感情の所在 泣くから悲しい?
※この記事は速読の練習用として使えるように、太字部分を読めば1分程度で読めるように書かれています。ぜひやってみてね!
皆さんは悲しいときは泣き、嬉しいときに喜び、腹が立つときに怒るだろう。だが、そうした感情は一体どこから、どうやって生まれるのだろうか?
悲しいから泣くのではなく、泣くから悲しい
それに対して面白い説がある。「悲しいから泣くのではなく、悲しいから泣く」つまりは、心より体の方が優先的だ、という説だ。それはアメリカの心理学者、ウィリアム・ジェームズが唱えた。
そして、同じ時期にオランダの生理学者カール・ランゲも同じことを言いだしたので、これは「ジェームズ=ランゲ説」と呼ばれている。
普通に考えると「そんなことはないだろう」と一蹴されてしまうかもしてない。だが、彼らは人の感情が生まれるためには、まず内臓や筋肉の僅かな収縮が起こる必要がある、と考えたのだ。そしてその変化が脳で知覚されて、それが感情を生み出す源になる。
また、神経心理学者のアントニオ・ダマシオも「ソマティック・マーカー仮説」といったものを唱えた。それは、脳が生み出す感情は、身体との関係が不可欠であるという考えだ。そして「皮膚は実質的に身体最大の内臓である」とした。日本でも解剖学者の三木成夫も「内臓は心の働きと関わりがある」と言っている。最近の腸内環境で性格が変わる、というのもこういった考えから来ているものだ。
詳しく読むと一見なるほど、面白いと思うのだが、もちろん常識的ではない考えから、反対する者も多くいる。
表情と性格
しかし、心理学の実験としてこういったものがある。
2つの実験群をつくり、漫画を読ませる。しかし、片方にはペンをくわえさせ、口を左右に開いてもらう。もう片方には眉間に小さな2つの丸いシールを張って、そのシールがくっつくように眉をしかめてもらう。すると、最初の群では漫画がより面白いと判断され、後の群では漫画がより面白くないと判断されてしまったのだ。
これはペンをくわえている群では顔が疑似的ではあるが笑い顔になり、眉をひそめている群はしかめ面になるからだと考えられている。つまり、表情によって感情が勘違いしてしまうのだ。
つらいときは嘘でも笑っていれば楽しくなる、のようなことを聞いたことがある人も多いだろう。それはきれいごとなどではなく、こういった実験にて証明をされていることなのである。
太陽と怒り
また、怒りの実験もある。
その実験は①太陽に向かってサングラス無しで歩く②太陽に向かってサングラスをかけて歩く③太陽に背を向けてサングラス無しで歩く④太陽に背を向けてサングラスをかけて歩くグループ、といった4つの群に分けて、後にその時点での怒りの得点を測る、といったものだ。
すると、太陽に向かって背を向けていたりサングラスをしている群の怒りの得点は低く、逆に太陽に向かって言ったりサングラスをしていなかった群の怒りの得点は高かった。眩しいほどに怒りの得点が高くなるということだ。
しかし、なぜ眩しいと怒りの得点が高くなってしまうのか?太陽を見た時のことを考えてみてほしい。きっと誰もが目をしかめるだろう。そう、眩しいとしかめっ面になってしまうのだ。だから先にも言った通り、その表情で勘違いを起こし、怒りの得点が高くなってしまうのだ。
始めに書いた‟肌や内臓の動きが感情を決める”といった考えは、こうした実験からも支持ができるだろう。やはり我々は、悲しいから泣いているのではなく、泣くから悲しくなっているのかもしれない。
―――――――――――――――――
参考文献
「おどろきの心理学~人生を成功に導く「無意識を整える」技術~」光文社新書 著 妹尾武治
「子供の「脳」は肌にある」光文社新書(2004)著 山口創