日本映画「余命10年」(&原作小説)
主演:小松菜奈、坂口健太郎、山田裕貴、奈緒
2022年 124分
いしゃーしゃ的オススメ度:★★★☆☆
(写真=ワーナーブラザーズ公式サイトより)
年末年始のデジタルデトックス中(ドラマ禁欲生活ともいう)、本を数冊読むことができた。パーっと数冊選んでKindleに入れていったのだが、映画が出ていて気になっていたので、本作の原作も追加。あっという間に読み終わり、家に戻ってから映画も観てみた。
余命を知ってしまった二十代女性の生き方とは
余命が10年と知ったらどうするか。そんな主人公の葛藤と希望、諦めと夢、揺れ動く内心を覗いて見ることができるストーリーであった。
ちょっとあの映画と被りすぎ
あらすじ読むとわかる人はわかったと思うが、そう、本作はある意味Netflixで公開されている『桜のような僕の恋人』にとても似ている。これは出た時にすぐ視聴したが(記事は書いていない)、永山絢斗くん目的で観たものの、もう号泣であった。
今調べたら、映画館とサブスク配信と形態は異なるものの、ほぼほぼ同じ時期に出た両作品だが、ストーリーが似過ぎている(現在は本作もサブスク配信)。
もちろん病気は違うし、物語を語る主体が違うのだが、色々と重なってしまう部分があり、本作の桜満開のシーンはちょっとあまりにも被り過ぎた感があった。『桜の。。』の原作は未読なので、わからないが、一応タイトルに桜が入っているのでわかる。
しかし、本作の原作ではあまり「桜」というイメージを感じなかったため、ちょっとこれによって、作品全体があまりにも平凡になってしまった気がしてしまった。
設定が変えられているものの、キャストは全員良かったと言える。唯一納得がいかなかったのは、茉莉の姉の桔梗役の黒木華。彼女は原作のイメージと全く違っていた。じゃあ誰?と言われると困るのだが、とにかく意外なキャスティングであった。
下に原作について書くが、若い女性の人生における華やかさ、儚さを描き出すなら、難しいだろうが、原作に忠実だった方が良かった気がする。
誰かキャストのファン、あるいはラブストーリーとしては悪くないので、映画は観る価値はあるだろう。
原作小説「余命10年」 小坂流加
いしゃーしゃ的オススメ度:★★★★★
読書感想文を書くほどでもないが、実は原作の方で個人的に良かったと思えた部分が全て映画ではカット、というか設定が全く変えられていたので、自分の備忘録も兼ねて書いておこう。
日本を代表する文化、コスプレと茶道
そう、映画ではコスプレと茶道が全く出てこないのであった!
なぜコスプレと茶道なのかというと。。。
原作では茉莉は病気発覚後、親友早苗の導きで漫画家を目指し、同時にコスプレにハマっていくのである。自分で作るほどの本格派。
そして和人は、茶道の家元の長男で、自分の運命を決められていたが、それに従えず、好き勝手に暮らしていた。しかし、茉莉と出会ったことによって、自分の人生を見つめ直し、お茶の道へ入っていく決心をする。
小説では前半、茉莉が漫画家を目指す過程が描かれている。しかし最初の挑戦はうまくいかない。漫画家なんてそう簡単に誰でもなれるわけではないが、ここで彼女の挫折、絶望が残酷なまでに浮き彫りになる。
そしてこの過程があったからこそ、その後に展開される和人とのストーリーがグッと来るのではないだろうか。
コスプレの衣装の美しさ(文章で読んでいるのであくまでも想像)やイベントの楽しさによって表現される青春の華やかさ。
侘び寂びの世界、家系による運命の定めによって感じられる命の儚さ。
映画で表現されていたビデオカメラの映像や桜ではなく、この小説、主人公の人生のエッセンスがコスプレと茶道で十分伝わってきただけに、映像作品でこれらが取り除かれてしまっていたのは、とても残念であった。
これらの要素が入っていたら、新旧の日本文化を垣間見れる作品として、全世界配信されたら成功したのではないか。
二人が出身校の中学校を訪れるエピソードも良かった。
もし原作を読まずに映画を観ていたら、感想も違っていたかもしれないが、いずれにせよ、こういう系統の作品が好きな方は観てもいいだろう。映画は現在Amazonプライムビデオで配信中。
こちらが予告編。エンディングテーマはRADWINPSの『うるうびと』♫