イタリアの会社が社食が大切にするわけ
Vol.084.
何軒かイタリアの会社を訪問していると、ランチを一緒にする機会がある。
たいていはおもてなしでレストランへ連れて行かれることが多いのだが、社食に自信がある会社では、社食に通される。
朝8時30分から会議する会社
イタリアのクラフトビールの父といういわれを持つピエモンテのバラデンビール。
日本では三井食品から輸入販売されている。
私は彼らのビールのブランドアンバッサダーをしている。
つまり、ブランドの日本窓口担当である。
なので、トリノにいる時は、ピオッツォ村まで毎度と打ち合わせなどで伺うことが多い。
たいてい朝8時半から会議をする会社だ。
朝は皆コーヒーマシーンに群がり、そこにたいてい甘いクッキーや社食で作られるトルタなどが置いてあるので、適当に朝食を済ませる人がいる。
私もバラデンのタルトは大好きなので、朝食を食べてきたとはいえど食べてしまう。
そしてお昼にもまたお腹が空く。
メール作業などひと段落してから、同僚のファビオのところへ「そろそろお腹が空いてきたね」といけば、「よし、社食へ行くぞ」と車に乗り込む。
最近、ピオッツォ村にあるバールを自社グループにしたので、みなそこまで車に乗って食べに行く。
丘の麓から頂上へ上がる距離だ。
バラデンの社食は野菜が豊富
一見バールだが、バラデンのスタッフからすれば社食。
実際に一般の人も利用できるバールだが、お昼時間はスタッフもいただける。
バラデンは自社の社食にこだわっており、専用シェフも何人か雇用している。
ビールだけを販売するのではなく、ビールを通じて美味しい食を提案したい会社だ。
なのでお客様向けのレストランもあれば、社員用の社食もある。
まずサラダバーがあり、そこでサラダやパンを好きにとり、着席後に本日のメニューを聞く。
プリモのパスタメニューとセコンドの魚か肉料理が提供される。
両方食べももちろん良いが、イタリアではランチ時はどちらかを選ぶことの方が多いと思われる。
ビール会社なので、飲み物も水だけでなくビールを飲んでも可能。
ただ午後の仕事があることを忘れないためにも、お昼にビールを飲むのは私かテオくらいだ。
バラデンの母ノラが作るバラデンの社食兼バールメニュー
バラデンの社食の料理長は、日本でも販売されているビールの名前でもお馴染みのノラが切り盛りする。バラデンビールの母であると言っても過言ではない。
その理由は、日本でもご支持いただいているイザックビールのイザックのお母さんなのだ。
なので、母の味ではないが、栄養バランスや手作りを大事にして提供している。
先日日本からのお客様が早朝に疲れて到着したものの、ノラのご飯を食べれば、びっくりするくらい元気になり感動してくれたり。
この日はお客様来訪ということもあり、お昼から結構飲んだという日。
最後のヘーゼルナッツのトルタはご馳走クラスだと思うが、普通に提供してくる。
時にオープンガーデンの総料理長のクリスチャンが作ることもあるが、とにかく社食であろうと料理の手を抜くことがないのがバラデンスタイル。
イタリアはこだわりの社食を持つ会社が多い
以前とある大手パスタメーカー訪れた時、ここでも社食に通された。
やはり食のメーカーだけあり、自慢の社食らしい。
社食の壁には、地中海式ダイエットの理念とか、オリーブオイルが体に言い訳や、魚の栄養素などの食の知識が一面に描かれていて印象的なものだった。
食べて学ぶ。学んで食べるというのはイタリア人は好きなのであろう。
バラデンもそうだが、知らないで食べるのと知ってから食べるのでは味わいが違うという。
これはイタリアの食材ショップイータリーのコンセプトもそうで、「食べる、買う、学ぶ」というものがある。
つまり、食にとっては学ぶという過程があることが、より一層消費を楽しくするのだとする。
このコンセプトについては、また後日にもゆっくりと書いていきたい点でもある。
美味しい料理を提供する社食から生まれる絆
ただ今は、イタリアの会社では自慢の社食が少なくないのは、イタリア人が食の時間を大切にしているということだ。
社食は個食を作らず、部署の壁も設けず、美味しいものをみんなで分かち合えることが絆を育む。
これはバラデンのオーナー醸造家テオの考え方である。
でもバラデンに限らず、社食を通じて輪を持つことを大事にしている会社はイタリアでは少なくない。
そんな私も毎度社食メニューをいただくのが楽しみなのであった。