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『今日も世界で誰かが虚しくなっている。真夏の大冒険編』
『今日も世界で誰かが虚しくなっている。真夏の大冒険編』
中学生になると部活や塾で忙しくなるから、お母さんの田舎の仙台には今までみたいに毎年遊びに行けなくなるかもしれない。
だから今年はお盆休み前に、私1人で先に帰省して仙台でゆっくり過ごす事にした。
最寄り駅から在来線に乗って東京駅へ。
そして自分で選んでお土産を買って、東北新幹線で仙台に向かった。
小学6年生の私が1人で新幹線に乗るのも、1人で県外に行くのも初めてだった。
大袈裟に聞こえるかもしれないけど、私にとってはドキドキの真夏の大冒険なのだ。
仙台駅にはお母さんのお兄ちゃんである雅彦おじさんが迎えに来てくれる事になっている。
私が生まれた年におじいちゃんが他界して、それからは雅彦おじさんが稼業の農家を継いでおばあちゃんと2人で暮らしている。
仕事が忙しくて婚期を逃したとか、結婚はまだ諦めてないとか、いつも冗談交じりにボヤいている。
無事に仙台駅に到着した私を、雅彦おじさんが改札の外で手を振って迎えてくれた。
だけど、雅彦おじさんが履いているベージュのチノパンに残尿のシミが滲んでいた・・・
もしかして、駅に着いてトイレに行ったけど、私を待たせないように急いで、全部出し切る前に切り上げちゃったのかなぁ?
いつも優しくて、私の事を実の娘のように大事にしてくれる雅彦おじさんだけど、チノパンに残尿が滲んでいる。
毎年いっぱいお年玉くれるけど、仙台駅の改札の前でチノパンに残尿が滲んでいる。
まだ結婚は諦めてないとボヤいているけど、チノパンに残尿が滲んでいる。
今はおばあちゃんと2人暮らしで、チノパンに残尿が滲んでいる。
稼業の農家を継いでチノパンに残尿が滲んでいる。
私が生まれた年におじいちゃんが他界して、そしてチノパンに残尿が滲んでいる。
仙台駅を出て駐車場に向かう道中、私はチノパンが少しでも早く乾くように日向の道に誘導したけど、雅彦おじさんが日陰を歩きたがるからチノパンは乾かず、残尿が滲んでいる。
雅彦おじさんは真夏のヒマワリよりも明るくて元気な笑顔を私に向けながら、チノパンに残尿が滲んでいた・・・
『今日も世界で誰かが虚しくなっている』