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働く意義をつくる『シン・理念経営』

「経営理念をつくりましょう!」

経営について相談に来た創業2年目の若手経営者に私はこう答えた。

事業は成長しているとのことだが、社員から「働く意義を感じられない」という声が多くなり、離職者も出てきているとのこと。

経営者は、立ち上げ時は事業をどう伸ばすかがもっとも関心事となり、働く人や環境などの組織づくりは二の次となるケースが多い。

ただ、この組織づくりの根幹となる理念経営こそが、企業が永続的に生成発展していくために最も重要なものであると確信している。 

今回は、従来の理念経営の一歩先にある『シン・理念経営』について私なりの考えを話そうと思う。


理念経営のきっかけ

かくいう私も2008年に前身の会社を立ち上げ、ある出来事が起こるまでは事業成長が第一だった。

当時はIT業界全体が伸びていたこともありスキルのある優秀な人を採用すればそれだけでどんどん事業は伸びていくと考え、とにかく経験やスキルのある人を採用していた。

立ち上げ当時は福利厚生もない、人事評価制度もない、社内システムもないという環境もままならない状態だったため、それを理解できないエンジニアから何度か指摘をされていた。

ある日、そのエンジニアと渋谷の喫茶店で打ち合せをしていたところ、とうとう痺れをきらしたのか、突然キレて机をたたきそのまま店を出て行ってしまった。コーヒーがスーツにこぼれ、周りからはジロジロ見られるというめちゃくちゃ気まずい状況。

その後も会社に来ることはなく、数日後にはその社員の弁護士から私宛てに損害賠償請求の内容証明が送られてきた。

立ち上げ初年度で色々とショックも大きかった出来事だったが、答えを見い出すべく、松下幸之助氏の『実践経営哲学』を改めて読んだことを覚えている。

私は60年にわたって事業経営に携わってきた。そして、その体験を通じて感じるのは経営理念というものの大切さである。いいかえれば“この会社は何のために存在しているのか。この経営をどういう目的で、またどのようなやり方で行なっていくのか”という点について、しっかりとした基本の考え方をもつということである。 

事業経営においては、たとえば技術力も大事、販売力も大事、資金力も大事、また人も大事といったように大切なものは個々にはいろいろあるが、いちばん根本になるのは、正しい経営理念である。それが根底にあってこそ、人も技術も資金もはじめて真に生かされてくるし、また一面それらはそうした正しい経営理念のあるところから生まれてきやすいともいえる。

だから経営の健全な発展を生むためには、まずこの経営理念をもつということから始めなくてはならない。

参考:松下幸之助『実践経営哲学』(PHP文庫)より

「私たちは何のために存在しているのか?」
「私たちがこだわりたいことは何か?」
「私たちは何を目指していくのか?」

まだない道をつくっていこうとしているベンチャーにおいて、根幹となる理念をつくり、共感する仲間を集めることが何よりも大事だということを、こうした失敗を経て改めて学んだ。

働く意義をつくる

理念経営がもたらすものは何か。

・方向性が明確になる
・一体感が生まれ組織力が高まる
・良い採用につながる
・意思決定スピードがあがる
・日々の社員のパフォーマンスが向上する

など沢山あるが、『シン・理念経営』では、
一人ひとりの"働く意義"
をもたらすことが最も重要だと考える。

働く意義をつくるパーパス経営

2020年あたりからパーパス経営という言葉が注目されるようになり、従来の「株主中心主義」から「ステークホルダー資本主義」への移行が提唱された。

株主中心主義は、株主に対する金銭的リターンを最大化することこそが良い経営だという実にシンプルな基準だ。

対してステークホルダー資本主義は、顧客・社員・株主・パートナー企業にといった四方良しの経営と言われているが、私なりに加えると、
・地域コミュニティ
・環境や社会
・次世代

という3つを足して、"七方良し"の経営が求められてくると考えている。

今までは儲けていれば企業としては生き残ることができていたが、現在の人口減少で働き手が圧倒的に減っていく今後の日本社会においては、働く意義を示せない会社は存続が難しくなっていくし、会社は”社会や未来にとって良いこと”をしているのかが問われる時代であると感じている。

メタ(旧フェイスブック)のマーク・ザッカーバーグは自身が中退したハーバード大学の卒業式で、「すべての人たちが、人生や働くことに意義を感じられる世界を作ろう」というテーマでスピーチした。

僕らミレニアル世代なんだから、昔の世代の卒業式スピーチみたいに「自分の人生の目的を見つけよう」なんてそんなことは言われなくたって本能的にやってるでしょう? そうじゃなくて「みんなが生きる意義、働く意義を持てるようにすること」がもっとも重要なんだ

2017年 ハーバード大学卒業式スピーチ

企業の存在意義に共感している社員は、そうではない社員と比べて仕事への幸福度が2割高いというデータや、自分の仕事に意義を感じている人は、そうではない人に比べて仕事のパフォーマンスが3割高いというデータもある。

ケネディ大統領がNASAを訪問した際に、廊下で箒を持った清掃員に「あなたは何の仕事をしているのですか?」と尋ねたところ、「大統領、私は人類を月に送るのを手伝っているんですよ!」と答えたという逸話もある。

どんな平凡な仕事でも、正しい考え方と優れたリーダーシップがあれば、有意義な仕事に変えることができる。

つまり、『シン・理念経営』とは、この正しい考え方と優れたリーダーシップを発揮するものであり、一人ひとりの働く意義を生み出すものであると考えているのだ。

共感型から◯◯型へ

私がよく言う例えがある。

目的地が一致していないと組織はバラバラになってしまいます。
なので、まずは組織として「北海道に行くのか」「沖縄に行くのか」「大阪に行くのか」などの目的地を決めることが重要です。

次に「なぜそこに行くのか」も明確にする必要があります。(美味しい魚とお酒を飲みながら皆でワイワイ騒ぎたいなど)

目的地やなぜそこに行きたいか?の問いに正解不正解はありません。そうした価値観に共感するか否かであるのです。

「みんなで北海道を目指そう!そして美味しいお酒を飲んでワイワイやろう!」

こうした目的や価値観が一致した人が集まったらどうなるか。

北海道までの行き方などは、チームによって様々であって良いのです。

飛行機で行く人もいればフェリーで行く人もいる。夜行列車で行く人もいればヒッチハイクで行く人もいる。

つまり、一人ひとり多様性を活かし、当事者意識をもって取り組めるための枠組みが、理念経営の本質であるのです。

従来の理念経営が共感型だったとすると、
『シン・理念経営』は体現型である
と考えている。

つまり、共感したうえで、それを
自分のストーリーで語り、
行動していくということ。

人はやらされている感ではなく、自らやっている感を見出すことで当事者意識が醸成され主体性を発揮する。センスメイキング(腹落ち)することで行動して体現者となる。

私たちはそのような気持ちが自然と湧き出るような価値観を大切にしている。

一人ひとりが会社をつくる。
一人ひとりが未来をつくる。

コクーの理念

会社のためじゃない、まずは自分のために。
それが、結果として顧客のためになり、会社のためになり、社会のためになる。

for me , for you.

コクーのスローガン(理念の方針)

自分たちがめざす姿は社会にとってどんな影響をもたらすかはもっとも重要な要素の一つだ。

デジタルの力で、ダイバーシティ&インクルージョンがあたりまえの社会を創る。

コクーのパーパス:社会的にどうありたいか

自分たちはどんな人と、どのような働きかたをつくっていきたいかも大切。

魅力あるチーム。新しい働きかた。

コクーのビジョン:会社としてどうありたいか

これらを実現するために日々大切にしたい行動は仲間との絆にもなる。

・自責でポジティブ
・良い意味で顧客の期待を裏切る
・できない理由ではなくできる方法を考える
・思いやりをもった行動をする
・信頼される人になる

コクーのプリンシプル

こうした行動指針を日々の"口動"として習慣化することで全社員が体現するべく、策定したのがクレドだ。

(自責でポジティブ)
『プレイヤーorオブザーバー』
例:「ちょっとちょっと!みんなオブっちゃってるよー!」

(良い意味で顧客の期待を裏切る)
『常識のアップデートこそ感動のデザイン』
例:「はいはい、アップデート!アップデート」「感動デザインターイム!」

(できない理由ではなくできる方法を考える)
『チャレンジファースト、リスクセカンド』
例:「今リスクファーストになってるよ!チャレンジファーストで!」

(思いやりをもった行動をする)
『フィードバックは未来へのギフト』
例:「ギフトあげちゃおうかな?!」

(信頼される人になる)
『瞬間オープン、瞬間クリア』
例:「すみません、まだちょっとひっかかってるので、瞬間クリアにさせてもらってもいいですか?!これって・・・」

コクーのクレド

少々長くなったが、これらが私たちの理念を明文化したものである。

理念を自分の人生と重ね合わせ、一人ひとりが自分のストーリーとして語り、行動していくことで当事者意識が生まれ、働く意義を感じながらハッピーな人生を歩んでいけると信じている。

人の人生、人の物語は100人いたら100通りある。

その様々なストーリーが生まれる機会をつくっていくのが企業の使命であり、その根幹となるのが『シン・理念経営』である。そしてそれは、"人"も"社会"もハッピーにするエクセレントカンパニーの絶対条件である。



最後まで読んでいただきありがとうございました。

私たちは、「デジタルの力でダイバーシティ&インクルージョンがあたりまえの社会を創る」というパーパスを実現することで日本を元気にしたいという目的を持っている会社です。

現在は女性にフォーカスしていますが、男性はもちろん、シニア、外国人、障がい者、LGBTQなど全ての属性の人たちがテクノロジーの力を身に付けることを目指してます。

そして様々な人たちが、それぞれのライフステージで、それぞれの場所で、家族や友達、仕事の仲間やコミュニティの中などにて、一度きりの人生をハッピーにできる社会を創っていきたいと本気で考え、挑戦している会社です。

まだまだ課題だらけではありますが、その壮大なゴールに向かって、日々コクーの全社員が圧倒的当事者意識を持って取り組む姿をこれからも応援いただければ幸いです!


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