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塾という「場」についてのワーク

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学校に通い塾には通わない生徒、学校と塾の両方に通う生徒、学校は通わず塾だけに通う生徒、塾を学びの場所とする浪人生etc. 塾は私たちの日常にあふれていますが、そこはいったいどんな…
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#生徒

塾という「場」 12 ー学校の先生たちにむけてー まとめ

塾という「場」 12 ー学校の先生たちにむけてー まとめ

まとめ塾での学びのありように光をあて、言葉を与え、紹介してきました。
塾という場では、生徒という対象がそもそも破れているために、フォーマル教育である公教育で求められる学力をつける要素とともに、インフォーマル教育やノンフォーマル教育における学びの作られ方という要素も大きく作用しているといえます。

今回紹介した「生活のなかに学びがある」、そしてそこに学力も位置するという視点は、まずは、生徒のエンパワ

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塾という「場」 10 ー生徒の「まるごと」に寄りそうー ケア的な支援

塾という「場」 10 ー生徒の「まるごと」に寄りそうー ケア的な支援

(v)ケア的支援へ
「すべての労働は、ケアリング労働だとみなすこともできる」とD.グレーバーは述べています(デヴィッド・グレーバー『ブルシット・ジョブーくそどうでもいい仕事の理論』 307頁 岩波書店 2020)。
さいごに、この視点から検討してみたいと思います。
 
もし、「教育とはケアリング労働である」と仮定するならば、それはまさに、教育者が、『「もろさ」の強さ』を引き受ける、ということによっ

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塾という「場」 7 ー生徒の「まるごと」に寄りそうー 物語的な個人

塾という「場」 7 ー生徒の「まるごと」に寄りそうー 物語的な個人

(ii)物語的な個人
ここで、少し視点をかえて、希望、について取り上げてみたいと思います。
 
希望学の知見(玄田有史『希望のつくり方』岩波新書 2010)によると、
・そもそも、人間は、日々生きる困難のなかで、希望をどうしてももってしまう、もたざるをえない動物、である
・希望は変化と密接な関係があり
・未来に向かって現状を変化させていきたいと思うときにあらわれるもの
・育まれていくもの
・模索の

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塾という「場」 6 ー生徒の「まるごと」に寄りそうー 視点の相対化

塾という「場」 6 ー生徒の「まるごと」に寄りそうー 視点の相対化

3-2 生徒の「まるごと」に寄りそう

「生活のなかに学びがある」「生徒のまるごとを引き受ける」という点について、さらに見ていきましょう。
 
キーワードは、
・視点の相対化
・物語的個人
・ネガティブ・ケイパビリティ
・対話
・ケア
です。
 
(i)視点を相対化する
生徒の存在、「まるごと」を引き受けるということは、そこに生徒の世界があるということを、まず、引き受けることです。
 
そして、「

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塾という「場」 4 ー場としての塾をめぐってー 成果・結果・評価

塾という「場」 4 ー場としての塾をめぐってー 成果・結果・評価

(承前)
(ii)何を成果とし、学びの結果として評価するのか
生徒による塾での学びを考える上で、卒塾に際しての、「楽しかったです」「もう、だいじょうぶ」「これから頑張ります」といった彼らの言葉がヒントになるかもしれません。
 
ほとんどの生徒と高校卒業までの数年間一緒に勉強をしますが、受験前の半年あるいは1年間を集中して指導する生徒もいます。生徒も私も、いい時もそうでない時も、一緒に時を過ごします

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塾という「場」 3 ー場としての塾をめぐってー 学びの評価

塾という「場」 3 ー場としての塾をめぐってー 学びの評価

(承前)
③塾での学びの評価とは?
塾での学びに対する評価についても、公教育のそれとは多少異なる側面があるかもしれません。
これまで述べてきた、主体、そして主体をとりまく諸条件がここに大きく関わってくるようです。
 
てがかりに、誰が評価するのか、何をもって成果として評価するのか、という点について考えていきたいと思います。
 
(i)誰が評価をするのか
塾での学習をめぐっては、常に複数の要因がつき

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