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耐えて生き抜け。パラサイティング〜!

前回に引き続き、ラスアスエントリーです。すいません、ハマってまして。だってすごい良いんだもん。

僕は本来スニーク系ゲームは好きじゃないんですが、ラスアス1は本当に衝撃だったんです。で、このドラマシリーズはゲームリスペクトを担保しながら、変えるとこは大胆に変えて、細部を補完して感動増幅という、かなりすごい事やってます。多くの人が既に知ってる元々エモいストーリーを、ドラマ化して更にエモくするって、マジ感心するわ。2人いる脚本総監修の1人はゲーム版を手がけた脚本家です。プログラマからデザイン脚本、今や開発元NughtyDogの取締役。さすがユダヤ系優秀。昔からだいぶ意識高くて、ポリコレウォッシュ元凶の一人とか揶揄されてますね。ゲームから10年経って、本人も取り巻く世界もより成熟したって事ですかね(その間、ラスアス2が大炎上したり、NaughtyDogがブラックっぷりで大炎上したり、色々ありましたもんね…)。ちゃんとゾンビパニックでホラーエンタメしながら、なんでこんなに深く刺さるんだろう。たった20分で登場人物を大好きになって、最後にハートブレイクされる凶悪トラップ。

で、第5話「Endure and Survive・耐えて生き抜け」でまたやってくれましたよ。ゲームにおける山場のひとつ、ヘンリー&サムのエピソード。2人とも更に魅力的なキャラになってる!役者も超絶上手い。主人公2人との絡みも、小さなやりとりがこんなにも人間らしさとか愛着を生み出すなんて。ゾンビも役者が演じてるっぽいし、UnrealEngineのグラが凄まじい進化をしたとしても、やはりまだライブアクションには及ばないんですねえ。話の顛末は解ってたとはいえ、やはり辛い。むしろゲームよりもっと辛い。それでもなんとか耐えてたけど、ラストカットの「I'm sorry」で敗北、崩れ落ちました。マジ脚本力高い。まあヴィラン側がちょっとテキトーだったし、第3話のようなミラクルはそうそう起きないとしても、やはり感心する完成度。パート2のシナリオは苦手なのでシーズン2は見ないかもですが、シーズン1はこのまま最後までドップリ楽しめそうです。


最新型ゾンビ設定

さてここからは閲覧注意です。今回はエピソードを掘り下げたい訳じゃなくて、ゾンビものとしてのラスアスに注目。野暮だとわかっていながら、ついつい科学的検証&妄想してしまうのが僕の悪い癖です。いわば「ゲームさんぽ」的アプローチです。

そもそもロメロゾンビは「ブードゥーの呪いで蘇った死体」でした。サムライミゾンビは「泡吹いて凶暴化して噛みついて感染する死体」で狂犬病患者をモチーフにしたと言われています。バイオハザードでは「人工ウイルス兵器」のゾンビ・タイラントとなり、ドーンオブザデッドではゾンビは全速力で走り始めました。

さてラスアスのゾンビ。やつらは厳密にはゾンビではなく、「菌類に寄生された生きた人間」です。冬虫夏草がアイデア元になっていて、ラスアスは今や英語圏では「マッシュルーム・アポカリプス」で定着しています。キノコ人間です。サタデーナイトライブのプロモでネタにまでされてます(ペドロさん、マンダロリアンも合わせて大ブレイク中です)。

寄生菌って!…ちょっと言いにくいんですがカミングアウトします。僕、ちょっと好きなんですよパラサイト。キモいのとかグロいのは大嫌いだし、寄生虫館も行った事ないですが、怖いもの見たさっていうか、その自然のサバイバルシステムに妙な美しさとか神秘性みたいな魅力を感じてしまうのです。

エキサイティング・パラサイティング

冬虫夏草ってのは主に昆虫に寄生する菌類の総称で、ちょっと調べると色んなのがザクザク出てきます(グロい場合が多いので、調べる時はご注意を)。特別珍しいものではなく、日本にもそこら中にいっぱいいます。ラスアスのゾンビ設定は「タイワンアリタケ」という冬虫夏草が生み出す「ゾンビ蟻」がモデルです。蟻の体への胞子付着から侵入感染し、体内を侵食した菌糸から化学物質を放出して筋組織制御に介入します。蟻を操って適所に移動、枝に噛み付かせて固定した後、本格的に発芽します。そこで子実体を作り、胞子を拡散させて繁殖する訳です。すご過ぎる。しかも発芽の段階までは、蟻の脳は生きてるっぽい…。痙攣したり延々グルーミングしたり、意味不明な動きしたり、自ら噛みついた枝から離れようともがいたり、だいぶパニクってる様子。コワいよー

菌類に脳は無いし、明確な意識や意図も無い筈なのに、化学物質の放出だけでここまで具体的な制御を行うって脅威的です。こんな進化も「淘汰圧の中の自然選択」で説明できるんでしょうか。もしくは菌糸ネットワーク内の回路で小さな意識的なものが生まれるんでしょうか。「粘菌の迷路実験」とか有名ですよね。まさに神秘。

ラスアスのキノコ人間検証

じゃあラスアスのパラサイトキノコ「インドネシアヒトタケ(仮)」はどんな生態なんでしょうか。寄生された人間は操られ、他の人間に噛み付く事で菌糸を注入して感染・繁殖しているように見えます。侵入から乗っ取りまで数時間、ものすごい侵食速度で爆発増殖します。ゲームでは胞子が毒ガスとして登場しますが、胞子は直接の感染経路ではない様子。もしくは最初は穀物に紛れた胞子感染から始まって、その後変異したという事かも。視聴覚や身体制御は機能しているので、蟻のケースみたく脳が生き残ってると思われる(まあ正常に動いてるはずはなく、意識混濁の中で錯乱状態だとは思いますが)…とか想像するとマジでコワ過ぎる。車椅子の老婆が全力ダッシュしたりするので、脳のみならず筋神経系に作用する何かしらの化学物質を生成してる可能性もあります。ペニシリンは菌類から作られるし、マジックマッシュルームとかワライタケみたいな神経毒系キノコも有名です。ステロイドとかアンフェタミンとかでバーサク状態にするのかも。キノコは光合成しないので、養分は人間の体から摂ってるはず。つまり出涸らしになったら子実体を作って胞子を飛ばす?なんというキテレツな生物なんでしょうか。

寄生体になったとしても、基本的には体は人間なので、筋肉以上の力はなく人間と同じ方法で殺せます。寄生体も飲み食いしなければ体細胞を維持できないはずですが、人間を食い殺してしまうと感染拡大できないので、何か別のものを食べてるんでしょうか。何年も自立活動を続ける寄生体は、栄養剤を自己生成して血液中に流してるのかな。頭にマイタケみたいの乗っけてる個体は、もう既に発芽してるって事なんでしょうか。感染の進行度合いによって、クリッカーやブローターのような変異も起こすし、最終段階のコロニーは壁に張り付いて胞子を放出してるので、もしかしたらオスメス生殖もあるのかもしれません。地下に張り巡らされた菌糸でコミュニケーションを取ってるような描写もあったので、つまり全体で神経回路を形成している可能性もあります。となると脳や意識も存在するのか。まだまだ色々未知の生態がありそうです。ああ空想科学楽しい

ずっ友もやしもん

生態系におけるパラサイトの鉄則として、宿主が死滅してしまうと自らも滅ぶので、繁殖のバランスを取る必要があります。宿主に接近し過ぎると排除されてしまうので、ゾンビ蟻の場合は若干離れたところから胞子を振りまくという手法を取っています。自然選択を生き残るために、あんまり宿主と敵対し過ぎないバランスを持った種が淘汰を免れるのかもしれません。寄生とは共存でもあるのです。超嫌だけど。せめてWinWinにしてくれないと共栄は無理です。コロナウイルスだって自重してだんだん弱毒化していきます。

キモいキモい言ってますけど、そんな僕ら自身だって細胞の塊な訳ですよ。例えば脳のニューロンが手足を伸ばしてシナプスを繋げて行く様は、ラスアスのオープニング映像ほぼそのまんまです。僕はTiktokとかで微生物の生態を眺めるのが好きですが、フラフラ泳ぎ回りながら、他のバクテリアを取り込んだり取り込まれたりしてるのが彼らの日常風景です。ヒトゲノムに見られるウイルスレガシーのように、僕らの神経細胞だってもしかしたら実は太古の昔に寄生されて共存するようになった別生物だったのかもしれません。そう考えると、キノコ人間もいずれは共存バランスポイントを見出して、いい感じの新人類に進化するのかも。もしやその最初の兆候がエリーなのか。

ていうかそもそも日本人は発酵食品大好きじゃないですか。今現在も僕らは善玉菌とか悪玉菌とか言いながら腸活に励んでる訳だし、彼らの放出する化学物質によって気分が左右されたりします。そしてその腸内菌活動の代償としてオナラは臭い訳です。もやしもんたちは原始生命の頃から今に至るまで、僕らのずっ友なんです。キノコ人間とだって、いずれきっと仲良くやれるはず。

生命の本質・サバイバル

さてパラサイトと言えば「寄生獣」、凶暴化した菌類と言えば「ナウシカ」です。またかよ!って思った方すいません。どちらも僕の思春期の聖典なのです。寄生獣はそのまま、人間に寄生する未知の生命体の話。ナウシカは核戦争の後に爆発繁殖した巨大菌類の森「腐海」を舞台にした、胞子と瘴気と大海嘯の話です。バイオパニックなんて20〜30年前にもうやってるよ、て事です。そういう下地がある事も、僕がラスアスに反応してしまう理由のひとつかもしれません。あとエモスピ生態系な「蟲師」オススメですよ。

ちなみに僕は常々、社会的パラサイトとして上手いこと気楽に生きていけたらと夢見ていますが、どうやら寄生する側も楽じゃない、お互い生存を賭けた「耐えて生き抜け」のサバイバル・チャレンジです。そしてそれこそが生命の本質なのです。



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