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愛おしくも奇妙な。


児童書のようでいて、
でも子供向けではない。

少し奇妙なお話たち。


世界というものはときとして、ちょっとした
偶然で人を目覚めさせようとするもの----------
そうして人をはっとさせ、心を釘付けにして
しまうことがあるのです。中には、眉ひとつ
動かす価値もない軽い偶然もあります。
しかし多くの偶然は、それに応じて行動した
人物が歩む人生の道筋を変えてしまうほどの
力を持つ、ずっしりとした重みを運んでくる
ものなのです。

10の奇妙な話/ミック・ジャクソン 田内志文◎訳


デビュー作「穴掘り公爵」が、
ブッカー賞、ウィットブレッド賞の候補作となった
ミック・ジャクソンの奇妙な短編集。
※ブッカー賞は、イギリスの文学賞で
世界的に権威のある文学賞のひとつ。


日常の中に潜む境界線と接した瞬間の
人びとが巧みに描かれている点だ。
それは狂気と正気の境界線であったり、
日常と非日常の境界線であったり、
服従と蜂起の境界線であったりと
十人十色なのだが、この本に登場する
主人公たちは誰もが境界線のすぐ手前に
立ったところから描かれ、物語は始まる。

訳者あとがきより一部抜粋


奇妙で異様、狂気的、
なのにどこか憎めなくて愛おしい、
そんな登場人物たちと
どこか詩的で、なんとも美しい世界観。

表紙や各お話に出てくるこれまた奇妙な挿絵は
デイヴィッド・ロバーツというイギリスの画家だそうです。

お話も挿絵も、
エドワード・ゴーリーなどがお好きな方は
ドンピシャで好みではないかな、と思います。

が、しっかりと「物語」なので、
例えば絵本では少し物足りないと感じる方でも
満足できるかなと思います。

どのお話も個性的で面白いですし
好きだったお話はいくつもありますが、
ひとつだけ選ぶとしたら…
個人的には「蝶の修理屋」でしょうか。
博物館で標本になった千匹の蝶を
蘇らせようとする少年のお話です。


ひとつ注意していただきたいことがあるとすれば
エドワード・ゴーリーなんかもそうですが、
子供向けでは全くないこと、大人であっても、
不快な気持ちになる方はいらっしゃるかもしれない
内容であること、でしょうか。
殺人なども当たり前に出てきますので、
その辺り、普通の児童書や絵本のような感覚では
読まれませんよう。


普段、外国の作家さんの本は
あまり…いや滅多に読まないのですが
まだ積読本の中には何冊かあって。


訳者あとがきを読んでいると

(ミック・ジャクソン)と
スコットランド人のダン・ローズ、
この両作家からすこしサイコさを抜き、
すこしクレイジーさを加えたところに
エイミー・ベンダーと
アンドリュー・カウフマン
の両者がいるように感じている。

訳者あとがきより一部抜粋

という内容を見て、
ふと、思い当たる名前を見つけました。

エイミー・ベンダーは積読本の中にあるはず。
探してみると、わたしが持っていたのは
「燃えるスカートの少女」という1冊でした。

なるほど、ミック・ジャクソンから少し
サイコさを抜き少しクレイジーさを加えたところに
このエイミー・ベンダーがいる、と。
それならエイミー・ベンダーもわたしの
好みかもしれない、と読むのが楽しみになりました。


『10の奇妙な話』
もし、気になった方がいらっしゃいましたら
ぜひぜひ、読んでみてくださいね。


見出し画像の写真は、USJのハリポッターエリアにある
ゾンコのいたずら専門店。
この、奇妙な玩具箱をひっくり返したような雰囲気が
マッチするかなと思って選んでみました。

10の奇妙な話は、イメージとしてはモノクロのような
あまり色のない印象を抱くのですが、
ふとした瞬間、鮮やかな色が押し寄せてきて、
そしてまたハッと目が覚めたらモノクロの世界に
戻っているような、なんとも不思議な世界観があるんです。



今日は、おすすめ本の紹介でした。

それではこの辺で。

今日も1日おつかれさまでした。
最後まで読んでくださってありがとう。

また気が向いたら、来てくださいね。


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