6ステップで描いて捉える業務・ドメインインプット!
この記事を書き始めた頃は、どこに行っても桜が満開でした🌸
と、思ったらもう青々とした新緑の季節🌱
月日はあっという間ですね。
就職や転職を通じて、新たな環境に身を置く人も多いことでしょう。そんなタイミングで新たな仕事のインプットや研修をはじめた方も多いのではないでしょうか?
この記事は、私が難しいドメインや業務を「図」として描く過程で理解していった試みについてご紹介します。
公開後早々にエンジニアや企業のDXに関わる方々とお話する機会をいただきました。ぜひデザイナーに限らず多くの方にシェアしていただき、その意義を感じてもらいたい。人それぞれの難しさがあるなかで、同じく悩める方の役立つヒントになりたい。と願っています。
1. 関心対象・関わり・人の可視化
ドメインや事業をうまくインプットするには、どうしたらよいでしょうか?
慣れない方が "ドメイン(領域)の知識や業務を理解すること” は簡単ではありません。「わかりやすい」と題された教本を読んだり、有識者の講習を受けてもうまくいかず、苦手意識や気の焦りを感じる人もいることでしょう。
しかし自分なりの方法で捉えて理解を深めたら?
より楽しく、熱意をもって、ものづくりに取り組めるかもしれません。
業務を可視化する手段として「業務フロー図」や「シーケンス図」ほか様々な方法がありますが、自分の場合は、以下のような図で "人と関心対象の関わり” を可視化して、馴染みのない複雑な業務を理解しました。
様々な仕事があるなか、複雑だったり流れで表現しきれない仕事も多いと思いますが、おそらく共通して "人と関心対象の関わり” が在るはずです。
それらをひとつの図やビジュアルとして可視化することで、内容はサッパリ分からなくても、カタチとして捉えていける。デザイナーやエンジニアなら、なんだかできそうじゃないですか?
どのように描いていったか、ステップバイステップで解説します。
※以降は記事が理解しやすいよう「採用業務」を単純化したサンプルとあわせて説明します。
※可視化の方法が世の中あらゆる仕事に当てはまらないことはご了承ください。ぜひケースに応じてアレンジをしてください。
1-1. スタートとゴールを描く
シンプルに業務のスタートとゴールを描きます。
スタートには「その時点である要素(材料や業務タスク)」を、ゴールには「達成したい要素(成果物や成果そのもの)」を配置します。要素がわからない場合は有識者に「この仕事はどんな状況から始まって、どんな条件や成果ができて終わるの?」などと聞いてみましょう。
この図示が現状のドメイン理解の取り組みであれば、現状のスタートとゴールにない(今できていない、現実的にできない要素は入れない、背伸びしない)よう気をつけましょう。
この間にいろいろなモノゴトを入れたくなってくるかと思いますが、一旦こらえてスタートとゴールを描きましょう。
1-2. 登場人物とタスクを描く
多くの人が業務の中でモノゴトに関わり、仕事が進んでいくものと思います。できるだけシンプルに「登場人物」と「タスク」を順番に洗い出していきます。
ヒアリング等を通じて「登場人物」と「タスク」の関係がわかるようであれば、人をまとめたり線でつないでみてください。
1-3. タスクを分解する
例のなかで「選考する」とありますが、皆さんはそれだけで何をどうするか、捉えることができますか?
大まかなタスクほど素人には理解できないため、ヒアリング等を通じて、できるだけ具体的に何をどうしているかを分解します。
1-4. 関心の対象を捉える
続いて分解したタスクの「何」から “関心の対象” を捉えてみます。
たとえば「応募内容」や「書類」がどんなモノに記載されたり(ドキュメント等)、どんな仕組みで管理されたり(システム等)、どの場所で行われる(会議、イベント等)のか。
以下のような感じで現実の世界で人が関心を寄せる対象を捉えてみます。
1-5. 人と対象を関わりでつなぐ
続いて、あらためて「人」と分解した「関心対象」を「関わり」でつなぎます。図が詳細になってきました。
情報量が増えてまとまらない場合、例えば「この部分の責任は誰が持っているのか?」「このイベントは誰がどんな役割を持つのか?」といった質問を挟みながら、「人」と「関心対象」にどんなつながりがあるかを意識して聞けると、より整理されるように思います。
実際の業務はきれいなプロセスばかりでなく、タスクが複雑に絡み合ったり前後するものと思います。例えば図のように「選考」という大まかなフェーズの中に並べたり、構造や体系を意識しながらまとめると整理されやすいでしょう。
1-6. 難しさや重要性を示す
情報が増えてくるほど、どの情報がどの程度のものか把握したくなります。その程度によって「難しさ」や「重要性」がわかれば、以降でどのようなことが求められているか、捉えやすくなるからです。
必要に応じて、メインの登場人物を目立たせたり、対象を視覚的に示したり、その他に難しさや重要性を区別できるよう表現してみます。また、何がどんな意味をもつか「凡例」を添えるとよいでしょう。
現状の「難しさ」や「重要性」を捉えることによって、以降で解消すべきペインを特定するヒントになるかもしれません。
ここまできたら仕上げです。視点をひいて、全体を俯瞰しながらバランスを整えてみましょう。
ここまでで、関心事と人の関係がより具体的にみえてきたのではないでしょうか?ドメインや業務の可視化はここまでで完了です。
2. 成果や意志の可視化
「理解」という点では進むかもしれませんが、ものづくりの仕事は「理解」だけで終わることはありません。私はものづくりを通じて期待以上の貢献をしていくため、相手の望む「成果」や作り手の「意志」も必要な要素だと考えています。理解が進んだら、ぜひ捉えてみましょう。
相手がほしい成果を明らかにする
ドメインや業務と向き合うことによって何がよくなるのでしょうか?ひとつは「成果の向上」が期待できます。
ものづくりの成果といっても「整った状態になる」「期限に遅れない」など様々な種類がありますが、ここではものづくりの成果物(アウトプット)の先にある成果。成果物の便益を受ける相手にとっての成果 "アウトカム” に注目します。それはどんなものでしょうか?
たとえば図の「人」の想いを捉えてみてください。
この人は何を望んでいるのでしょうか?うれしいことを考えて、吹き出しを足してみましょう。
ドメインや業務を理解し、相手の抱える課題や欲求を自分なりに理解するほど、こういった「心地いい」「うれしい」「報われた」といった相手の感情に寄り添ったアウトカムが得られるかもしれません。そういったアウトカムから、元あった要件以上の創意工夫ができるかもしれません。
自身が関わる意志を持つ
アウトカムを理解するには、相手への "共感” が不可欠です。共感といっても、表面的な「欲しいもの」に対する共感ではなく、「欲しい理由」への共感です。
自分は働きながら、よくアンパンマンの歌を頭に浮かべます。
なにがうれしいんでしょうか?
相手のことは分かりません。分からなくても<例えば意中の相手へのプレゼントを考えるなら>私たちは必死になって考えます。知る限りの相手の性格や趣向から「なにがうれしいんだろう?」と仮説を探します。
※書き添える必要はありませんが「アンパンマンのマーチが好き」ということではありません。ただ言いたいからです。
その意志を(やりすぎはノイズになりそうですが・・・)アウトカムと一緒に記載しておくのもよいかもしれません。
ものづくりに携わるデザイナーやエンジニアが自分なりに共感することで、自身の問題としてどうしたいか?自分なりの意志を持つことが期待できます。
もちろん、それがなくとも仕事はできますが、自分の中に何らかの意志をもつことは(たとえアプローチが報われなくても)仕事の意義につながります。
3. ドメインと向き合うマインド
「言うは易く行なうは難し」という言葉もありますが、ここまで書いたプロセスに取り組むことは、実際は難しいと思います。テクニックはもちろんですが、有識者に聞くにしても、相手にとって期待が抱けなければ(教えていただく以上のリターンが提案できなければ)無駄となってしまいます。
そこで最後に、ドメインに新たに向き合う方が陥りがちな状況と持ちたいマインドセットや期待について書き添えておきます。
自責に陥りやすい状況
事業会社への就職や転職後は、多くの方が業務と関係するドメイン知識のインプットに取り組みます。そして、多くの方が頭を悩ませます。
独特な専門用語やルール(法律、商習慣)、作法が多い
業務が複雑で理解しづらい
当然ながらドメインはその道のプロが理解しています。当たり前にこれらが話される環境もあるでしょう。そんな中でデザイナーやエンジニアが、知識不十分な状態で教えてもらう構図になることも珍しくありません。
決して悪いことではないのですが、このような関係性やコミュニケーションを通じて「こんなことも分からない・・・」といった自責に陥りやすくなります。心理的に辛い状況でも、その状況はあなたの不足だけが招いているわけではないかもしれません。周囲もそういった方を支えたいところです。
ものづくりのプロとして取り組む
私たちと同じく、有識者にとってドメインに関するあらゆる知識や業務上の技術は、働いて生きていくために必要なものです。
初学の方が知識不足やインプットの難しさで、過剰に苦しむ必要はありません。関係のなかで圧倒されたり混乱せず、必要な知識を自分たちにできる方法で取り込んでいくにはどうしたらよいでしょうか?
前述のように、あなたなりにできることがあるはずです。
幸いなことにデザイナーやエンジニアなどものづくりに携わるプロは、モノゴトの構造や体系をつかみ、カタチにする力を既に持っていることが多いように思います。
ものづくりのプロとして、自信をもって描きはじめてみましょう。
以上です。いかがでしたでしょうか?
もちろん前述の方法は全てに当てはまるものではなく、ドメインや業務によって適さないケースもあると思います。ぜひケースにあわせて、あなたなりの理解や組織の取り組みに役立ててください。
最後に。
ここまで読んでくれたあなたに、この言葉を贈ります。
これまでより理解が深まり、望ましい成果と、ご自身のやりがいにつながることを祈っています。
もし、サポートいただけるほどの何かが与えられるなら、近い分野で思索にふけり、また違う何かを書いてみたいと思います。