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小説『鬼の伝説』

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板倉雷夏に憑いているハイヤーセルフの1人である「とある鬼」の歴史を辿ります。 この鬼は、中国の伝説にも、古事記にも、日本書紀にも残っていない鬼で、大物主という神様の神使をしていま…
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小説『鬼の伝説』前書

小説『鬼の伝説』前書

つい1年ほど前から、「ハイヤーセルフ」だとか「アカシックレコード」だとかいうものが視えるようになりました。

ものすごく雑に表現すると。他者の前世や、守護霊的なものが視える人になったということになります。

そうして、「チャネリング」という仕事をしはじめました。

他者の過去生の経緯、過去生を含む、今世の人生相談(ライフ・リーディング)をする仕事だと言えます。

仕事以外のプライベートでも、「どう

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1.目覚め

1.目覚め

26歳の時、初めて視た他人のハイヤーセルフは「アメリカンバッファロー」。

大阪のとある喫茶店で、整体師の男性と会う約束をしていた。

私はヨガをする人間であり、彼は体を扱うことを仕事にしている人間で、お互いに音楽をしていた。
互いの文化圏に興味を持ち、会うことになった。

ホットカフェオレに生クリームが乗っていることを喜び、飲み物をのんで一息ついたところで、彼はおもむろに「雷夏さんは、溝男って知

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2.雷の神様

2.雷の神様

溝男が「溝」と密約状態にあるように、私自身にも、交わすべき「密約」がある。

一体、それは何と交わされるべきものなのか。



それを明らかにするため、とあるエステティシャンに会うことになる。

彼女は「体に触れると、その人に憑いているものが視える」という噂だった。

彼女に会うため、1時間ほどかけて電車で山手に登った。

山あいの駅に到着してバスロータリーへ出ると、7人乗りの黒いバンが止まって

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3.鬼からの示唆

3.鬼からの示唆

エステティシャンに「雷神が憑いている」と言われてから数週間経った。

ある日、急に、ピアノが喋るようになった。

「そこの音、強すぎる」
「もっとお姫様をキャッチするように弾いてくれないと困る!」
「あ〜だめだめ!このフレーズの深いところはそこじゃない」

弾くのをやめると、お喋りは止まる。

大事なライブを控えていたため、練習をしすぎておかしくなって、楽器の声が聴こえるようになってしまったのだろ

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4.島根県へ発つ

4.島根県へ発つ

私は島根県が大好きだ。

大して旅行が好きなわけでもないのに、4度も訪れている。
出雲〜石見銀山で、自分の音楽作品のプロモーションビデオまで撮った。

そのとき、不思議な縁があった。

能の小面を持って海辺を歩いていると、浜にいた男性が「それは京都の能面だね。島根県では京都の能とは違う面を使って、神楽を舞うんだよ。」と話しかけてきた。

私がアーティストであることを知った彼は、「石見神楽の面作家の

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5.妖怪の故郷

5.妖怪の故郷

石見神楽を観る。
そう決めて泊まることにした温泉街に到着した。

到着してすぐ「街に見られている」と感じた。
私と、旅館からきた運転手以外に人はいないのに、じろじろと舐めるような視線を感じるのだ。

旅館に到着して、畳の上に裸足で立つと、何かが私の体の中に入ってくる。
ぞわぞわと鳥肌が立つ。

「足の裏は危険!全部入る!」

私の中にいる鬼が叫ぶ。

すべての妖怪たちは、人間に興味津々である。

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