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【文字起こし】第3回「~公立学校の校長先生のための~やさしい!勤務時間管理講座」(「上限ガイドラインと変形労働時間制~中教審答申を受けて~」)

この記事は、文部科学省が2019年3月から4月にかけて、3回に分けてYoutubeにアップした「~公立学校の校長先生のための~やさしい!勤務時間管理講座」を文字に起こしたものです。今回は第3回の動画を文字に起こしました。

動画の資料はこちらです↓↓↓

【Youtubeの動画説明】
学校における働き方改革を推進するため、公立学校の先生方の勤務時間管理に関する基本的な関係法令や文部科学省が1月に策定した「公立学校の勤務時間の上限に関するガイドライン」等の内容について、全3回にわたって文部科学省担当職員が分かりやすく解説する動画を制作しました。 各種研修等も活用いただくことなどを通じて、学校の管理職の皆様に是非ご覧いただければと思います。 第3回は「上限ガイドラインと変形労働時間制~中教審答申を受けて~」をテーマに、文部科学省が策定した「公立学校の教師の勤務時間の上限に関するガイドライン」や中央教育審議会の答申で公立学校の先生方への導入が提言されている一年単位の変形労働時間制の仕組みについて解説します。

【0:00~】導入

第3回のタイトルはこちらです。「上限ガイドラインと変形労働時間制~中教審答申を受けて~」となります。去る1月25日、中央教育審議会から学校における働き方改革に関する答申が、柴山文部科学大臣に手渡されました。本日はこの答申に関連する勤務時間管理に関する二つの内容、これをご説明していきたいと思います。
さて、民間企業などでは、昨年の「働き方改革推進法」で労働時間をしっかりと、全て把握しなければならなくなった上、残業時間の上限が罰則付きで設定されました。こうした世の中の大きな流れに加え、社会全体として労働力人口の減少が見込まれています。人材の獲得競争が起きているのです。そうした中、このような社会の動きに反応が遅れ、学校では勤務時間の管理がなされていない、働き方改革が進んでいない、もし、そういった状況のままなら、教師を志す若者もいなくなってしまうかもしれません。

【1:53~】上限ガイドライン

今回お話しする1つ目のテーマ「上限ガイドライン」は、第1回と第2回でもお話いたしました公立学校の教育職員の勤務時間制度の中で、勤務時間の管理の必要性、時間外勤務の上限の目安をお示しするものです。
さっそく、その中身に入っていきたいと思いますが、この上限ガイドライン、1月25日に教育委員会の皆様を通じて学校の皆様へお送りいたしました。お手元には届いているでしょうか?このガイドラインの中で鍵となる、ぜひお伝えしたい点をこれからお話しします。

【2:41~】「在校等時間」

1つ目は、「在校等時間」の考え方です。「在校等時間」とは、今回の上限ガイドラインにおいて時間把握の対象となる時間のことです。この在校等時間、まず先生たちが出勤から退勤まで学校にいる時間、これは「在校時間」といっています。学校にいるという「在校時間」ですので、条例などで決められている勤務時間、つまり7時間45分の勤務時間の前と後、朝の時間も入ってきます。その7時間45分の勤務時間の前後に、「超勤4項目」以外の業務、例えば授業準備や部活動、学級運営など、こうした業務を行っている時間も入ってくることになります。この在校時間に学校以外の場所で仕事をしている時間、例えば研修センターや研究指定校で行われている研修に参加している時間、土曜日や日曜日に行われる部活動の大会に引率している時間、こうした時間を加えた時間が、把握の対象となります。ただしこの時間から、先生たちが学校の仕事を行っているとはいえない時間、つまり自己研鑽の時間など、学校の業務以外の時間、読書をしたり新聞を読んだり、夕食をとったりしている時間、そして休憩時間、こうした時間は在校等時間から除くことになります。このスライドにあるのが、今ご説明したことを説明した「在校等時間」です。仕事を自宅に持ち帰って行うような時間、いわゆる持ち帰りの時間については、ここには含まれません。繰り返しとなりますが、ガイドラインにおいて、この在校等時間が管理職の皆さんが把握することが求められる時間となります。

【5:13~】時間外勤務の上限の目安時間

ガイドラインの二つ目のポイントに移ります。上限の目安時間です。本日冒頭にお話しした、「働き方改革推進法」の中で改正された労働基準法においては、時間外勤務の上限、つまり民間企業などで皆さんの、上限規制が規定されています。この例を参考にして、この上限ガイドラインの中でも、目安時間をお示ししました。この上限の目安時間の対象となる時間です。これは、今お話しした「在校等時間」から次の時間を引きます。すなわち、条例で決められている1日の勤務時間の勤務日数分7時間45分✕勤務日数、この時間を「在校等時間」から引いた時間、簡単に申し上げれば、いわゆる時間外の勤務の時間の合計、この時間が上限の目安の対象となります。
上限の目安時間は、1ヶ月で45時間以内1年間で360時間以内となります。臨時的な特別の事情により、勤務しなくてはならないことがあった場合には、この制限を1ヶ月100時間1年間720時間以内などとしています。この臨時的な特別の事情、一概に予め言うことは難しいのですが、例えばいじめ等の指導上の重大事案が発生してしまった場合、学校事故が生じてしまいそれへの対応を求められる場合、こういった場合などが考えられます。

【7:19~】ガイドラインの留意事項①

ガイドラインの留意事項です。こうした在校等時間の把握、限られた管理職の皆さんだけで、所属の先生方全員の毎日の時間把握をするのは、本当に大変になってしまうと思います。やはりここは、タイムカードやパソコンのオンオフなどで客観的に把握できる仕組みにしておくことが大切です。もし、こうした仕組みがまだ整っていない学校がありましたら、校長先生はぜひ、教育委員会にも相談して、こうした仕組みを整えるようにお願いしてください。これをご覧の教育委員会の皆さん、財政面については地方財政措置を活用することもできます。ぜひご協力をお願いいたします。

【8:18~】ガイドラインの留意事項②

次の留意点です。当然ですが、上限の目安時間を守ることだけが目的化し、嘘の時間が残るようではだめです。当たり前ですね。これ以外にも留意点についてはガイドラインの本体に書かれていますので、是非ご覧ください。
ガイドラインの運用に関しては、文部科学省からQ&Aを出す予定ですので、そちらも併せてご参照ください。このガイドラインのお話で最後、中央教育審議会の答申では、このガイドラインの今後の扱いについて、次のような提言がなされています。どのような提言かといいますと、本ガイドラインの実効性を高めるために、文部科学省はその根拠を法令上規定するなどの工夫を図り、学校現場で確実に遵守されるように取り組むべき、こういう提言です。この提言を受けまして、今は文部科学省からのガイドライン、文部科学省が作ったガイドライン、というものなのですが、今後、このガイドラインを法律に根拠を持つ「指針」、こういったようなものにすることができないか、現在検討しているところです。

【9:45~】「変形労働時間制」

次に大きなテーマの2つ目です。1年単位の「変形労働時間制」についてです。労働基準法の中では、労働時間を一定期間の中で配分することができる「変形労働時間制」について、いくつかのパターンが定められています。そのうち、1か月単位の変形労働時間制1年単位の変形労働時間制、さらにそうした制度と公立学校の先生方の勤務時間制度との関係について、これからお話ししたいと思います。

【10:29~】「1か月単位の変形労働時間制」

まず最初は「1か月単位の変形労働時間制」と呼ばれるものです。この、1か月単位の変形労働時間制、つまり1か月以内の期間を平均して1週間当たり労働時間が40時間以内となるように、勤務日や勤務日ごとの勤務時間を変形することができる仕組みです。これを活用すれば、特定の日に8時間を超えて勤務したり、特定の週に40時間を超えて勤務したりすることが可能になります。この制度、実はすでに公立学校の先生方にも適用が可能となっています。地方公務員全体にも適用が可能となっています。この一日の勤務時間を延ばせる仕組み、皆さん思い当たりませんか? 多くの自治体では、条例や規則に根拠づけた上で、修学旅行など宿泊を伴う学校行事の祭に、一日の勤務時間を普段より長くできるようにしている例が多いようです。この「1か月単位の変形労働時間制」、その留意点として、法令の仕組みの中には、妊産婦や育児介護を行う者への配慮、こういったものが必要と書かれています。

【12:01~】「1年単位の変形労働時間制」①

次は、「1年単位の変形労働時間制」です。これは公立学校の教育職員の皆さんや地方公務員の皆さんにはまだ適用されていない制度です。1回目の回でお話ししましたが、地方公務員法の第58条の3項で1年単位の変形労働時間制については地方公務員への適用が除外されています。この「1年単位の変形労働時間制」を公立学校の先生方に適用するようにすべき、こういった提言を中教審から受けています。もちろん、適用できるようにするためには法律改正が必要となりますので、これから検討をしっかりと進める話ではあるのですが、今回はそもそもこの制度がどのようなものであるのか。そしてなぜ中央教育審議会は公立学校の先生方に適用すべきと提言したのか。そのあたりの点をご一緒に確認していきたいと思います。

まず、労働基準法に定める制度、これを確認していきましょう。この制度の趣旨です。「1年単位の変形労働時間制」は、休日の増加による労働者のゆとりの創造、時間外・休日労働の減少による総労働時間の短縮を実現するため、1箇月を超え1年以内の期間を平均して1週間当たりの労働時間が40時間を超えないことを条件に、業務の繁閑に応じ労働時間を配分を認める制度です。この点、中央教育審議会の答申では、先生方の勤務の実態について、学校には夏休みなどの児童生徒の長期休業期間がある一方で、先生の仕事は、学期末・学年末、学校行事や部活の大会など、とても忙しい時期もあり、こうした勤務の一年間の様子も捉えて必要な取り組みを検討することも重要な観点で、学校の先生たちに「1年単位の変形労働時間制」を適用するようにすべきだとされているのです。

【14:37~】「1年単位の変形労働時間制」②

もう少し、現在の制度を見ていくことにしましょう。この制度を適用して勤務する労働者の範囲、期間、こうしたものをまず労使協定で決めます。労働者の範囲とここにありますね。例えばある民間企業で「1年単位の変形労働時間制」を導入する、こう決めた場合であっても、そこの社員みんなの労働時間が変形されるわけではありません。
労働日数の限度は1年280日まで、労働時間の限度は1日につき10時間まで、1週間につき52時間まで。ただし、対象期間が3か月を超える場合には、48時間を超える週はこの3か月で3回まで、こういった規定もあります。

続けます。連続して労働させる日数の限度は6日まで。育児介護を行う方や妊産婦の方、こうした方にも配慮が必要です。繰り返しになりますが、今ご説明した1年単位の変形労働時間制、これは現在の制度では公立学校の先生方さらに言えば地方公務員の皆様にも適用はされておりません。今後、適用に向けて検討を進める際には、公務員制度の中でそれに応じた仕組みにしていく必要があると考えています。例えば、先ほど見ていただいたとおり、中央教育審議会の答申では、地方公共団体の条例やそれに基づく規則等に基づき、とすべき、こう書かれています。

【16:54~】「1年単位の変形労働時間制」③

ただし、今後制度化されたとしても、実際の学校で、この制度が適用されるに当たり、中教審ではスライドのような提言をしています。
1つ目。長期休業期間中の業務量を一層縮減することが前提である。当然ですね。この制度は、忙しい時期と、時間があるときの時期、そのバランスを取る制度である以上、夏休みも忙しい、こういう状況のままでは、導入はできません。
次に、もちろん育児や介護の事情などで今の勤務時間ですぐに帰らなくてはいけないような先生方には、この制度を適用しない選択ができるようにしなくてはなりません。そして何より、今の学期中の勤務が現在より長くなるような形で導入するというのは本末転倒です。以上のような、答申に書かれていることにも留意しながら、自治体のご判断によりこの制度が活用できるように今後しっかりと文部科学省で検討をしていきたいと考えています。以上、現在の労働基準法上の制度の概要と今回の中教審答申で提言された内容についてご紹介いたしました。


【18:08~】勤務時間制度に関する中長期的な課題

また、勤務時間制度に関しましては、中教審では次のような提言もなされています。ご紹介しますと、中長期的な検討事項として、

「働き方改革推進法」が民間企業においては勤務時間の上限を法定し、罰則によりこれを遵守させる仕組みにするなど、労働法制の大きな転換を図ったことを踏まえると、中長期的な課題として、労働法制のみならず、社会の構造的な変化における教師の専門性の在り方や公務員法制における今後の動向等を踏まえつつ、公立学校の教師に関する労働環境について、給特法や教育公務員特例法、地方教育行政の組織及び運営に関する法律といった法制的な枠組みを含め、必要に応じて検討を重ねることも必要である。

こういった提言がなされています。

【19:29~】まとめ

文部科学省では、以上のような提言も踏まえまして、引き続き取り組んでまいりたいと考えております。さて、全部で3回に渡ってお話ししてまいりました「~公立学校の校長先生のための~やさしい!勤務時間管理講座」、いかがでしたでしょうか? これからも文部科学省では省をあげて、この働き方改革に取り組んでまいります。もっと知りたい方、ぜひホームページにアクセスしてみてください。これまで3回、ご覧いただきまして、本当にありがとうございました。働き方改革は子どものためです。またどこかでお会いしましょう。ありがとうございました。

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