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アイルランドに来るなら読んでおくべきお勧め本12冊

こんにちは、アイルランド在住会計士のつぐみです。

アイルランドはヨーロッパの小国なので、日本人にとってほとんどなじみがない国でしょう。
アイルランドにこれからワーホリや駐在などで来られる方も、「アイルランドっていったいどんな国?」と思われる方がほとんどだと思います。

しかしアイルランドは、1人当たりGNPが世界第2位の経済大国、さらにアメリカの発展にも大きく関与、またヨーロッパの中では、ケルト文化を代表する島、美しい自然とケルトの神秘的な古都というイメージがある、とても個性豊かな国なのです。

日本との関係の薄さから、アイルランドに関する一般的な読み物は、とても少ないのが実情です…笑
この記事では、ガイドブックとはまた違う、かつあまり専門的過ぎない、アイルランドをよりよく知るための本を紹介します。アイルランドを訪れる前に、少しでもその背景を知っておくと、旅の体験がより深いものになるでしょう!


全般

① アイルランドを知れば世界がわかる


著者は外務省入省後、アメリカやイギリスなど他の国の外交官勤務を経て、アイルランド大使として派遣された方。アイルランドのことを語っている本だが、特にアメリカとの関係、イギリスとの関係等の外交の語りは、さすが大使と言わざるを得ない。
事実をただ羅列するわけではなくそこにストーリーを組み込み分かりやすく説明し、さらに大使のアイルランドへの愛を感じさせる名著。



② アイルランドを知るための70章

地球の歩き方に似た表紙なので、(失礼ながら)なんか狙ってる感があって印象が悪かったのですが、読んでみると面白い!複数の著者が、自分の得意な分野をそれぞれ執筆していて、様々な分野の深い思考が面白い。各章は数ページで、ものすごく読みやすいし。興味ある分野だけでもささっと呼んでおくと、アイルランド人との話題にも困らない。
分類され体系だって説明されると頭に入りやすいし、お勧めの一冊。


③ 愛蘭土紀行

あの司馬遼太郎の世界を語るシリーズ、街道をゆくのアイルランドバージョン。旅はアイルランドとの関係が深いイギリスから始まり、両国の関係を語りながら旅は進む。歴史的事実だけではなく、現地人とのふれあいによる人の感情や国の成り立ちの分析。この時代に英語を話せる司馬遼太郎は本当に知識人だったんだと思うけど、言語だけでなく文化や歴史の背景知識もある真のインテリジェンスだと感じさせてくれる。


④ アイルランド紀行 言葉が一番濃い場所

冒頭で、「ダブリン市内の交差点や舗道、橋など特定の場所を通ると、まるでセンサーが埋め込まれているかのように、頭の中で急にテクストが朗読されるように感じることがある。あるいはその反対に、ダブリンをめぐる書物を読んでいると、テクストの各所に隠しスイッチが仕込まれていて、東京にいてもダブリンの場所のざわめきや空気をありありとかんじることがある。」と、ダブリンの街頭やダブリンに関する文書が、すぐに記憶を呼び起こすほどにアイルランド文学とアイルランドに魅せられた著者の描くアイルランド本。この小さなアイルランドを隅から隅まで訪問し、探求し、言語化し、土地と書物を巡る旅を追体験させてくれる良書。



アイルランドの歴史を学ぶ

ケルト文化は、キリスト教以前からヨーロッパに広く存在した文化だが、多くの国ではキリスト教を強制された結果、ケルトの多神教文化は消え去ってしまった。しかしアイルランドでは、セントパトリック宣教師が布教を行う時に、現地の信仰を廃止することをせずカトリックを広めたため、ケルトの文化は今もアイルランドに根付いている。神は多くいるという信仰は、相手の神を否定することに繋がらない。
だから、私はアイルランドには平和主義者が多く、相手を受け入れる懐の深さがある国なんだと思っている。

⑤ ケルトの解剖図巻

アイルランドはケルト文化の島というイメージがあり、世界で最も美しい写本と言われる国宝ケルズの書を保有する。ケルト文化は、フランスを主とするヨーロッパ大陸、イギリス、アイルランドにまたがる神秘的な文化だったが、アイルランドのケルト文化は大陸のそれとは少し違います。ケルト文化の基礎的な話を図解と共に紹介する、まさに解剖図巻。

またマイナーなアイルランドという国ですが、最近は「クーフリンの国だね」と言われることが増えてきました。ゲームのキャラクターで使われているらしいですね。
クーフリンはアイルランド神話に登場する槍使い。このアイルランド神話に関しても本書で紹介されています。

難点はKindle端末では非常に読みづらいこと。紙書籍、もしくはKindle for PCで読むのがいいでしょう。

⑥ A Short History of Ireland

アイルランドの歴史はざっくり知っていたものの、アイルランド人作家による歴史読み物を読んだのはこれが初めて。日本人は植民地化され、自分の国や文化を奪われた経験がないが、この本を読むとどのように自国の文化や信仰が取り上げられ、そしてどのような気持ちでそれを取り戻すために活動したのか、植民地化から独立までの道のりが、心情的によく理解できる。私のアイルランドに対する感情を変えた一冊。

アイルランドに住む妖精や精霊

⑦ ケルト妖精物語

日本の田舎に行くと、「鹿に注意」「イノシシに注意」などという交通標識があるが、アイルランドの田舎には「妖精に注意」という看板がある。アイルランドは古来より妖精が住む島として知られている。
最も有名なのは、セントぱとっくすでーのシンボルにもよく使われるレプラコーン。おじさんの姿をした可愛い妖精。その他、数年前映画でも話題になった死の予兆を伝える妖精「バンシー」など、様々な妖精がいます。
この本は、アイルランド初のノーベル賞受賞作家イェイツが描く妖精の物語。群れで済む要請、一人暮らしの妖精、地や水の精霊など、古来から伝わる神秘的な物語をまとめたもの。

⑧ アイルランドの妖怪絵本 Mythical Irish Beasts

子供用絵本だが、絵がとても可愛くアイルランドの精霊や怪物の話が知りたくて購入。子供用なので英語も読みやすいので英語学習にもおすすめ。
日本だととても高いけど、現地だと€25程度でちょっと安く買える。こういうのを見ると、ゲゲゲの鬼太郎など思い出す。世の中には色んな想像上の生き物がいるなぁ。

イチオシのモンスターは、Cluricahun (クルリカーン)。名前からすでに可愛いでしょう?
お酒といたずらをこよなく愛するユーモアに溢れる妖精です。ビール頭に乗せてるし笑



アイルランド文学を感じる

⑨ 小泉八雲の怪談

日本で一番有名なアイルランド人、小泉八雲。彼のアイルランド名はラフカディオ・ハーン。
幼少の頃からアイルランドの精霊や神話など神秘的な物語に惹かれていた彼は、日本の妖怪や物怪の話に惹かれて、日本の怪談を物語として紡ぐ。ホラー話がふんだんにある今日この頃では、その怖さという意味ではやや迫力に欠けるものの、古典物語という意味では価値がある読み物。

小泉八雲に関して詳しくはこちら。


⑩ アイルランドの文豪James Joyceの2冊

アイルランドは人口500万人ながら、ノーベル文学賞受賞者を4人も輩出している。(人口1億人の日本は2人)
英語圏である優位性はあるものの、アイルランド文学がいかに発展しているかの指標になるでしょう。
その中でもダントツ有名なのがジェイムスジョイス。彼の作品の中から2つご紹介。

ユリシーズ

現代文学の最も難解な小説として名高いユリシーズ。その評価は「意識の流れ」の言語化や、美しい英語表現、古典名作のオデュッセイアやハムレットへのオマージュなどにあるけど、読者の古典の知識も問われともかく難解。日本語はともかく、原文での読解に挑戦したが挫折しました。いつか英語で読みたいけど、たぶん無理。
アイルランド人の中でも評価は分かれ、「難解であることだけ」がこの小説を有名にしたという皮肉屋のアイルランド人もいる。

ダブリン市民

こちらの方が短めでサクッと読める。ユリシーズに挑戦する前にこちらでジョイスの世界観に触れてみるのがいいかも。古き良きアイルランドの庶民の信仰や生活が垣間見れる。


⑫ 「マイフェアレディ」の原作:ピグマリオン

言語学者ヒギンズ教授が、ロンドン貧困層の花売り娘イライザの訛りや立ち振る舞いを教育して、彼女を上流階級の女性へと育て上げる話。映画マイフェアレディの原作。

少し話は逸れますが、訛りでの差別は残念ながら現代でも存在します。汚い言葉遣いというのは日本でもあるが、日本よりも「出身地による訛り」による差別は激しいと感じる。アイルランドという小さな島なのに、コーク訛りなど県による訛りだけではなく、首都ダブリン市内の地域による訛りでも差別があるので驚く。まあ高級住宅地である世田谷目黒と下町である台東葛飾が争うようなものでしょう。東京出身ではない私にはあまり共感できないが、何区に住むかという東京人のこだわりと同様に、ダブリンのどの地域の訛りがあるかを気にするダブリナーズは多い。

以上アイルランドに関するお勧め本12冊でした。これからもいい本を見つけたら追加していきたいと思います。
それでは楽しい読書の秋を!

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このコラムは、海外在住日本人が綴るマガジンVACILANDOが出版する世界の12か月シリーズアイルランド版、「アイルランドの12月」に掲載予定のコラムです。今夏(9月ってまだ夏だよね?!)には出版予定ですので、応援よろしくお願いします!

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