終活を考えたら遺言書では足りず愛情信託が必要になる理由は?
1.はじめに
なぜ、「終活」を考えたら愛情信託(民事信託とも家族信託ともいう)が
必要になるのでしょう?
「終活」というのは 単に死ぬ準備をすることではありませんよね。
でも、葬儀社さんなどが 終活セミナーを主催して、エンディングノートを
お土産にくれたりすると、「終活」って 死ぬ準備なんだ、家族に迷惑を
掛けないように お葬儀のことも、お墓のことも考えておかなくっちゃ
って、勝手に刷り込まれている人は多いのかなと思います。
葬儀社さんだって、ビジネスですから、「終活」という流行り言葉で集客できるのなら当然集客に利用するでしょうし、できれば当社の互助会とかに入ってもらって、将来はウチの葬儀社にご用命下さいねって誘導するようあの手この手を考えて企画します、当然のことです。
私は、何もそのことを非難する気は毛頭ないです。
本音は「葬儀なら、ウチを使ってね」であっても、
講師をされる方は「終活」のことをキチンと受講される方に伝えるでしょうし、
葬儀社も、ウチを将来使うよう 露骨に誘導するように講師に圧力をかけることもまず普通のまっとうな葬儀社さんなら、されないのではと思います。
つまり、おそらく受講される方が、会場や雰囲気、主催者のことを勝手に慮って、自ら刷り込まれているんではないのかなと思います。
2.「終活」って 死ぬ準備だけではない
でも、「終活」って 死ぬ準備だけではないということを次の定義を読めばわかります。
私が以前所属していた一社)終活カウンセラー協会の「終活」の定義は「終活」を明確に言い表している 秀逸な定義だと思います
「終活」って 今を生きる、ということを考える活動なんですね
自分の死を見つめながら。
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3.「終活」の定義を考える
上記に掲載した「終活」の定義
「終活」とは
人生の終焉を考えることを通じて、
自分をみつめ、今をよりよく
自分らしく生きる活動のこと
つまり
1.いずれ必ずやってくる自分の「死」を考えること
2.それを踏まえて 人生の棚卸しをすること
今の自分があるのは、今の自分を作ったのは
自分自身でもあるし、いろんな人達のおかげでもある
3.そして、何よりも大切なのは 生きること
「終活」とはより良く生きるための活動のこと
決して 「死ぬ準備をしましょう」 とだけ言ってはいません。
より良く生きるとは もちろん家族や周囲に迷惑を掛けない
ということも 含まれていると解します。
人間 自分一人だけでは生きられないのだから。
今の自分があるのは その人達のおかげだから。
さて、ということは もう一度整理すると
「終活」とは
1.まず、今を生きること しかも より良く生きること
2.自分のこれまでの生きざまも、築き上げた財産も人間関係も
(財産が多いか少ないかは別問題)
キチンと見つめ直すことを忘れてはならない
3.家族や周囲に迷惑を掛けない生き方、死に方を考え、
その対策をしておけば、安心してより良く生きる活動ができる
ということなのかなと考えています。
もちろん、人それぞれ、自分に適した「終活のあり方」を
考えればいいのです。
だから、
「終活」とは こうあるべき!
と押し付けるものではありません。
このことをよく理解していただいた上で
より具体的に お話をしていきたいと思います。
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4.「終活のあり方」を考えてみると
・今をより良く生きること
・自分のこれまでの生きざま、財産、人間関係を見つめること
・家族や周囲に迷惑を掛けない生き方、死に方を考え、対策すること
ここに
おじいさんAとおばあさんBがいます(同い年としましょう)
二人の間には独身の長男Sと次男Cがおり、その奥様はD
CとDの間にはA、Bの孫E、Fがいます。
AとBは終活カウンセラーで行政書士のNに「終活」について相談してみました。
「終活」と一言で言っても 考えておくべきことがあまりに多いことにAとBは驚きました。
自分たちの葬儀のことだけ考えればいいのかと思ったら違うのです。
他にも 介護・年金・保険・相続・供養・医療・生前整理・・・
戸惑っていたら、終活カウンセラー上級インストラクターで終活の講師もあったNがやさしくアドバイスしてくれました。
全部一度に考える必要はない。
今 一番気になっていることから ひとつ一つ片づけていきましょう と。
そこで、
AとBは常日頃からお互い話し合っていたことが頭に浮かびました。
そう、何よりも子供たちには自分たちのことで迷惑を掛けたくない。
そこで Nは 図のようなタイムチャートをAとBに示しました。
5.あくまでも仮の話なのですが
Aは70歳頃から判断力の低下がみられ、徐々に認知症が進行します。
BはAの介護をしつつも、76歳頃から判断力の低下がみられ、徐々に認知症が進行します。
Bは老人が老人を介護する、いわゆる「老老介護」を懸命にAのために行なってきましたが、
自身も認知症となってしまいましたから これではいわゆる「認認介護」
つまり、認知症の人が認知症の人を介護する状態となってしまいました。
CとDは見るに見かねてAが80歳の時に老人施設に入所させます。
その後 Bの認知症も進み、86歳の時に同じ老人施設に入所。
Aは90歳で、Bは100歳で 各々その施設にて天寿を全うします。
Aが亡くなった時、Bは既に認知症が進んでおり、施設に入所している状況です。
まず、Aの遺産相続はどうなるのでしょうか?
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6.Aの遺産相続とBの成年後見人
Aが亡くなったら その相続人は
配偶者のB(認知症法律行為が制限される)と
長男Sと次男Cの3人です。
Aに成年後見人が付いていたかどうかは別として
~付いていたとしてもAの成年後見人の任務はAが生きている間だけです~
(仮に死後事務委任契約があっても遺産相続には関係ない)
Bには成年後見人を付けなければ 相続人全員による
遺産分割協議はできません。
図では 成年後見制度は本人が生きている間のみ有効ですよ
という意味で タイムチャートに書き込んであります。
仮に、Aが元気な時(健常時)に 遺言書を書いていたとしたら
原則 遺言書の記載通りにAの遺産は分配されることになります。
遺言書があると、「争続」は起こりにくいと言われています。
(遺留分を侵害している遺言書や相続人の現況を無視したような突飛もない遺言書等でなければの話ですが)
ちなみに、「争続」は「そうぞく」と読めますが、音だけ聞くと
「相続」なのか「争続」なのか、ややこしいので私たちは
「あらそうぞく」と読んでいます。
遺留分については 別の機会でお話しますね。
7.成年後見人はBが亡くなるまで
遺言書がなければ、遺産分割協議のため、Bに成年後見人を付ける必要があります。
銀行などから付けないとAの預金解約はできません、と言われたので遺産分割協議のためだけのつもりで付けたのです。
なので、遺産分割協議が無事済んだ後は、母Bは施設に入っていますので
成年後見人は不要になりましたのでキャンセルさせて下さい。
ということは、できません。
(将来は改善されるかもですが、今は無理です)
ご本人が正常に復するか、お亡くなりになるまで、成年後見人は
付いたままとなります。成年後見人には本人を保護し、支援するという
任務があり、そのために家庭裁判所から選任されたのですから、都合の良い時だけ一時的に利用するということはできないのです。
(整理します)
・成年後見制度は
認知症,知的障害,精神障害などの理由で
判断能力の不十分な方々を保護し,支援する制度
その趣旨から 生きてる間のみ有効な制度です。
・遺言書
遺言者本人が原則、元気な時に書いておくもので
ご本人が死なないと遺言書の効力は出ません。
仮に、65歳で遺言書を書いても、超長寿社会・
人生100年時代と言われているくらいですから
ご本人が100歳まで生きたとしたなら、書いてから
亡くなるまでの35年間は効力を全く発揮しないのです。
8.「終活」のタイムチャートを愛情信託がほぼカバーする
さて「終活」ですが、その考える範囲はどんなものでしょうか?
もちろん 人それぞれですが、仮に、こんな感じ?
例えば Aさんが「終活」に取り組んだとして
1)自分が生きている間のこと ~ より良く生きる!
2)自分が亡くなった時のこと ~ 葬儀やお墓のことも考えておく
3)自分の財産の相続のこと ~ 奥様には世話を掛けたのでこれだけ
長男と次男が争わないように、奥様のことも託したい
できれば、かわいいお孫ちゃんにも財産を残してあげたいな
※ そして、とにかく家族には迷惑を掛けたくない!
・生きている間に自分が認知症や寝たきりになったりしたら・・・
・自分の相続のことで 家族同士で絶対に揉めて欲しくない
なので、「終活」のタイムチャートは 何度もでてきていますが、図のような時間的範囲になるのですね
そして、主に財産管理面に特化する形になりますが
「愛情信託(民事信託・家族信託)」の時間的範囲は「終活」と同じか、それよりもさらに次の世代までカバーする可能性もあるので、少し広く表してあるのです。
成年後見制度と遺言書だけでは 愛情信託のような広い長期間に渡る範囲はカバーできません。
「終活」を考える以上「愛情信託」のことまでも これからは考える必要がありそうですね。
以 上
ここまでお読みいただいて、ありがとうございました。
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