展覧会レポ:京都・福寿園のアートスペースで行われる完全予約制の展覧会とは?
【約1,200文字、写真13枚】
京都の福寿園で開催されている完全予約制の展覧会に行ってきました。茶葉や枝を素材としたインスタレーション作品が展示されており、まるで森の中にいるかのような感覚を味わえます。
茶室でつなぐ
エレベーターでアートスペースに到着すると、優しくも力強い香りが広がっていました。
今年オープンしたばかりのこのスペースでは、木工芸職人・アーティストの中川周士氏による『茶の杜に惑ふ ‐ 個細胞が見る夢 ‐ 』が開催中です。
今回の展示は、森や木、そして個細胞が織りなす夢をテーマにしています。
手前の天井と柱の作品は四畳半のスペース。茶室ほどの大きさです。狭い空間ですが、傘の下に入ると空気まで抜けるような佇まい。
深呼吸をして窓をみると、広がるのは木桶の作品たち。森から木へと、夢をみせてくれているようです。
中川周士氏の作品は、日本だけでなく、海外でも高い評価を得ています。日本独特の美意識に「用の美」が結実し、海外の方の心をつかむのでしょう。
お茶の時間
木のカーブが心地よい椅子に座り、ほうじ茶をいただきました。ここが京都の繁華街であることを忘れてしまうほどの静けさです。アート事業長の緒方氏と雑談を交わしながら、茶道の精神に触れるひとときでした。
「ぜひ、持ってみてください」。アーティストの中川氏が、黒茶碗にヒントを得て制作されたんだとか(下)。
今にも崩れてしまいそうで、手が震えるほど軽い茶碗でした。ここで使われている茶葉は、使えなかった茶葉や使い終わったものを再利用しているそうです。
「お茶は飲むだけではないんです」と緒方氏は言います。人と人の間にお茶を挟むことで対話が生まれ、リラックスして本音が顕れてくる、と。
コロナ禍ではこれができなかったのかもしれません。
これこそが「お茶の時間」なのですね。予期できない偶然の話に花が咲き、一見バラバラな無数の点と点が絡まり合う。なんて豊かな体験なんでしょう。
桶屋さん
中川氏のルーツは桶屋さんにあります。²
一見シンプルなデザインですが、触れてみるとその軽さと木目の美しさに驚かされます。最近ではシャンパンの入れ物としても使われているそうです。きっと使い込めば手になじみ、味わいがますでしょう。
中川氏は子どもの頃から木に触れ、石を並べて遊んでいたそうです。今もその感覚を制作に活かしています。
そして、木桶たちはこのように仕上がるのです!
余談
無料でアートスペースに行くのも気が引けたので、福寿園の伊右衛門(ペットボトル)を持参しました。アートスペースの福元さんは「無理に買って頂かなくていいんです。私、普段はコーラも飲みますし」と仰っていました。
お茶の時間というのは、飲み物を楽しむだけでなく、他者との会話を楽しむ時間でもあるのかもしれません。
■information
ソース;
¹:web アートスペース福寿園「中川周士」https://artspace.fukujuen.com/
²:フライヤー中川周士個展『茶の杜に惑ふ ‐ 個細胞が見る夢 ‐ 』
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