アウロラとケファロス〜美術鑑賞①〜
365日美術鑑賞記念すべき第一回目となります。
ヘッダーの絵画について解説しますので気軽に見ていって欲しいです。
1,作品紹介
図録の写真を載せようと思ったのですが撮り方が下手なので画像を使わせていただきました。
展覧会訪問録までには写真の技術を上げなければ💦
こちらはロココ美術の巨匠であるブーシェの
「アウロラとケファロス」
という作品になります。
制作年は1745年頃と推定されておりちょうどフランスではポンパドゥール夫人がルイ15世の愛妾として宮廷で実権を握っていました。
ルイ15世の時代と言えばとにかくお金をかけた豪華絢爛が彼の趣味であったため、宮廷にはじまり様々な芸術作品にその特徴が表れました。
その特徴というのがロココ美術です。
優美な色使いと緻密な筆遣いが特徴ということなんですけれどこれはもう作品を見て「フィーリング」で特徴を感じとって欲しいです。
ロココ美術作品を何作か見れば大凡の特徴は勘で掴めると思います。
日本オンライン美術館は幅広い人に美術鑑賞の第一歩に触れて欲しいということで細かい特徴とかよりもフィーリングで美術鑑賞をすることに重きを置いているのでご理解お願いします(ノ_ _)ノ
(もちろんこの後に詳しい構図など説明するので詳しい話が知りたい方はもう少しの辛抱です!)
こちらのポンパドゥール夫人画もド・ラトゥールによるロココ様式となります。
(ポンパドゥール夫人画の出典であるこちらのサイトさん非常に見やすく受験生時代や今も歴史関係の講義を受ける時にお世話になっております)
大体肉感のある見ていて楽しい感じの様式になりますね。また、色彩が鮮やかだったり特に人々の服や家具が豪華に描かれているのも特徴です。
私がロココ美術を1番好むのもきっと少女趣味をくすぐる色彩や華やかさがあるからでしょう。
2,作品解説
①美術鑑賞にはモチーフが付き物
ここからは構図やモチーフから美術作品を解釈する話になります。
ロココ様式の主題には主に神話が採用されます。
今回の絵画に天使(アモル)が何人か描かれているため神が関係しているのだろうかと察した方も多いのではないでしょうか。
そう、その通りです。今回のメインテーマのうちアウロラは女神様で、ケファロスは人間の若者になります。
大抵ロココ美術には神話や若い男女の恋愛模様が主題として採用されています。
アウロラは画面左側の男性を上から見つめる女性でケファロスはその女性と目を合わせる赤い布を纏った男性です。
また、彼女がアウロラであることの証明に彼女の頭上に1つ輝く星があります。
空の色は明らかに昼なのに不自然に輝く一番星…
これがアウロラのメタファーとなるのです。
風景画ではなく登場人物がメインになるタイプの絵画では、 こういったモチーフで登場人物が誰であるかを示すという手法が使われます。
これにより登場人物が多い絵画であったり、いちいち作者がこれは○○で〜など説明しなくても鑑賞者に登場人物や主題が分かるようになっているのです。
また、この手法は今回の絵画でケファロスにも用いられています。
絵画の下部に注目して欲しいのですがケファロスの足元の右側にはケファロスを見上げている犬が、そして左側には仰向けに転がっているウサギや鳥がいます。
これは彼が猟師であることを示しています。
猟師を描く際にはメタファーとして猟犬や獲物が使われます。
ちなみにこの場面だけ切り取られた絵画を見るとこれから素晴らしい恋が待っている予感がしますがこの話には中々にエグい結末が待っています…
この章では構図や表現方法について解説するのでエグい結末が知りたいという方は次の章までお待ちください┏○
また、彼らの周りに天使を描いているのも女神がいるから〜とか見栄えがいいから〜なんていうふわっとした理由ではありません。
②アモルとは?
天使(アモル)は恋愛の場面に登場します。
アモルは愛を人々に運ぶ役割を果たすので、
愛あるところにアモル有りというような感じです。
去年の6月ごろに都内で開催された
「ルーヴル美術館展 愛を描く」
というなんとあのフランスのルーヴル美術館から約70点もの絵画が来日するというスケールの大きい展覧会がありました。それはまさにアモルをメインテーマにしていて私の趣味にどハマりな展覧会でした。
展覧会としては珍しくインスタ映えスポットなんかも用意してどんどんSNSで拡散しちゃって!みたいな雰囲気でした。
そのせいかカップルやキラキラ系女子など若い人が押し寄せてた印象です。
結構私の大学でも行った人が多い展覧会でした。
アモルの話は一旦ここまでにして(後日アモルを主題とした別の絵画も取り扱おうと思います)
構図の話
に移ります。
③今回の構図
今回の絵画は登場人物が多いはずなのにごちゃっとした印象を受けないというかどこかすっきり纏まっているという印象を受けませんか?
そう、これこそ美術作品における要で最も芸術家の技量、つまり腕の見せどころが試されるというわけです。
多分ろくに訓練も積んでない私が同じ数の登場人物が出てくる絵画を描こうとしたらかなりごちゃごちゃした印象のものが出来上がる予感……😇
今回の絵画は
斜めの対角線と渦巻き状のダイナミックな構図
で上手いこと纏められています。
対角線の構図というのは登場人物同士を線で繋いでみると自然とクロスして見えるはずです。
この通り渦巻きの構図に登場人物を入れることによって一目で全体像を把握出来る絵画となっています。
また、光源がアウロラの方向から入ってきており
(美術鑑賞において光源の位置というのはかなり重要になってきます、ここから光が入ってここが影になってる……という解釈に必要なものです)
そのコントラストによって赤、青、黄色という鮮やかな色彩を目立たせています。
構図にも流行りというものがあるので同じ年代に描かれた絵画は構図が類似している場合が多いという特徴があります。
構図は絵画の
年代推定にも重要な要素となってきます
ので今後美術鑑賞をする際は鋭く見てみてください。
3,この物語の結末
先程この絵画には中々にエグい結末が待ち受けていると言いましたね。それについて解説します。
実はケファロスは新婚さんなんですね。
プロクリスという新妻がいました。
アウロラは恐らく狩りをしている最中のケファロスを山頂から見初め、無理やり連れ去ってしまいます。よく絵画を見ると雲に乗ってアウロラが彼を迎えに来ているような、連れていこうとしているような場面に見えます。
しかしケファロスは妻のことが忘れられません。
それに怒ったアウロラは地上に彼を帰す代わりに妻の不貞の疑惑を吹き込んで復讐します。
綺麗な顔して中々悪どいことをしますねこの女神様は。
最終的に、ケファロスが妻を野獣と見誤って投槍で貫くという悲劇になります。
結構神話って神様の身勝手に人間が巻き込まれて悲劇が訪れる……的な終わり方をするものが多いです。
男性に恋したけど振り向いて貰えなかったメンヘラな女性が暴れてその男性の人間関係を引っ掻き回すなんてこと現代でもよくあるのではないでしょうか(笑)
ちょっと神話とは違うかもしれませんがオイディプス王なんかも面白い(悲劇ですが)結末でしたよ。
せめて最後の悲劇に向けて出会いの場面は華々しく描いてやろうといったブーシェの心遣いが見えますね。
4,ポンパドゥール夫人とブーシェの関係
さて、ロココ美術の例としてポンパドゥール夫人画を挙げたのにはワケがあります。
ポンパドゥール夫人はブーシェの有力なパトロンでした。
画家にはお金を支援してくれるパトロンの存在が必要不可欠です。(あー私もnote支援のパトロンが欲しいなんちゃって)
パトロンの好みに合わせて絵画を描くのでロココ美術といったようなその当時のパトロンの趣味が反映された様式の絵画が大量に生まれることになるのです。
ポンパドゥール夫人とブーシェの関係についてはこちらのサイトさん(私との関係はございません)でもっと詳しく書かれています。ブーシェに関する中々に衝撃的なことも書いてありましたので…(笑)
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5,ヤマザキマザック美術館
名古屋にあるヤマザキマザック美術館がこの「アウロラとケファロス」を所蔵している美術館となります。
こちらの美術館は絵画コーナーに入る前にヴィンテージの家具を集めたコーナーがあるのでそちらもかなり楽しめる要素になっています。
特に100年以上前のオルゴールは目玉でした。
この「アウロラとケファロス」が私の一番好きな絵画である理由もこの美術館を訪れた際にほぼ一目惚れのような形でロココ美術の世界にハマったからなんですよね。
もちろん大学での学科振り分けの志望理由書にもロココ美術への愛をたっぷりと記述させていただきました。
この美術館、かなり好きなのでわざわざヤマザキマザック美術館のために名古屋に行ったりするほどなんですけどとにかくこだわりが凄い。
ロココ美術コーナーになるとシャンデリアだったり実際に当時宮廷で使われていたという床材が使われているため本当にロココの空間にいるような体験ができます。
美術鑑賞が趣味だと言うなら絶対行ってください!
と声を大にして言いたいですね。
では今回の365日美術鑑賞はこちらで終わりとさせていただきます。
最後まで閲覧いただきありがとうございました。
次回は印象派の作品のうちのどれかをピックアップしますのでお楽しみに……
(そういえば近日上野の国立西洋美術館で印象派展やりますね絶対行きます、レポート出します)