【短編小説】父親の悩み、それぞれ―「さくら、舞う」番外編④―
<野上路教>
「昼からビールっすか? 今日はずいぶんと荒れてますね。何かあったんっすか?」
「詮索はやめろ。とにかく、酒だ」
おれの注文にいちゃもんをつけた喫茶ワライバのマスター、大津理人はため息をつきながらジョッキにビールを注ぎ始めた。
「はい、どうぞ。……ごゆっくりと言いたいところだけど、どうやらそういうわけにはいかなそうだな……」
出されたジョッキに手を出したのと、背後から聞き覚えのある声が聞こえたのは同時だった。振り返るとやはり見知った顔。
「水沢先輩…