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アイルランド・フリーランスや副業の税金
こんにちは、アイルランド在住会計士のつぐみです。
私は職業柄、フリーランスの方や、サラリーマンの副業をされている方から、税務関連の質問を受けることが多いです。
今日は、質問してくださった方の同意を得たうえで、税務関連Q&Aをまとめてみました。前提として私は公認会計士ですが、個人の税務を業務とはしておらず、下記は個人的な意見となります。ご自身の税務に関しては、専門の税理士にご相談ください。
アイルランドと日本の両国で収入がある場合、課税関係はどうなりますか?
課税関係は「居住者判断」と「租税条約」に基づいて決まります。
まず、どちらの国で納税義務が発生するかは、「税務上の居住者(Tax Residence)」の基準で決まります。
基本的にアイルランドでは、以下のいずれかの条件を満たすと「税務上の居住者(Tax Resident)」とみなされます。
1年間でアイルランドに183日以上滞在する
2年間で合計280日以上滞在し、そのうち1年で30日以上滞在する(前年と当年の合計で280日以上)
税務上の居住者とみなされた場合、基本的にアイルランドにて課税されます。
アイルランドに住んでいれば、日本で発生する収入についてはアイルランドで課税されるのですか?
アイルランドの税務居住者と判定されれば、基本的に日本での収入もアイルランドで課税対象になります(全世界所得課税)。しかし、日本で発生する収入が「国内源泉所得」にあたる場合は日本で源泉徴収されます。
この場合でも、租税条約に基づき、日本で支払った税金は「外国税額控除(Foreign Tax Credit)」で二重課税を防ぐことが可能ですので安心してください。
国内源泉所得にあたる場合は日本で課税されますか?
国内源泉所得にあたるのかどうかは、まず①所得の種類、②拠点(Permanent Establishment, PE)の有無、③日本国内で業務提供しているかどうかで判断されます。
①所得の種類
日本の不動産収入、利子配当、印税等、特定の収入は税務上の居住地にかかわらず、国内源泉所得にあたり、日本で源泉徴収されます。
詳細は下記国税庁の「国内源泉所得の範囲」をご覧ください。
国内源泉所得への源泉徴収を回避するには、「租税条約に関する届出書」の提出が必要となります。
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/gensen/2888.htm
②日本拠点の有無
上記に該当しない場合でも、日本国内から業務を提供していると判断されると、国内源泉所得とみなされる場合があります。
持ち家やオフィスが日本にある場合は特に、役務提供を行なっているのはどこか、に注意しましょう。
アイルランドでの税務申告について
雇用者の場合は、給与は源泉徴収されるため、他に投資や配当などの所得がなければ追加の税金は発生しません。(その場合でも書類提出や税務申告することで、medical expense relief、Rent tax crdit等の税額控除で還付が狙えるので積極的に利用しましょう)。
副業や投資収入などで副収入がある場合は、税務申告が必要となります。今回は株式譲渡益の税務申告ではなく、通常の税務申告について説明します。
副収入がある方、自営業の方は、ROS(Revenue Online Service)にて、Form11と呼ばれる年次税務申告書を提出する必要があります。
夫婦でジョイントアセスメントという、一括で申告を行うこともできます。夫婦どちらかが年収44000ユーロ以下(2025年)の場合、使いきれない税額控除額を、相手に配分することで節税することができます。
夫婦どちらも44000ユーロ以上稼いでいる場合、税務上のメリットは享受できないかもしれませんが、税務申告を簡易化させるという管理上のメリットもあります。
アイルランドに居住するフリーランスの支払うべき税金の種類と概要について
①所得税
€44,000までは20%、それを超える分は40%の支払いとなる。
余談ですが、アイルランドは法人税を安くしている分、個人から税金を多くとっています。
②USC
累進課税で所得に応じて0.5-11%の税率にて課税されます。
③PRSI
国民年金、社会保険料のようなもの。
本業にしろ、副業にしろ、支払わなければいけません。個人負担が4%、会社負担が約9-11%程度。
④VAT
アイルランドの自営業者がVATを支払う義務があるかどうかは、年商(売上高)に基づいて決まります。
年商が 75,000ユーロ(商品販売の場合)または37,500ユーロ(サービス提供の場合)を超える場合、VAT登録義務が発生します。
もし年商がこの額を超えると、VATを徴収し、定期的に税務署(Revenue)に納付する義務が生じます。
年商が基準を超えない場合でも、任意でVATに登録することができます(自発的登録)。これにより、VATを顧客から徴収し、仕入れにかかったVATを控除することができます(VAT還付を狙うこともできます)。
以上、フリーランス等の税金Q&Aでした。
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https://note.com/ireland1/m/mff2018379424
またアイルランド・海外移住に関する書籍も出版していますのでこちらもどうぞ!