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映画が観れた 【闘病記vol.8】
おはようございます。こんにちは。こんばんは。また、病状に進展があったので更新します。最近更新頻度が高いのは、心身が、より意欲的になっている証拠なので、個人的には安心しながら更新を繰り返してます。私のこの闘病を応援してくださる方は、ぜひスキを押してください。数字という目にみえる応援は、すごく強い力になります。
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11月26日、高尾山に登る予定だった私は、天候の影響で中止に。そして、なぜかオークラ劇場という成人映画館に行くことになった。それは、高尾山に一緒に登る予定だった方が出演している映画が、今現在公開されているから、高尾山は別日に回して、一緒に見にいこうとなったのだが、私には一抹の不安があった。
この闘病記の一番はじめ、躁うつ病と診断された時の記事にも言及しているが、症状として、今までライフワークのように観続けていた映画に、全く興味が持てなかった。それは一貫して今までずっとある症状で、とにかく何かを見たいという欲求が湧いてこない。だから正直、映画に行こうと言われても、「まあ仕方ないか」程度だった。集中できずに途中抜けするかもしれません、と説明しつつ、映画を見に行くことに決まった。
しかし、何時に向かおうかと、いざ劇場の香盤を見ていると、今までとは違う自分がいることに気づいた。それは、上記の新作の前に上映されていた松岡邦彦監督の『飢えた痴女 汚らわしい穴』を見つけた時だった。見たい、と思ったのだ。松岡邦彦作品は、あまり配信に回って来ず、レンタルも少なく、学生時代見るのに苦労した記憶があり、無論この作品は未鑑賞だった。だから、「見たい」と尚更思えたのだろう。
映画を見たいと思えたのは、実に4ヶ月ぶりのことだった。もっと言えば、自分が”この作品”を見たいと思って映画館に足を運ぶのは、4月の濱口竜介以来だから実に半年ぶりの感情だった。自分でも驚いた。結局、私を救ってくれるのはピンク映画なのかと、なお驚いた。
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見たいとは思えたが、問題は集中してみられるかどうか。以前、後輩の出演する映画を見た時は集中できず、思考が浮遊して物語を追うのに苦労した。家で映画を見た時も、同様だった。だから、期待半分怖さ半分で、いざ、劇場に足を運んだ。
上映前に、オークラの制作担当の人と、近々に迫るOPフェスについて少し話をしたり、自分の今の状況も少し話したりした。少し和やかな雰囲気になったところで、劇場ロビーを見渡す。私の作品も、宣伝されていたので写真をパシャリ。そして、いざ場内へ。
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エクセスのロゴがバンと出て、船に乗った女の「1993年2月」から始まるナレーション。アフレコの女の声が、「あぁ懐かしい」と感じる。いきなり、映画は強姦シーンから始まる。今流行りのエロASMRのハシリであろうエロテープを撮る男たちと、そのエロテープの出演者として間違えられて強姦される女の話だった。美術や照明が、今のピンク映画より随分気合が入っている。「あぁ、懐かしい」学生時代、狂うように見てきた、あの私の憧れたピンク映画が、眼前の銀幕に投射されていた。
私はところどころ、メモを取りながら映画を見た。これはずっと以前からピンク映画を見る時の癖だ。太ももに薔薇の刺青の女。雨の夜に、袖で拭いてから丸齧りするりんご。アパートのすぐ近くを通る電車の光。赤いコート。川に沈んだ自転車。線路上の青姦。執拗に追いかける男、逃げる女。墓地。あたし、アイツと暮らしてた。なあ許してくれよ、馬鹿にしないで。私はストリッパー、文句ある?
絡みは、今の規制にビクビクした撮り方なんかじゃなくて、ギリギリを狙う。何なら、ハリ型や前貼りが少しバレようとも、いやらしさを優先した撮り方だ。映りそうになる瞬間にパンして逃げるようなワークはない。心地いい。縛られないと興奮できない女。女を寝取られて自暴自棄になる男。エロテープの被害者なのに、行く場所もなく、その一行となぜか一緒にいる女。どうしようもない馬鹿ばかり出てくる。心地いい。
口淫がいやらしかった。男の太もも越しに、きっとハリ型を咥えているであろう女は、ジュポジュポと速度や強弱をつけて咥える。思わず、劇場のハッテンおじさんたちも、グッと熱くなる。女の顔やおっぱいをとにかく映そうとする現代のイヤらしさはない。ただ、行為の変化や強弱で、何かを語ろうとしている。「あぁ懐かしい」
気づけば、映画は終わっていた。私は、映画を見れた。見れたのだ。松岡邦彦にありがとうと言いたい。愛を持って、呼び捨てでありがとうと伝えたい。それくらい、自分でも驚くくらい集中して、映画を見れたのだ。その後、目当ての竹洞監督の新作をみんなで見て、劇場を後にした。その2本目も、集中して見られた。その後の飲み会は大きく盛り上がった。
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とにかく嬉しかった。映画は必ずしも、傑作ではなかったかもしれないが、私にとっては一生忘れない映画だろう。私は、ついに、ようやく、映画を見れたのだ。鬱症状に陥ってからというもの、映画が大好きなのに、でも見たいと思えなくて、見ても集中できなくて、引き裂かれるような思いだった。映画が好きで、映画を仕事にして、これからも映画と共に生きていきたいと思っていたのに、その映画が見れない。ずっと、自分の心に暗い雲がかかっている気持ちだった。それを、松岡邦彦が、ピンク映画が、晴らしてくれた。私はまたしても救われた。
【ピンク映画との出会いを描いた記事です】
先生からも、鬱症状からの脱出のサインは「見たい映画を映画館で見られるようになること」と言われていた。ついに、達成できた。まだそれだけで鬱症状が完全に治ったわけではないけれど、3ヶ月、長かった。長かったけれど、ついに大きな一歩を歩めた気がする。「俺は映画が見れるんだ」そう思えるだけで、気分が前を向いていける。今回は、そんな話でした。以上です。
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