忙しい現代人こそ、ショートショートを読むべき3つの理由
やあやあ、お忙しそうですね!
かくいう僕も、めっちゃ忙しいです。夫婦ともにフルタイム共働き。家事は分担。今年で6歳になる男の子の育児も分担。
自分の時間なんて、ろくにありません。
筋トレとnoteに記事を書く時間は、毎朝4時起きして何とか確保しているような状態です。
現代社会、忙しすぎ。
ゆっくりする時間を作れていないひとも、多いのではないでしょうか。
読書も満足にできない。
仕事のためにビジネス書を読むことすら、速読や拾い読みでかろうじて。
ましてや小説なんて……。
そんな忙しいあなたにこそ、バリバリ働くあなたにこそ、ぜひとも小説を、それも「ショートショート」を読んでいただきたい。
今日は、現代社会を忙しく生きるあなたに、ショートショートを読むべき3つの理由を解説しましょう! ヒア・ウィー・ゴー!!
その1:ショートショートは美意識を鍛えるための最適教材だから。
【1】スキマ時間の使い方
通勤時間、休憩時間、寝る前のひとときなどに生じる、ちょっとしたスキマ時間。
多くの人が何かしらの有効活用をされていることでしょう。
仮眠をとる、漫画やゲームを楽しむ、動画を見る、音楽を聞く、語学や資格のお勉強などなど……。
この時間を美意識のトレーニングに割り当てている方はいらっしゃるでしょうか?
【2】美意識について
美意識とは、全体を直感的に捉える感性や構成力、創造力を意味します。
後に述べるように、現代社会はかつてない複雑性を示しており、従来の分析や論理に基づく意思決定のみではビジネスの舵を取ることが難しくなってきています。
こうした中で、論理に変わって意思決定の基準となるのが、美意識なのです。
本稿では美意識についての細かい解説は省きますので、詳細をお知りになりたい方は、山口周『世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか?』をご参照ください。
【3】美意識の鍛え方
さて、この美意識を鍛える最も有効なエクササイズとして、同書では「文学」を読むことが提唱されています(第7章:どう「美意識」を鍛えるか? より)。
ショートショートは「文学」の一形式です。
日本を代表する詩人・谷川俊太郎はかつてショートショートのことを「インスタント文学」と評しました(都筑道夫『夢幻地獄四十八景』解説より)。
この「インスタント」から受ける印象どおり、ショートショートは1作あたりの文章量が非常に少なく、数分程度で読めてしまうものがほとんどです。
そのため、忙しい毎日の中で美意識を鍛えるのにもってこいの教材なのです。
その2:VUCAに対応するために必要な能力を高めることができるから。
【1】VUCA化する社会
現代社会の特徴として、VUCAという言葉が国際的によく用いられるようになってきました。
【V】不安定(Volatility)で、
【U】不確実(Uncertainty)で、
【C】複雑(Complexity)で、
【A】曖昧(Ambiguity)な状況、という意味合いです。
このVUCA化する社会において、重要となる能力のひとつが問題に対処する力です。それも、すでにある問題を解決するだけでなく、まだ誰も気づいていない問題を発見し、提示していく力が求められるようになってきました。
※VUCAについては、saka. 先生さんが詳細かつとても分かりやすくまとめてくださっているので、ぜひご参照ください。
【2】ショートショートの特徴
ショートショートは、こうした問題に対処する力を高めるための教材としても、うってつけです。
ですが、その理由を説明する前に、ショートショートという小説形式にどのような特徴があるのかを見てみましょう。
ショートショートと他の小説を隔てる特徴は2つあります。
1つは、上でも挙げたように、短さ。
短編小説よりも更に短く、数千文字で終わるものがほとんどです。中には数百文字で終わってしまう作品もあります。
そしてもうひとつが、アイディアストーリーであるということです。
アイディアストーリーというのは、単純に言ってしまうと、「その小説、どこが面白いの?」と聞かれたときに「世界観」とか「展開の壮大さ」とか「キャラクター」とか「心情描写」とかを、ぜーんぶ差し置いて、「アイディア(秀逸な発想)」が答えになるものです。
【3】ショートショートと問題対処能力の関係
問題解決能力≒思考力を神経科学的に分類すると、収束的思考力と拡散的思考力というふたつの思考力に分けることができます。
収束的思考力とは、簡単に言い換えると、論理的思考力のことです。論理を積み重ねて1つの最適解を導き出す力を意味します。
上述したとおり、ショートショートでは短さがひとつの特徴として求められます。そのため、秀逸で面白いアイディアを用いたストーリーを、簡潔かつ論理的に整理された状態で読者に伝えてくれます。
このスマートで分かりやすい文章伝達方式は、収束的思考の良いお手本となることでしょう。
拡散的思考力とは、簡単に言い換えると、発想力のことです。固定概念にとらわれずに自由かつ無数に発想する能力であり、まさにショートショートの面白さの中心となっているものです。
ショートショートに触れることで、認知的な柔軟性のヒントを得ることができます。
目の前の問題を解決するアイディアを考える際はもちろん、まだ誰も気づいていない問題を発見し、社会に提示していくためにも、拡散的思考は今後ますます重要視されていくことでしょう。
ショートショートは思考力の集合体です。面白い小説を読みながら、あなたの問題解決能力・問題発見能力を同時に高めていきましょう。
その3:おもしろいから。
【1】砂の塔は崩れました。
砂塔はそんなに、賢くありません。
この脳みそはヘンテコで偏屈な物語を考えるために極振りされているのです。真面目なことを考えるのに、向いていません。
みなさんに、ショートショートへの興味を持っていただくために、アレやコレやと理屈っぽく述べてきましたが、そろそろ限界です。
ショートショートのどこが素晴らしいかなんて、
そりゃもう、
からに、決まってますよね。
超短時間で読めるのに、知的カタルシスまで得られる。
最高のエンターテインメントだと思います。映画と違って、ファスト化する輩も出てこない。ファスト化する余地がありませんもの。
【2】あなたの読みたい小説、きっとショートショートにありますよ!
ところで、あなたはどんな小説のジャンルが好きですか?
SF?
ミステリー?
時代劇?
ファンタジー?
コメディ?
ホラー?
純文学?
ショートショートは、それら全てを包括しています!!
ショートショートというものは、小説の中でもとびっきりな自由さが売りなのです。だから、ひとりの作者が一冊の本の中で多種多様なジャンルに挑戦することも稀ではありません。
日本ではショートショート=星新一のイメージが強いため、SFに偏っている印象があるかもしれませんが、実際にはそうではありません。
たとえば、星新一と同世代に活躍したショートショートの名手・都筑道夫は、よりミステリー色や時代劇色の強いショートショートの佳品をいくつも生み出しています。
星新一に多大な影響を与えたというショートショートの先駆者・城昌幸の作品には独特の怪奇幻想風味があり、奇妙で不思議な読書体験を味わえます。
純文学では、何といっても山川方夫。芥川賞にも何度も候補として名前が挙がりました。星新一たちの非日常的なアイディアとは一線を画し、ごく日常的な一場面からのアイディアが物語の中心となっています。
山川は若くして交通事故で亡くなったため、星新一と同時期に活躍した作家ながらすでに青空文庫に作品が収載されています。無料でよめますので、気になった方はぜひ。
おすすめは「恐怖の正体」「赤い手帖」などの連作『親しい友人たち』に収載されている品々。
さて、恋愛小説がお好きな方。ごめんなさい。ショートショートは恋愛小説が苦手なのです。なぜかというと、恋愛ではどうしても感情の機微を描かなければならず、アイディアストーリーとの相性が悪いからです。
恋愛小説が読みたい方には、ショートショートよりも掌編小説のほうがオススメです。たとえば川端康成の『掌の小説』には、数ページで終わる短さながら心を動かす恋愛小説がいくつも収載されています。
【3】おわりに。
長々と砂塔の偏愛にお付き合いいただき、誠にありがとうございました。
まあ、
みんな、ショートショートを読みましょう!
そして、もう一歩進んでショートショートを書きましょう!
なんやかんやと小難しく書きましたが、ショートショートはその短さゆえ、小説を書いたことがないひとにも挑戦しやすい分野です。
実際、小説家以外の方のショートショート集もたくさん出版されています。アンパンマンで有名なやなせたかしさんも、ショートショート集を出しているんですよ。
普段からエッセイやお役立ち記事など、アイディア満載の文章を書かれているみなさんなら、絶対に書けます!
ぜひ、挑戦してみてください!
っていうか、読ませてください! 砂塔に!
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