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ソーシャルシネマ

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映画を通して社会について考えられる映画(=ソーシャルシネマ)を紹介する記事を集めています。
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#ドキュメンタリー映画

芸術はなぜ大切か、ジョン・カリーとヨーゼフ・ボイスのドキュメンタリー映画から考える

芸術はなぜ大切か、ジョン・カリーとヨーゼフ・ボイスのドキュメンタリー映画から考える

今回のコロナ禍の前からですが、芸術あるいはアートの大切さについて考えています。アートは苦難のときに人や社会がすがるものであったり、新しいものを生み出すきっかけになるものです。

UPLINK60以上見放題でも、アート系の作品が結構あり、その一つ一つでそんな事を考えてきましたが、残り少なくなったところで観た2本でも改めてそんな事を考えました。50本目と51本目です。

面白かったのは『氷上の王、ジョ

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”食の安全”を探求するジャン=ポール・ジョー監督3作品から見えてくる繰り返すことの大切さ

”食の安全”を探求するジャン=ポール・ジョー監督3作品から見えてくる繰り返すことの大切さ

UPLINK60本見放題全部見ると言っていたのですが、6月に入って #BlackLivesMatter について考えざるを得ず、UPLINKの方は中断という形になってしまいました。#BlackLivesMatter の方もまだ道半ばで、探求しなければいけないのですが、UPLINK見放題の期限が切れてしまうので、とりあえず今は見まくっています。
#BlackLivesMatter についてはこちら

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非常時こそ女性が強い!『ラジオ・コバニ』と『ガザの美容室』

非常時こそ女性が強い!『ラジオ・コバニ』と『ガザの美容室』

UPLINK60本全部見ているわけですが、いろいろなところに書いているせいで、6本目の『ラジオ・コバニ』をこちらに載せるのを忘れていたのですが、9本目に見た『ガザの美容室』と共通して女性の強さを描いている気がしたので、あわせて紹介します。

『ラジオ・コバニ』は、絶望の中でも人を信じて希望がもてる方へと歩み始める若い情勢の姿を追ったドキュメンタリーで勇気づけられる作品でした。

もう1本、9本目の

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『すべての政府は嘘をつく』のだから戦うしかない。映画から独立メディアの大切さを学ぶ。

『すべての政府は嘘をつく』のだから戦うしかない。映画から独立メディアの大切さを学ぶ。

UPLINKの見放題60本全部見る企画が続いていますが、今回はその中から以前に見た作品『すべての政府は嘘をつく』を。タイミング的にあれですが、別に今の日本の政府が嘘をついているという皮肉ではありません。

そもそも、この映画は政治についてというよりはジャーナリズムについての映画で、市民がどうやって政治を監視するのかについて考えさせられる作品です。

この後に紹介する予定の『ラッカは静かに虐殺されて

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いま自分は本当に自由か。50年前から投げかけられたニーナ・シモンの問いに答える。-『ニーナ・シモン 魂の歌』

いま自分は本当に自由か。50年前から投げかけられたニーナ・シモンの問いに答える。-『ニーナ・シモン 魂の歌』

Netflixのドキュメンタリーに面白いものがあるとはたびたび書いていますが、今回は音楽ものを見ようと、1950年代から活躍した黒人女性ミュージシャン、ニーナ・シモンの生涯を描いた『ニーナ・シモン 魂の歌』を見ました。

映画の内容の前にまずはこの曲を聞いてほしい。できれば歌詞の意味を考えながら。

この曲「Ain’t Got No(I Got Life)」は映画では最後の方にライブ映像で流される

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『i-新聞記者ドキュメント-』について考えていたら、日本の民主主義について考えることになった話。

『i-新聞記者ドキュメント-』について考えていたら、日本の民主主義について考えることになった話。

映画『i-新聞記者ドキュメント-』が公開されました。個人的に今年のナンバー1かなと思っているのでぜひ見に行ってほしいです。(画像クレジット:© 2019「i-新聞記者ドキュメント-」製作委員会)

そんな思いもあって、green.jpにこの映画についての記事を書かせてもらいまして、この映画についてはこちらの記事を読んでもらえれば、わかってもらえると思います。

そして、この記事を書くために、フィク

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ドキュメンタリーは登場人物が少ないほど面白い?『イカロス』と『本当の僕を教えて』

ドキュメンタリーは登場人物が少ないほど面白い?『イカロス』と『本当の僕を教えて』

Netflix(ネットフリックス)のドキュメンタリーをいろいろ見ながらあーだこーだと考える中で、オリジナル作品で面白そうなものには「スリル」を感じられると気づきました。

そこで、スリリングな作品をピックアップしてみたのですが、

そのうちから2本『イカロス』と『本当の僕を教えて』を見てみました。

まず、どちらもすごく面白いです。最後までどうなるのか展開が読めず、ぐんぐんプロットに引っ張られてい

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知られざるブラジルの民主主義の栄光と破壊。『ブラジル-消えゆく民主主義-』から学ぶ権力との戦い方。

知られざるブラジルの民主主義の栄光と破壊。『ブラジル-消えゆく民主主義-』から学ぶ権力との戦い方。

(この記事は最後まで無料で読めます)

先日は『グレート・ハック』について書きましたが、その勢いで「映画:民主主義」という有料マガジンを作ったので、引き続きNetflixで民主主義について考える材料になりそうな作品を探してみました。

その中に、その名もズバリ『ブラジル-消えゆく民主主義-』という作品がありましたので、今回はそちらを取り上げます。

邦題を見る限りあまり面白くなさそうですが、邦題が

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【有料マガジン用】エドワード・スノーデンと「共謀罪」、プライバシーと民主主義ー『シチズンフォー スノーデンの暴露』

【有料マガジン用】エドワード・スノーデンと「共謀罪」、プライバシーと民主主義ー『シチズンフォー スノーデンの暴露』

Cover photo ©Praxis Films, ©Laura Poitras

せっかく有料マガジンの実験を始めたので、『グレート・ハック』に関連するような映画はないかといろいろ探していたら、2年前に『シチズンフォー スノーデンの暴露』で同じようなことを考えていたのを見つけました。

2年前の記事をそのまま読みたい方はこちらでどうぞ。

少しだけ校正したバージョンを読みたい方は、ご購入いただ

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気候行動サミットのグレタさんの演説を見て、何も変わっていないことを嘆くのではなく、「同じことを表現を変えて言い続けることの大切さ」を説いたセヴァン・スズキさんを思い出した。

気候行動サミットのグレタさんの演説を見て、何も変わっていないことを嘆くのではなく、「同じことを表現を変えて言い続けることの大切さ」を説いたセヴァン・スズキさんを思い出した。

2019年9月23日、国連・気候行動サミットでスウェーデンの16歳の環境活動家グレタ・トゥーンベリさんの演説が話題になりました。その内容は素晴らしく、先進国に暮らす大人は絶対に聞かなくてはいけない言葉であることは間違いありません。

私にはこの出来事に既視感がありました。あまり言及されていないのが不思議なのですが、1992年に地球環境サミットで12歳のセヴァン・スズキさんが行った「伝説の演説」を思

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香港の民主化運動について知りたい

香港の民主化運動について知りたい

今も続く、香港の民主化デモ、民主化を訴える人たちの味方をしたいのは山々ですが、空港を占拠して旅行者に迷惑をかけたり、賛否を呼んでしまっているのも確かです。

しかし、よく考えると香港でなぜこのようなことが起きているか実はよく知らない。そんな時にたまたま、Netflix(のお試し無料)で出会ったのが『ジョシュア 大国に抗った少年』というドキュメンタリーでした。

今も民主化のリーダーとして活躍するジ

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気候変動は「肉食」のせい?環境保護のタブーに切り込むドキュメンタリー『Cowspiracy』を賛同できなくても観るべき理由

気候変動は「肉食」のせい?環境保護のタブーに切り込むドキュメンタリー『Cowspiracy』を賛同できなくても観るべき理由

私が映画、特にドキュメンタリー映画を見ることの理由の一つに、声なき人の声を聞くことがあります。そのことについては別のところで少し書きました。

そして、声を聞くという意味では声が届かない人たちはもちろんですが、日常ではあまり接することのない人々についても映画を通して聞くことが重要だと考えています。

日常生活の中で受け取る情報は、自分の耳に心地よいものに偏りがちです。それが昨今の殺伐とした世界の一

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ビーガン布教映画『健康って何?』を見て、人はなぜ石器時代から肉を食べてきたのか考えた。

ビーガン布教映画『健康って何?』を見て、人はなぜ石器時代から肉を食べてきたのか考えた。

畜産が地球環境を破壊することから完全菜食主義(ビーガン)を勧めたドキュメンタリー映画『Cowspiracy:サステナビリティ(持続可能性)の秘密』、完全に賛同はできないにしても、地球の危機を救うための考え方の一つとして知るべきことを教えてくれた作品でした。

その作品を作った キップ・アンデルセンとキーガン・クーンのコンビが続編として制作したのが『健康って何?』です。こちらは動物性の食品を取ること

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