの効用についてお話しします。
なぜかオリジナルに走る人
実際にあったケース
コンサル時代に携わったあるプロジェクトでの出来事からお話を始めます。私が現場のリードをしており安定してプロジェクトを推進していたのですが、スコープ拡大により人手が足りなくなったためスタッフ1名を追加することになりました。コンサルでは短期間でキャッチアップをし早々に現場で役立つように仕上げていくことが肝要でして、この案件でも新しいメンバーにキャッチアップすべき事項(プロジェクト概要、その方の役割など)を徹底的に引き継ぎしました。
徐々にキャッチアップが進んできたので私のタスクを少しずつ移譲しその方に担当いただくことになったのですが、なぜか私が引き継ぎの際に見せた資料のフォーマットではなく自分のオリジナルを携えてやってくるのです。案件理解が生半可なままオリジナルに走ってしまっているので、もちろんですがツッコミどころ満載です。どのような意図で新しいフォーマットを作ったのかなど詳しくヒアリングをし協議をした結果元々運用されていたかたちに戻すことにはしたのですが、正直まずは現行の運用に慣れてから改善を加えていこうと思わなかったその方のやり方が全く理解できませんでした。
なぜオリジナルに走るのか?
私は仕事やそれ以外においてまずお手本を真似るところから始めるように意識しているので一発目でオリジナルに走る方に共感することが難しいのですが、考えるにおそらく次の2パターンのうちのどちらかなのではないかと思います。まずは自分が斬新で革新的なアイデアを生み出せると考えているタイプです。今までよりも優れた運用にできると信じて疑わず、我が道を突き進んでしまうのでしょう。もう1つは単純に何も考えていないタイプに分類されると思います。上位者が指導すればそれで済むのですが、このタイプは往々にして自走するまでに時間がかかるという難点も抱えていることが多い印象があります。
何事も模倣から
学術論文を書くとき
少し話はそれますが、皆さんは学術論文書かれたことはありますか?大学や大学院に進まれる方の多くが通った道だと思いますが、学術論文を書くプロセスに今回のトピックの大きなヒントがあります。
論文の大まかなテーマが決まったあとはすぐに調査をしたり論文を書くわけではなく、先行研究を読み漁るという作業が入ります。大量の論文を読むという苦行をわざわざ選ぶのは、すでに研究されているテーマや手法を確認し自分の独自の研究を定義するという目的があるからです。これまで数々の研究が世の中に発表されていますから、どれだけ目新しいテーマであっても大体研究し尽くされています。ですが、大量の論文を読むと研究が行き届いていない本当に小さな穴みたいなものが見えてきます。それが自分の論文によって新たに世の中に提供できる価値であり、論文のテーマとなります。
先人の技を盗む
論文の例から分かることは、結果的に画期的なアイデアが生まれたとしても、それは急に思いついたオリジナルではなく先人たちが残した仕事を十分に参考にした結果なのです。これは論文の世界にとどまることなく、私たちが普段対峙する仕事においても同じ考え方ができます。前例を参考にしたり真似したりすることはともすると悪いことのように捉えられることもありますが、そんなことはありません。私たちが今当たり前のように捌くことができる仕事のほとんど全ては誰かから教わっていたり、見様見真似でだんだん自分のものにしていったのではないでしょうか。いちいちオリジナルから始めていてはいくら時間があっても足りません。せっかく先人が失敗を繰り返して作り上げてきたベストプラクティスがあるのであれば、それを利用しない手はないでしょう。
ということで、今回は真似をすること(オリジナルにがっつかないこと)の重要性についてお話ししましたが、ただ単に真似をし続ければいいというわけではありません。真似をする中で自分なりに改善できそうな部分を見つけ修正していき、それが結果としてオリジナルになります。改善の余地がないか常にアンテナを張りオリジナルを作ることは大切ですが、その土台は模倣から始まるということをお伝えできていれば幸いです。
筆者とこのnoteについて
Big4でコンサルタント経験者である私が、実際の現場で見聞きした生き生きとした(時には生き生きとし過ぎた)情報をみなさんにお届けしています。無料でも有益な情報をお届けできるように執筆していますが、より生々しい現場の経験についてはオーディエンスを絞らせていただいています。
いわゆるコンサルスキルと呼ばれるものだったりコンサルの現場から日々学ぶことは、決してコンサル業界に閉じた話ではなく、それ以外の業界の皆さんにも参考にしていただけると思います。なにしろ、コンサルタントはあらゆる業界のあらゆる課題解決を主要なサービスとしていますから、業界を問わず普遍的なスキルを身につけておく必要があるのです。
ゆったりとした回と有益情報を盛り込んだ回を織り交ぜることで、より活き活きとしたコンサルの現場をお届けできればと思っております。
それではまた😉