『今日も世界で誰かが嘘をついている。カレー編』
『今日も世界で誰かが嘘をついている。カレー編』
共に55歳を迎えて夫婦2人の時間が増えた。
子供達が皆、家を出て独り立ちしたからだ。
妻は以前よりも料理に力を入れるようになった。
特にカレーは手間と時間を掛けて作っている。
市販のルーは一切使わずに何種類ものスパイスやハーブからカレーを作るのだ。
スパイスが効いた深みのある大人のカレーを洋食屋やホテルのレストランに出てくるようなルー専用の銀の入れ物(グレイビーボートもしくはソースポットと呼ばれている)に入れて出してくれる。
お店で出てきても不思議じゃないレベルの本格派カレーを自宅で食べられるのは贅沢な事だと思う。
でもね・・・
本当はね・・・
そこら辺のスーパーで売ってる定番の市販のルーで作った普通の家のカレーが食べたいんだ。
隠し味なんていらない。
お肉とジャガイモ、玉ねぎ、人参をルーの箱に書いてあるレシピ通りに作ったカレー。
何十年と日本中の子供達を喜ばせてきた市販のルーで作った家カレーが最強に美味しくて大好きだ。
ご飯とルーをスプーンでごちゃ混ぜにしてから食べたーい。
大人の上品なカレーなんてクソくらえじゃーい。
え?じゃあ自分で作って食べろだって?
「私が一生懸命作ったカレーよりも市販のルーのカレーの方が良いの?」って妻の機嫌が悪くなりそうじゃーい。
*
「次はオーガニック野菜を使ったキーマカレーにチャレンジしてみようかしら」
「丁度キーマカレー食べたいって思ってたんだよ。嬉しいな、楽しみにしてる♪」
『今日も世界で誰かが嘘をついている』