マガジンのカバー画像

日々の機微

7
誰の役にも立たないが少し可笑しい、日々出会ったものと思ってしまったことを綴るエッセイ。
運営しているクリエイター

記事一覧

その職業を引退するとき、どんな表現で伝えるか。

その職業を引退するとき、どんな表現で伝えるか。

おばんです。
仙台でカメラマンをやっているイタリーです。

たまに通る場所を歩いていると、古くからある時計屋が閉店していた。

営業しているときは窓に「電池交換」の垂れ幕や、中に時計がいくつも見えたので、てっきり時計屋と思いこんでいた。宝石も扱っていたらしい。

「閉店のお知らせ」に記した言葉。
"老兵は去るべし"という覚悟と潔さ。
時計や宝石を扱う上で仕事道具の象徴であった"ピンセット"を置くこ

もっとみる
見つけた瞬間に思ってしまったこと

見つけた瞬間に思ってしまったこと

≪日々の機微 vol.6≫

あ、肉離れだ

一緒にいた友人にそう呟き、私は肉離れの元へ向かっていった。
友人が乾いた笑いをしたような気がしたが、興奮を抑えられぬまま衝動的にこの1枚を残した。

見つけた瞬間に言葉も同時に出てくることがある。

気づきとも言えるし、ツッコミとも言えるかもしれない。
世界にこんな面白い状況が文字通り転がっているだけでその日一日何とも言えぬ幸福感に包まれることがある。

もっとみる
「反り」の代表例

「反り」の代表例

≪日々の機微 vol.5≫

未だに「反り」を見ると真っ先に小田和正のあのジャケット写真を思い浮かべる。
私の世代的にはイナバウワーがマスの「反り」だろうが、小田和正まで遡ってしまうのだ。

そんなことを思いながら、では現代において最新の「反り」はなんだろうか。
小田和正は1991年、荒川静香が2006年。
15年に一度のペースで世間に知れ渡る反りが生まれているとすれば、すでに最新の反りがアップデ

もっとみる
覗きたくなる好奇心

覗きたくなる好奇心

≪日々の機微 vol.4≫

いて、何になるわけでもないが好奇心は止められない。

たいがいは名前もわからない小魚の群れ。ちょっと大きい魚がいると、ゴミ箱にゴミを一発で入れられた時と同じくらいの小さな「おー」を唱え、小さなフグやクラゲといった普段見ない魚を見つけるとウォーリーを見つけたときと同じ「いた!」という気持ちを抱くが、ただそれだけである。

さて、この一枚のように私はカラーコーン(ロードコ

もっとみる
幸せは勝手にこぼれ落ち、そして勝手に…

幸せは勝手にこぼれ落ち、そして勝手に…

≪日々の機微 vol.3≫

"幸"せがない。
たまたま"幸"が抜け落ちたことは不幸とも言えるが、そんな状況に出会った私にとっては物凄く幸運なことだった。

当事者にとっては悲劇だが、全ての状況を俯瞰して観ている観客にとっては喜劇になることはコメディにおいて当たり前に起こっている事象だが、まさにこの状況も引いた目線で見ると、ふふふと思わずにはいられない喜劇的な瞬間であった。

もちろん、当事者とし

もっとみる
カメラを持ち歩くことの喜び

カメラを持ち歩くことの喜び

≪日々の機微 vol.2≫

カメラを持って歩くと、それまで意識してなかったものを見るようになったり、未知な景色との出会いがある。

カメラを持ち歩いて「いつでも撮れるぞ!」という状態を作っておくと、宝探しをするように周囲にあるものに目を凝らし敏感に探し回る。逆にカメラを持っていないときは意識が向かないときすら、いや、時に敢えて意識を向けずに「今は撮れないからどうか出会いませんように!」と念じなが

もっとみる
取り残されたカルマ

取り残されたカルマ

≪日々の機微 vol.1≫

この世に取り残された"業"はなんの因果であろうか。

全ての行いは常に自分へ返ってくるのだと、こちらに問いかけてくるようだ。

その点では路上に散見する禁止看板よりもたった一文字で考えさせられる潔さがある。そんなことを思う私が何かに取り憑かれているかもしれないが、一旦棚に上げておこう。

この状況の種明かしをすると、ここは元々〇〇工業だったと思われる跡地だ。他に看板は

もっとみる