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機械音の正体と認識の話。

キッチンから謎の音がするプチ事件が発生した。
「チッチッチッ…」と鳴る。規則的に鳴る。
キッチンに近づくとピタリ止まり、離れるとまた鳴り始める。「?」。

冷蔵庫を揺すっても、レンジのコンセントを外しても、棚を揺らしても、一瞬は止まるのに、またすぐ「チッチッチッ…」と鳴る。「?」。

どうやら火災報知器が電池切れになると、音が鳴るものもあるらしい。「犯人はこれか!」と思い管理会社に電話し一安心。

次の日、ゴミ出しの日に当たる曜日。
ゴミ袋をゴミ箱から外し、キッチンの床に置く。ちょっと離れた時、キッチンから「チッチッチッ…」。「?」。

ゴミ袋を玄関に移動させると、玄関から「チッチッチッ…」。「…!」。


音の正体は虫だった。「カネタタキ」という小さな虫。存在も、鳴き声も初めて知った虫だった。自分からゴミ袋に入るとは…、仕方ないから探して出してやった(本当に大変だった)。謎の機械音事件は無事解決した。

その日を境に、カネタタキの声が聞こえるようになった。どこを歩いていても、「チッチッチッ…」と鳴いている。うるさいくらいに鳴いている。外に出るとほぼ確実に聞こえる。

今までも鳴いていたんだろうか。恐らく今までもやかましく、でも可愛らしい声で鳴いていたんだろう。


認識の面白いところは、意識をしないと情報を受け取れないところ。「これは○○」「この匂いは△△」「この音は□□」、わかっていないと、無いことと同じになるところ。

大学2年の秋、帰り道に初めて金木犀の香りを知った時もそうだった。何となく秋を感じる匂いの正体が、まさか花だったとは。
それから金木犀はお気に入りの花の一つになった。


今私が見ている窓の外、嗅いでいる匂い、聞いている音にはどんな知らないが詰まっているんだろう。少しワクワクする。

これから先も少しずつ、知らないあれこれが見えて、聞こえて、香ってきて、感じられるようになるのかも知れない。すごくワクワクする。

認識って、やっぱり面白い。

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